アグレッシブで不気味な文化部 part2
時刻は午後8時56分、賀祷が空き地に着くと、いつものメンバーは揃っていた。
ちょうどその時目の前の道路を通り過ぎていった車の運転手には若い学生達が何か特別なことをやろうとしているように見えていただろうが、この光景は彼らにとっては全く普通のことであった。
「よおぅし!全員集まったわけだし、さっそく・・・・・といきたいところだが、ある一つの問題点が見つかってしまったのであ~るっ!」と問題点があることが嬉しいのやら悲しいのやらよく分からん判別不明な勢いで琴香が話すと、賀祷を指差し「分かるかな?イチネンボー?」と賀祷に新しいあだ名の命名と共に質問した。
「えっ、と。まだ時間が・・・有り余ってるってことですか?あとそのあだ名は期間限定になるんでやめたほうがいいです。てかやめてください・・・」
「そうそう正解!まだ早かったんだよ、時間が!あ、正解したガト君にはプレゼントとしてイチネンボーを取り消してあげるね!」
「普通考えれば分かることだ・・・・もう少し家でぐったりぐっすり眠りたかったというのに・・・」
そう言うと日向はぐったりとその場で寝てしまった。土の上に。
「あぁ!こらこらここで寝ちゃ・・・もう遅いか。」と言いながら琴香は着ていた上着を脱ぎ、日向の上に被せた。
まずやることがあるのでは?賀祷の心の声、そしてこの光景を見たらどのような人間でも殆どは思うことである。
「・・・・どうします部長?」
「俺ならここで待てるぞ!噂に聞く禍々しいモノノケを成敗できるならっ!」
「聡詩、うるさい。で、空いた時間はどうするかって?もちろん計画はしてある!ただ単に時間を早くしたわけではないよっ!ホントは"アレ"を調査する為にこの時間にしたんだ!」
「アレって・・・・あっ。」
「そう、山にあるあの廃墟に行くの!あっ、これは最初から決めていたことだからね、時間ミスったふりしてただけだよ♪いわゆるサプライズってやつ!」
「え、ええっ・・・!?あそこはまずいっすよ!?だってあそこにはヤバイ何かがいるって前から・・・」
「だから行くんでしょ!そういうのが私たちの使命なんだからっ!」
「そ、そうですけど・・・・」
オカルト部の部員なのかこいつは。
そう思いたくなるような姿勢である。
「わっ、わがはっ、せっ、拙者にとっては喜ばしいここことだでござるっ!」
聡詩の足は震えるを通り越して崩れかけていた。
「キャラ崩れて色々おかしくなってますよ。それより、身支度とかは大丈夫なんですか?自分、懐中電灯とか今持ってないんですけど。」
「大丈夫、もちろん私が全員分用意している!」
そう言うと琴香は独特な持ち方で、小型懐中電灯4本を構えた。
「さあっ!行くと決まったらいざ出発っ!」
誰からの同意も得ず、琴香の独断で、部活動が始まった。
彼らが向かう廃墟は、地元でも有名な心霊スポットである「清樹第三地下壕」という場所である。
名前の通り旧日本軍の施設跡地で、物資用の倉庫として使用されていたとされている。
しかし、当時の住民の話によると、軍人とは思えぬ格好をした人間が出入りしていたと言われている。その姿はまるで「医者」のような格好だったとの目撃情報もある。
しかしそれは半世紀以上前の噂であり、誰もが忘れていた。
「いや~、柵に穴があって良かった~。私の可愛い部員達をがっかりさせるわけにもいかないしね!」と琴香が嬉しそうに言う。
「あまり乗り気じゃないですよ僕は・・・。それにしても不気味ですねここは・・・」と消極的でありながらも冷静に言う賀祷。
「あがっ、がっ、あく、悪霊退散っんうぅぅぅぅ!」と崩壊寸前なのか崩壊しているのか微妙な状態の聡詩の三人は足を進めた。
日向は琴香の自宅に置いてかれた。
しばらく進むと、三馬鹿は小型の檻が並べられた部屋についた。
「ナニコレ!?何これっ!?生物実験っ実験っ!?」と琴香はハイテンションになった。
「物騒なこと言わないでください部長。これは軍用犬か何か運んだ跡だと思いますよ。」
「じっじっじぃ・・・・・」
ついに聡詩が壊れる。
それと同時に、三人は部屋を後にし、更に奥へと進んだ。
この廃墟に入ってから数分が経ち、崩壊していた聡詩も慣れたのか平常になった。
しかし、賀祷は気になることが一つでき、疑問で落ち着きを失っていた。
今まで通った部屋の雰囲気、一つ一つに・・・・・。
廃墟内を全て探索し終え、三人は出口へと向かっていた。
「結局なんも無かったね~」と琴香がいじける。
「いや、何も無いほうがいいですよ・・・・」という賀祷に対し、
「あなたそれでも部員なの!?」と冗談交じりで琴香が説教した。
聡詩は・・・・・駄目だ。もう色々と・・・・・。
そんな会話をしていると、賀祷が足で何かを踏んだ。
「ん?」と言い、賀祷が拾い上げると、金属のプレート片だった。
半分に割れていて、「・・・可死実・・・」と書いてあることが分かった。
「おっ!おおっ!お宝だぁ!」と無邪気な子どものように高校三年生の琴香が喜びはねた。
「部屋の表札みたいですね。まあ部長がそう言うなら持ち帰りましょう。」と賀祷は袋に包み、持ち帰ることにした。
そして、三人の廃墟探索は無事?終了した。
次の日、謎のプレートは部室に飾られ、大切に保管された。
ちなみに聡詩は熱を出し、その日は学校を休んだ。