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清樹町の隅々で  作者: 磐梯 皐月
8/8

プロVSシロウト

東清樹駅前、何かを探しているかのように歩いている特に何の用事も無い男、一樹が歩く。

一樹の仕事は自営業のようなものでもある為、気が向いたらぶらぶらと街中を散策していることが多いのである。

駅前にある知り合いの喫茶店に行ってはマスターと話し、それ以外は気分しだいで動く、それが彼の行動パターンになっている。

「どーすっかな~、タヌキも定休日だし、もう帰るとするか・・・・」と言いながら、落ちてきた鳥の糞を自然に避ける。常人なら被弾したであろう距離であった。


そんな時でさえ、一樹の周りには何かが起きることが多かった。


「ちょっ、そこのあなたっ!」

後ろから一樹を呼び止める声が聞こえ、例えるならストリートファイトを申し込まれたのではないかと思うほどの威勢と自信に満ち溢れた声であった。

「ん?喧嘩ならヨソで露店でも開いて売ってくれ・・・・・」と一樹が振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。

「そう!そこの動体視力がメッッッッチャよさげなあなた!」と少女が近寄ってきた。

「ん?ああ、鳥糞ならさっき避けたけど・・・」

「そう!そのレベルの相手を探してたんですよ!」

「だから何だって・・・あ、君どっかで見たな?」と一樹は知り合いではないその少女にそう呟いた。

「そう、私エアホッケー大会優勝者の風波です!自分で言うのも難ですけどね。へへへっ」と尻尾を振る犬の様に喜ぶ少女。

「そうか、何かの雑誌で見たことあると思ったらそういうことね。で、対戦したいと。」

「そうですそうです!ぜひぜひお願いします!」

嬉しそうな少女を見て、一樹も断るわけにはいかず、近くのゲームセンターへ風波と足を運んだ。




二人はゲーセンに着くと、迷わずにエアホッケーの筐体へと向かった。

百円玉を入れ、ゲーム開始の音が鳴る。

構える二人、その背中からはオーラが出ている・・・・かのようだった。実際にあるかどうかは別として見えるものでは無かった。

「嬢ちゃん、腕が良いからって手加減はするなよ」一樹が一言浴びせる。

「大丈夫です。あなたが相手なら・・・手を抜く必要なんてありません!」風波も言い返す。



ここに今、東清樹駅前ゲームセンターの伝説が生まれようとしていたのである・・・・・



まず一枚目のパックが飛び出し、風波の陣地へと流れていく。

それを逃さずに風波は打つ。その速さは一瞬だった。

しかし、そのパックは次の瞬間に、一樹のマレットの下に入っていた。

「っ!?」風波は予想外の出来事に驚きと"期待"が生まれ、思わずにやけた。

「確かに速い、風のようだ・・・・・風波ちゃんっ!」っと一樹はマレットの下のパックを弾丸のように風波へと打ち返した。

「よっ!」と声を出し、風波がそのパックを押さえる。

しかし、風波は未知の感覚を同時に味わった。


今までにない、押さえ応え。まるで押えた後でもパック自ら動き出しそうな感覚・・・・・


それは彼女が大会でさえも経験することが無かった。


「どうした?予想外だったか?」と一樹が問いかける。

それに対し、彼女はにやけた顔を上げ、こう言い返す。


「ええ、とても・・・・・最高なほど、いい方向にっ!!」




時間は残り30秒を切っていた。

しかし、互いの点数は「0」と示していた。

両者とも、譲らない。獲物を捕らえた猛獣に似た覇気を出しながら。


「ここで決着を着けるっ!」と一樹がパックをマレットごと打ち出す。


「そうはさせるかぁぁぁ!」と対抗するかのようにマレットを手から打ち出す。


そして、ちょうど中央の境界線の下、そこでマレット同士がパックを両挟みにする・・・!


その時、



「パキィンッ!」


嫌な音が鳴る。

台の中央には割れたパックが置かれていた・・・・・


「・・・・・。」

「・・・・・。」


「おい。」

「はい。」


「逃げるぞ・・・」

「了解です・・・」


二人は急ぎ足で「DRAW」と表示された筐体から離れ、店から出ると小走りで駆け出した。



エアホッケーで遊ぶ時は、周囲に人がいないか、人外レベルの異常者がいないか確認してからプレイしましょう。


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