アグレッシブで不気味な文化部 part1
街には噂が溢れている。
それは怪奇現象から未確認生物、企業のちょっとした噂など、多種多様な要素を持ったものである。
もちろん、この寂れた町にも噂の一つや二つぐらいはある。
この町唯一の高校にある「オカルト研究部」では、今日も生徒達が熱心に活動していた。
名前からして不気味な部活である、もちろん部員は4名と少ない…
「だ~から、それはただの意識不明の重体なだけだって。たまたま偶然症状が一緒なだけでしょ?」
「そんなわけなかろう!勘の鋭い我輩が言うのだからなっ!」
「そのキャラやめろ、寒い。」
「こんなの何か毒ガス的なアレで起きた病気ですよ、本来僕たちじゃなく勘違い環境保護団体が騒ぐものです。」
ちょいと強気な女性部長の"北条 琴香"
何でもかんでも怪奇現象にする中二病の"石狩 聡詩"
貧血、寝不足、やる気なしの女の子"西園寺 日向"
たった一人の一年生"波多野 賀祷"
波多野以外の三人は2年生であり、3年生はいない。
気味悪がられて3年生の生徒からは入部者が出なかったのである。
そして顧問はほとんど顔を出さず、いないようなものである。
「まあ新聞の記事のことは置いといて、連絡があった客人が来るまであと一週間だ。それまでに、この寂れた町に輝く"あの噂"の正体を暴くぞ!」と琴香が栄養ドリンクのCMのようにやけに張り切った声で部員たちに言葉を浴びせる。
「場所はもう分かってるんですよね?」と賀祷が質問する。
「フフフッ!この全知全能とは言わんが、この才能に富んだ我輩がぁ!封印されし右目のウロボ…」
「もういいです先輩、とにかく石狩先輩が見つけたんですね。」と賀祷が先輩の見せ場をぶった切った。
これでも、賀祷は3人全員を尊敬している。
「まあいい、皆が分かりきったことなど説明しなくとも充分だろう。それよりっ!その場所は日向が『黒き現の世の式神』で映し出しているっ!」と言いながら聡詩は日向の方を指差した。
そこには、ぐっすり眠った日向と、彼女の黒いノートPCが地図を画面に映して置かれていた。
「あっ!先輩ここ知ってます!小汚い古本屋の角を曲がった所ですよね!」と寝ている日向に声をかける賀祷。
睡眠を邪魔され不機嫌そうに日向が目を覚ますと、「そうだ。これで私の役目は終わっただろ。だから休ませろ…」とまたすぐに目を閉じた。
「お前は行動が早いなぁ~!」と琴香が日向に抱きつき頭を撫でた。
「やめろっ…休ませろっ…!」と賀祷が抵抗しながら顔を赤らめる。
「ま~ま~いいじゃないの~!それより、この噂の内容を改めて見直そう!」といつもの部長状態に戻る琴香。
「まず内容だが、『この町の空き地に深夜になると人型のUMAが現れる』ということだ。そして場所はさっきの空き地、時間は今日の9時に集合、そこから夜中まで待ってみる。これでいいか諸君!」とテンションMAXで琴香が説明した。
「駄目なわけ無かろう、我輩は深夜などどうともな…」
「了解で~す!」
「っん…。」
と3人は肯定的?な返答をし、4人の宝探しが今夜始まることが決定した。
「ただいまー!」
賀祷が家に着くと、育ての親である親戚の叔父が「おお、おかえり。」と返事を返した。
賀祷は男と夕食を食べながら、今日の用事について話をした。
「ほうほう、そりゃあ面白そうじゃないか。若い時の探究心はしっかり消費するんだぞ!」と男は肯定的な言葉をかけた。
「そうだ、あれを持っていくといい。」
「あれって何?あっ、」
「そう、あれだ。」
そう言うと男はソレをカップに注ぎ、賀祷に味見させた。
「う~ん、今日もいい香りだ!」
「ははは、そりゃあ良かった。今日のコーヒーはちょっと変わった豆を仕入れたばかりだからね。まあ、深夜の張り込みの目覚ましに持っていきな。」
賀祷が家を出るのを見届けると、根治郎今日の売上金を確認しながらちょっとしたことを考え、一言つぶやいた。
「この町は変なモンばかり吸い寄せられるな…そろそろ"アレ"も来るころか?」