召喚勇者の聖『拳』伝説ZERO
初代聖剣の勇者のとーじょーです(笑)
それは竜騎がガルムレイドに召喚される千年前。
まだ聖剣の勇者が選定される前の物語。
「聞いたか?また町が一つ魔物に滅ぼされたらしいぞ」
クリスティア王国の城下町にある酒場で一人の男性が酒を煽りながら同じテーブルに座る男性に話し掛ける。
「またか。この間もリバルの村が壊滅したってのに」
「やはり噂は本当なのかね?」
「噂?」
「ああ。何でも魔物を統べる王が居るって話だ」
男性達の話が続く中、狭い店内を料理を盛った皿を両手に走り回る小さな少女が居た。
「はーい、おつまみおまちどおさま〜♪」
少女は小さい身体をフル活用しながらテーブルに料理を置いていく。
「おぉ♪来た来た♪やはり酒のつまみは鳥の串焼きに限るのう♪」
「フラム、今日はツケ払って行ってよね」
少女が鳥の串焼きを盛った皿を置いたテーブルには一人の女性が座っていた。
赤い髪を無造作に伸ばしたその女性、旅の拳士でフラムと言う。
「有無。今日はきっちり払って行くのじゃ」
「どうでも良いけど、あんた若いのにお年寄りみたいな口調よね」
「主に言われとうないわい。万年幼女のくせに」
「ぐっ!?・・・・・・胸はあんたよりでかいわよ?万年成長不良」
「がふっ!?」
少女の一言に胸を押さえるフラム。
二人は暫くにらみ合い、
「「しくしくしく」」
互いの言葉に傷付き同時に涙した。
「まーたやってんのか。互いに傷付く位なら言わなきゃ良いだろうがよ」
フラムと同じテーブルに座る男性がジト目で二人に呟く。
この男性、フラムの仲間で魔法使いのラムゼスと言う。
「ラムゼス、女性には色々とあるのですよ」
ラムゼスをたしなめるのは女盗賊のシルク。
彼女もまた、フラムの仲間である。
因みに彼女は背も高く、胸もでかい。
「レム!サボってないで空いた皿片付けな!」
「ぐしゅ。はーい今片付けまーす!」
酒場の女将の声に涙を拭い空いた皿を片付けに向かう少女。
少女の名前はレム。
酒場の看板娘にして、この数日後にとある運命を背負う事になる万年幼女な少女であった。
数日後、レムが目を覚ますとそこは見た事も無い場所で神官や騎士達に囲まれていた。
「はい?」
レムは自身がまだ夢の中に居るのかと思い自身の頬をつねる。
「痛い・・・・・・。って事は夢じゃない?」
レムが混乱の最中、周りの神官や騎士達がざわめきを上げる。
「無事成功の様ですな」
「と言う事はお告げは間違っていなかったと言う事か!」
「しかし、この子が女神より授けられた聖剣の担い手なのか?まだ幼い子供ではないか!」
「女神より授けられた召喚呪文によって喚ばれたのです。間違いなく聖剣の勇者かと」
騎士達や神官の言葉に反応するレム。
「あの、私こんな成りですけど16歳なんですけど」
『な、何だと!?』
レムの言葉に何故か驚く神官と騎士達。
「・・・・・・私泣いても良いよね?」
その瞳に涙を浮かべながらレムは呟いた。
「報告を聞いてまさかと思ったが、やはりレムだったのか」
突然聞こえた声にレムが振り向くと其所には馴染みの客であるラムゼスが額を押さえながら立っていた。
「ラムゼス?」
「よう。とりあえずコレ着とけ」
呆けた声を上げるレムにラムゼスは自身の羽織っていたローブを外しレムにかける。
レムは目覚めたばかりで気付いてなかったが、その姿は夜着つまり寝間着だった。
「あ、ありがと・・・・・・ってうひゃ!」
漸く自身の姿に気付いたレムは慌ててローブを身体に羽織る。
「ラムゼス様!」
「彼女の事は私に任せてお前達は持ち場に戻れ!・・・・・・レム、悪いが着いてきてくれ」
「う、うん」
ラムゼスはレムに手を差し出すとレムはその手を取り立ち上がるのであった。
「あのさ、ラムゼスは一体?」
ラムゼスに案内され豪華な部屋に通されたレムは進められた椅子に座るとラムゼスに問う。
「・・・・・・出来りゃお前には魔法使いのラムゼスで通したかったんだがな。こうなりゃ仕方ねぇか。俺の名前はラムゼム・ヴィム・クリスティア。一応このクリスティア王国の第二王子だよ」
ラムゼスの名乗りに驚くレム。
「お、王子様!?ラムゼスが!?」
「一応な。まあ、国は兄上が継ぐから好き勝手やってる馬鹿王子ってとこだ」
そう言ってラムゼスは笑うと不意に表情を引き締める。
「レム。お前今自分がどういう立場かわかるか?」
「え?」
「その顔は分かってないな。簡単に説明するとだな?お前は女神に選ばれた勇者だ」
「・・・・・・勇者?誰が?」
「お前が」
「・・・・・・私?」
「ああ」
「何で!?私唯の酒場の女中だよ!?」
「そんなの俺が知りてぇよ。だが、女神より授けられた召喚呪文で召喚されたんだ。お前は間違いなく聖剣の勇者になっちまったんだよ」
ラムゼスの説明に益々混乱するレムであった。
「とにかくこれは辞退する事は出来ない事だ。お前は聖剣を携え魔物討伐の旅に出なきゃなんねぇ」
「そ、そんな」
「安心しろ。お前一人では行かさねぇさとりあえず暫くこの部屋に居てくれ」
そう言ってラムゼスは立ち上がる。
「ど、何処に行くの?」
「フラム達に依頼を出してくる。大丈夫、俺に任せろ」
ラムゼスはニヤリと笑いレムの頭を撫でると部屋から出ていくのであった。
更に数日後。
王宮で任命の儀式を受けさせられたレムは聖剣ガルムレイドを腰に城下町の門に立っていた。
「ど、どうしよう。私一人じゃ魔物討伐なんて無理だよ」
王宮からは旅の資金のみで仲間は一人もつけてもらえなかったレムは一人心細い思いに耐えていた。
「安心せい。お主一人では行かさんよ」
不意に聞こえた声にレムが振り向くと其所には旅支度を整えたフラムとシルク、そしてラムゼスが居た。
「言ったろ?俺に任せろってな」
「私達も一緒に着いて行きますよレム」
「皆!」
レムはフラム達を見て安堵の声を上げる。
「お主が旅を終えるまで儂等が主を守る」
「さぁ早く行きましょう!」
「ああ、急がねぇと王宮から追手が来る」
「追手?」
「あの糞親父、勇者に着いて行く事はまかりならんとか抜かしやがった!勇者なら一人で大丈夫だとよ!!ふざけんなっての!」
レムはフラム達に急かされクリスティア王国から旅立つ。
この数年後、レムは魔物を統べる王を封印する事に成功するが、クリスティア王国に戻って来たのは聖剣ガルムレイドを持ったフラム唯一人であった。
シルクは旅の途中で倒れ、ラムゼスもレムを守って魔物の群れを道連れに倒れた。
そしてレムも魔物を統べる王を封印する為、自身もろとも光に消えた。
フラムは聖剣ガルムレイドをクリスティア王に叩き付けるとクリスティア王国から姿を消すのであった。
千年後、聖剣の勇者となった竜騎はある場所でレムと会う事になるのだが、それはいずれ本編にて・・・・・・。