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第九十二話 誘う氷姫

「兄さん」


 ソウジたちがマリアたちと談笑していると、クリスが声をかけてきた。彼女は誰かの手を繋いで引っ張っており、人込みをかき分けてソウジたちのもとへとやってくる。彼女に連れられてきた少女はアクアブルーの髪をした少女。彼女がきっと、


「紹介します。友達のフレンダです」


 フレンダ・キャボット。

 フェリスやオーガストと同じ『十二家』の内の一つ、『守護のキャボット家』の少女である。オーガストがフレンダが何らかの目的があってこの学園にやってきたという話をした際、彼女を疑うオーガストに対してクリスはフレンダのことを友達として彼女の事を信用してやってほしいと言っていた。

 だからこの場に連れてきたのも恐らく、フレンダを信用させるためだ。オーガストが何を疑っているのか。それはソウジにも分かった。というより、あの場にはクリスがいたからこそあえて『何の為の調査で戻ってきたのか分からない』ような話し方をしていたのだろう。

 オーガストもイヌネコ団のみんなもどうしてフレンダがこの王都に戻ってきたのか察しはついている。恐らく、『黒騎士』の正体を探る為だ。

 ちなみにクリスに『黒騎士』の正体を秘密にしておくようにソウジはみんなに頼んでいる。これから『再誕リヴァース』、魔人たちとの戦いが起こった際にクリスだけは巻き込みたくなかった。だからこそ、みんなを信用し、頼った。

 そしてこの場において何も知らないクリスがとっている行動は……ソウジにとって少々、都合が悪い。下手に探られて正体を知られるのは困る。それに出来ればギリギリまで正体は隠しておきたかった。どこに『再誕リヴァース』のメンバーが潜んでいるかもわからないのだ。下手に正体を曝せば、この学園にいる生徒たちを巻き込んでしまう恐れがある。とはいえ、フレンダがこの学園に来たということは騎士団の調査は既にこの学園にまで及んでしまっているということ。さすがに大々的に市民に正体を知らせるということはないだろうが……騎士団の方がどう転ぶか分からない。

 星眷魔法ですら太刀打ちできない邪人をも圧倒する力を野放しにするとも思えない。ソウジだけならまだいいが、騎士団との間で起こるかもしれない騒動にみんなを巻き込みたくはない(こんなことを考えていることを知られればまたクラリッサなどが怒るだろうが)。王都で権力を持つ騎士団に眼をつけられると下手をすればみんながこの王都で暮らせなくなるかもしれないのだ。


(……まあ、いざとなれば俺だけが大人しく投降すればいいだけなんだけどな)


 しかし騎士団の目的や総意が不明な以上、『黒騎士』の正体をバラすわけにはいかないのだ。『再誕リヴァース』のメンバーはこの学園の教職員として潜り込んでいたぐらいだ。騎士団内部にも『再誕リヴァース』の内通者がいないとも考えられない。

 そんなことを考えつつ、目の前にいるフレンダという少女に目を向ける。

 雪のように白い肌。決して小さくは無い胸や程よい肉付きと締まるべきところが締まった抜群のスタイル。凛々しい顔つきにツリ目の、とてもかわいらしい女の子。だがその身にとてつもない力を秘めているのを感じ取れる。それこそ、ここにいるマリアやエドワードよりも上回っている可能性だって考えられるほどの


「はじめまして。フレンダ・キャボットだ。フレンダで構わない」


 そう言って彼女は、ソウジの方へとその眼を向け、手を指しだす。


「ソウジ・ボーウェンです。俺のことも、ソウジでいいよ」


 彼女が差し出してきたその手に、ソウジは応えて握手をする。少なくとも今のやり取りから敵意は感じられなかった。何かを探るような視線は、あったが。でも、大切な妹であるクリスが信用してほしいと言った。ならば失礼のないようにしないといけない。ふがいない自分がいない間、フレンダは妹の傍に居続けてくれたのだから。


「…………」


 フレンダは何かを探るような視線をソウジに向け続けている。ソウジはそれに耐えねばならなかった。ここで変に視線を逸らせばかえって怪しまれる。


「……あー、」


 そこで、見かねたレイドが何かを言おうとしたその時だった。


「フン。久しぶりだな、フレンダ」


 レイドが何かを言う前に、先にオーガストがフレンダの視線をソウジから逸らす。フレンダは呼ばれたせいかソウジからオーガストの方へと視線を向け、


「ああ。久しぶりだな、オーガスト」

「なぜ戻ってきた。貴様は剣技の名門である『ヴェルディア魔法学園』で剣技を極めに行ったのではなかったのか?」

「あそこで学ぶべきものは全て学んできたか。だから、あとはこの大陸で最高峰の場所で自分の実力を試してみたくなったんだ」

「…………なに?」


 オーガストが眉をひそめていると、フォローするようにクリスが口をはさむ。


「フレンダは、向こうの学園で個人ソロランキング一位をとったんですよ。特に剣技においてはもうあの学園で右に出る者はいません」

「なんだと?」


 さしものオーガストもこれには驚いたようだ。まさか入学して半年もたたないうちにそこまでの実力を身に着けたというのか。フレンダの実力は、少なくとも向こうの学園の三年生をも上回っているということになる。フレンダは苦笑しながら、今度はクリスに視線を向ける。


「クリスだって、個人ソロランキングだと学園二位だったじゃないか。それに、わたしとも戦績もほぼ互角でポイントだって僅差だ」

「でも、剣技という一点においてはフレンダの方が上だと思いますよ?」


 ソウジは思わず目を見張る。まさかクリスもそこまでの実力を身に着けていたとは思わなかった。


「そういえば」


 今度はフレンダが、会話の流れから自然な形で切り込む。


「ソウジは、この学園の一年生の中では一番強いと聞いたのだが」

「……一応、数字の上ではそうなるかな」


 嫌な予感がすると思いつつこたえる。ここで嘘をついたところで調べればすぐに分かることだし、何よりソフィア・ボーウェンの弟子としてあまりふがいない結果は出せないというのも確かだ。


「なら、わたしと模擬戦をしてもらえないだろうか」

『っ!?』


 サラリと滑り込んだフレンダのその言葉にその場にいた者達が驚きを露わにした。

 同時に、ソウジは確信する。

 フレンダはこの学園に『黒騎士』の正体を探りに来た。それと同時に彼女は……否、彼女の所属している騎士団の長はソウジのことを疑っているのだ。


「わたしはこの学園に自分の腕を試しに来た。なら、まずは同じ一年生で最も強いソウジと戦ってみたい」


 正直言って、剣技の名門と呼ばれている学園で最強とされているフレンダの実力には興味がある。強い人と戦ってみたいというソウジの好奇心は大いに刺激されている。とはいえ、相手はこちらの事を探りに来ている。下手に相手をして何かを勘ぐられるのは困る。

 でもここで下手に断ると余計に怪しまれるかもしれないし、何よりここで断っても恐らく別の機会に申し込んでくるだろう。流石に何度も何度も断ると怪しまれるどころの話ではない。


「…………いいよ。やろうか」


 ソウジの言葉に、その場にいた者達が各々の反応を示す。特にマリアとエドワードに関しては「面白そうだ」とでも言いたそうな表情をしている。


「そうか。ありがたい、さっそく勉強させてもらう」

「俺も、他の学校から来たフレンダの実力には興味あるし。勉強させてもらうよ」


 遅かれ早かれこうなる。

 だから今のうちに、せいぜい少しでも怪しくならないように立ち回るしかない。


 ☆


 模擬戦はパーティが終わってから行われることになった。一応、大人たちが推進している『種族間交流』の顔を立てた形だ。しかしその分、模擬戦が行われる闘技場には種族を問わない大勢のギャラリーが集まっていた。何しろ、噂の留学生の実力がこの眼で拝めるのである。見ない手は無い。


「いいのか? あっちは明らかにソウジを探りに来ているぞ」


 控室で準備を終えたソウジに、オーガストが声をかける。


「まあ、どうせ遅かれ早かれこうはなるし。下手に断ると怪しまれるんだったら、あそこは受けるしかなかったって感じかな」


 ちなみにこの場にクリスはいない。彼女は現在、フレンダと一緒にいるはずだ。


「まあ、なんとかやってみるよ」


 ひらひらと手を振り、ソウジは控室を後にした。フィールドにたどり着くと、既にフレンダは先に到着していた。佇まいからして隙が無い。ヴェルディア最強という実力は真なのかもしれない。


「随分とギャラリーが増えてしまったな」

「フレンダみたいな噂の美少女転校生がやってくるとなればみんな注目するよ」


 この模擬戦は生徒同士の個人試合で学園のルールに定められたポイントの争奪が懸かっているわけではない。よって開始も終了も個人の判断にゆだねられる。


「お喋りはここまでにして、そろそろやろうか」

「そうだな」

「では――――いくぞ!」


 スッ……と、フレンダの瞳が一気に氷のように冷たくなった。同時に彼女の全身から膨大な魔力が放たれていく。


「チマチマとした探り合いは性に合わないからな。最初から全力で行く」


 彼女の言葉にソウジは苦笑する。


(下手な嘘をつくなぁ……)


 まさしく今、探りをしかけてきているというのに。が、すぐに気を引き締める。何しろ相手は『十二家』。それはつまり、『原初の星眷』より生まれし『皇道十二星眷』を有する者ということ。


「出でよ、『アクエリアス・グラキエス』ッ!」


 彼女の水属性を示す青い魔力が迸り、それは一本の剣へと形作っていく。

 やがて眷現されたそれは、氷のような輝きを放つ剣だった。


(あれが『皇道十二星眷』のうちの一つ。『みずがめ座』の星眷か)


 フェリスの持つ『ヴァルゴ・レーヴァテイン』とは真反対の氷の能力ということか。『みずがめ座』というからにはオーガストと同じような水の能力かと思ったが違った。むしろただの水属性ではない。水の上位属性――――氷だ。


「さあ、ソウジ。お前の星眷を出せ」

「……『アトフスキー・ブレイヴ』!」


 ソウジは自身の星眷である『アトフスキー・ブレイヴ』を眷現させた。漆黒の剣がソウジの手の中に納まり、魔力を纏う。フレンダはそんなソウジの持つ剣を見つつ、構えをとった。


「こちらから行かせてもらう!」


 フレンダの動きは淀みが無かった。一切の無駄のない自然な魔力の移動。脚力強化の魔法を即座に展開し、ソウジに向かって斬りかかる。対するソウジはというとそんなフレンダの動きをしっかりと捉え、彼女の刃を漆黒の刃で受け止めた。


「ッ!」


 ヒヤリとした感覚。ソウジはすぐにフレンダの刃を弾き、バックステップで下がる。剣に視線を落とすと、黒い刃の一部が凍らされていた。


「よく気づいたな」

「というより、なんとなく嫌な予感がしただけだよ」


 ブラウとの戦いがまさかこんなところで活かされるとは思わなかった。つまりそれと同じことで、接近戦を挑んであの剣とぶつかるだけでこちらの剣が凍らされていくという仕組みだろう。


「それなら、こうだ」


 ソウジは『アトフスキー・ブレイヴ』に黒い魔力を纏わせる。その魔力は氷を砕き、同時にフレンダの剣の能力に対するコーティングとなった。これであの剣の能力で凍らされるのは纏った魔力であって、刃には届かない。


「なるほど。剣に魔力を纏わせて刃が凍らされることを防いだか。面白い」

「それじゃあ、今度はこっちから……いくぜ!」


 地面を蹴る。そのまま直進する――――と見せかけて、


「ッ!」


 ソウジは転移魔法によって瞬時にフレンダの背後に回り込み、そのまま刃を振るう。が、ソウジの刃は突如として目の前に現れた氷の壁によって遮られた。そのまま氷を切断するが、一瞬だけ生まれたラグ。その時間は、フレンダが対応するには充分な時間だった。反撃とばかりに下から襲い掛かってきた刃を剣で受け流しつつ、後退して体勢を立て直す。


「驚いたよ。今のが転移魔法か。実戦レベルでここまで扱えるとは……流石だ」

「そっちこそ、よく今のに対応したな」

「ソウジが転移魔法を使えるという事は知っていた。だから警戒していた。今の回避はそのおかげだし、もしも事前情報が無ければ今の一撃でわたしは負けていただろう」


 そうだとしても凄まじい反応だ。単純に、反応速度だけならばフェリスに匹敵するだろう。

 これは気を引き締めてかからなければならないな、とソウジは剣を構えなおし、『黒加速ブラックブースト』で加速する。一気に距離を詰め、フレンダに斬りかかる。彼女もそれに対応し、次々と刃を振るってくる。

 互いの刃と刃がぶつかり合うたびに火花が舞い散り、二人は凄まじい速さの剣戟を演じる。

 フレンダが真横に振るったそれをソウジは状態を逸らすことでかわし、その隙に『黒鎖ブラックチェイン』を発動。何とかフレンダの剣を絡めとろうとするが瞬時に凍らされて砕け散ってしまう。ならばと今度は跳躍し、『黒壁ブラックウォール』を足場に空中で彼女を翻弄しつつ、隙を見ては一気に斬りかかる。だがそれもフレンダは受け止め、今度はお返しとばかりに地面から氷の刃を出現させた。


「うおっと」


 ソウジは迫りくる氷に鎖を巻きつけてそのまま捻じり斬る。流れるように次の動作へと移り、鎖をフレンダに向けて鞭のように振るうがそれすらも剣で凍らされ、振り払われてしまった。あの剣は思ったより厄介だ。触れるものを片っ端から凍らされ、砕かれてしまう。


「器用な真似をするな」

「器用さが売りなもんでね」

「なるほど」


 笑いつつ、次に仕掛けてきたのはフレンダ。彼女の周囲に氷の刃がいくつも生まれてゆき、その狙いをソウジに向けている。


「『氷雨アイスレイン』」


 詠唱。同時に、無数の氷刃がソウジに向かって弾丸のようなスピードで襲い掛かる。

 だがソウジは逃げずにその刃を次々と空中で叩き潰していく。一発一発を的確に潰していくソウジを見てフレンダはあらためて目の前の少年が只者ではないことを実感する。


「流石だな」

「この程度の魔法なら俺じゃなくてもこのぐらい出来る。でも、まだ上があるんだろ?」


 ソウジの言葉にフレンダはふっと微笑んだ。


「なら、これはどうだ。『青吹雪ブルートライヴェン』ッ!」


 今度のは先ほどの攻撃とは比べ物にならないモノということは一目でわかった。フレンダは剣に魔力を圧縮させて生み出した吹雪を纏わせると、それを斬撃としてソウジに向かって放った。


(『ブルー』系……つまり、最上位属性魔法か!)


 五大属性の『規則型魔法』は基本的にその名称で強さの段階が決まっている。


 火属性は下から上へと順にファイアー、フレイム、レッド。

 水属性は下から上へと順にウォーター、ブリザード、ブルー。

 風属性は下から上へと順にウィンド、ストーム、グリーン。

 土属性は下から上へと順にランド、グランド、イエロー。

 雷属性は下から上へと順にサンダー、ライトニング、パープル。


 最終的に色の名前がつく系統名が一番強い。ただし、闇属性と光属性は他の属性とは少し違う。


 闇属性は下から上へと順にダーク、ブラック。

 光属性は下から上へと順にシャイニング、ホワイト。


 と、このようになっており、二段階しかない。だが『ダーク』や『シャイニング』の時点で他の属性の二段階目に相当する強さを持つ。

 そして今回フレンダから放たれた『青吹雪ブルーストーム』。その呪文の名称からして水属性の系統で最上位の強さを持つ『ブルー』系の魔法。生半可な対応では負ける。

 ソウジは漆黒の刃を構え、魔力を集約させていく。


 貫通力に特化した必殺の一撃を――――放つ!


「『黒刃突ブラックショット』!」


 フレンダの放った吹雪の斬撃とソウジの黒刃が激突する。

 結果はすぐに現れた。

 彼女の放った吹雪は、漆黒の刃の一撃によって貫かれ、魔力の欠片と共に砕け散った。更に急接近したソウジはそのまま剣を振るう。フレンダは咄嗟に剣を盾にガードするが、ソウジはくるりとその場でしゃがみこみつつ、回転しながらフレンダの足を払う。

 ぐらりとバランスを崩した彼女を、下から斬りあげる。


「ぐッ!」


 その一撃にフレンダは見事に対応して見せた。が、刃と刃で激突させた状態から一気に魔力を解放させ、強引に打ち上げる。空を舞う彼女の元へと転移魔法で先回りし、今度は上から下に刃を叩き下ろす。『アトフスキー・ブレイヴ』の一撃をかろうじて『アクエリアス・グラキエス』で受け止めたフレンダだったが、その衝撃は殺しきれずに地面に叩き落とされてしまう。


 地上では土煙が立ち込め、ソウジはすぐに地面に着地する。そして煙の中からフレンダが現れた。


「……見事、だな。これは一本取られた」

「力を温存したままそんなセリフ言われてもなぁ……」


 彼女の持つ『皇道十二星眷』の力はこんなものではないはず。

 フレンダからはフェリスと同じように、今見せたもの以上の力を感じる。


「そうだな。ここからが、本番だ」


 やはりそうか。

 問題は、ここからなのだ。

 ソウジのその予感を的中させるかのように、フレンダは徐々にその魔力を増していく。


「――――『最輝星オーバードライブ』」


 青い魔力を身に纏った彼女は、星眷のリミッターを解除した力。

 『最輝星オーバードライブ』を発動させていた。


「『アクエリアス・グラキエス・ベータ』」


 彼女は青白いドレスに身を包み、先ほどとは比べ物にならない魔力を展開している。ただの模擬戦に『最輝星オーバードライブ』を発動させることに驚きを隠せなかったが、まあこうなるかもしれないと思ってはいた。流石に今の状態ではいくらソウジでも『最輝星オーバードライブ』を発動させたフレンダには勝てない。


 明らかに誘っている。『黒騎士』への変身を。


 相手は本来、水の力を有するはずであった『みずがめ座』を氷の力へと変貌させるほどの才能の使い手である。まずこのままでは勝てない。だが、『黒騎士』に変身すれば勝てるかもしれない。


 ここで降参することや負けるという選択肢はまず無い。いくら模擬戦とはいえ、大勢のギャラリーのいるこんなところで勝負を投げ出すか負けるかすればソウジの師匠であるソフィアの名が傷つく。ソフィア本人はそんなことを気にしてはいないとはいえ、それはソウジが許せない。自分のせいで師匠の名が傷つくなど。

 思えばわざわざあの場でソウジに模擬戦を申し込み、注目の的である転校生という立場を自覚し、こうして大勢のギャラリーをこの場に集めたのもソフィア・ボーウェンの弟子としてのソウジの退路を防ぐためだ。これで確信した。やはりフレンダは、騎士団からの調査員として間違いない。そして自分を、黒騎士だと疑っている。


「来ないならこちらから行くぞ、ソウジ」


 フレンダはソウジの秘密を切り裂かんとするかのように、その刃を煌めかせながら一歩ずつ歩を進めてきた。



 前々から決めていたもののなぜか説明できなかった魔法についての補足。



 魔法には『規則型魔法』と『不規則型魔法』があります。

 『規則型』は今回説明に出てきた段階があるタイプのやつ。


 『不規則型』はそれ以外の魔法です。例えば『ファイアーボール』が『規則型』だとすると、無属性の強化魔法である『プラスフォース』や星眷固有の魔法である『鋼翼刃フルメタルエッジ』、『魔龍斬デヴィルストライク』などが『不規則型』にあたります。また、今回フレンダが使用した『氷雨アイスレイン』も『不規則型』です。


 『規則型』は基本的にパッケージ化された魔法で、誰が使っても安定して使えます。もちろん、才能や鍛錬を積んだかによって強弱はあったり、精神状態によっては使えなかったりしますが。ようするに『規則型』は安定して魔法が使えます。

 ただし、幼少期のソウジみたいに魔力コントロールがド下手だとそもそも発動すらしません。というより発動する以前の問題です。


 ちなみに『規則型』は『不規則型』の魔法に比べると威力や種類、汎用性の面で劣ります。ただしその分安定しており、バランスが良い。コントロールもまだ楽。

 

 次に、『不規則型』ですが『規則型』に比べて安定性は下ですが各『星眷』固有の魔法があったり、威力が『規則型』より高かったりと、安定性には劣りますが種類も幅広くて強いです。ちなみに強化魔法や浮遊魔法みたいな無属性魔法はほぼ全て『不規則型』になります。


 要するにバランスがよくてコンロトールのしやすい『規則型』、バランスに欠ける代わりに幅広い種類や高い威力を持ち、それぞれの人に応じた一点物魔法がある『不規則型』みたいな感じです。


 更に作中設定に関する補足ですが、本来『みずがめ座』はオーガストの『ピスケス・リキッド』のような水を操るタイプの星眷ですが、フレンダの才能が凄まじく高い為に最初から水の上位属性である氷の力を持った星眷になりました。


 基本的に現在の一年生~三年生は才能的にも化け物揃いです。

 特に一年生。




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