第百四十二話 決着を
更新が大幅に遅れて申し訳ありません……!
色々と忙しくてこんなことに……。
MFブックス様のサイトで、書籍版「黒の星眷使い」の第四巻の表紙とあらすじが公開されました。
えいひさんの描いてくださった表紙、とても綺麗です! また、表紙にはあの新キャラも登場しています!
是非チェックしてください!
http://mfbooks.jp/4411/
白と青の魔力が全身から迸る。
光と水の属性を宿した力だということは、ロートも一目で分かった。
「『最輝星』か。見掛け倒しでないことを祈るぜ」
黒炎を球にして打ち込む。ライオネルは光の剣で球を切り刻んでみせた。
そこに一切の迷いも動揺もない。
己の力を高め、ものにしている。
「今ので分かったぜ。お前、楽しめるようになったみたいだなァ、オイ」
「うるせぇ。その余裕をぶち壊してやる」
光の剣を握りしめたライオネルは地面を蹴って加速する。
対するロートは黒炎をまとった拳でライオネルの頭を砕こうとするが、黒炎は空を切る。
光の軌跡を残して、白と青の鎧をまとった騎士が目の前から消えていた。
「こっちだ」
言われて、ロートは振り向く。と、同時に拳が飛んできた。
ガードも間に合わず、動くことすら出来ずにもろに叩き込まれた攻撃がロートの体を吹き飛ばす。
「ッ、テメェッ!」
体勢を立て直し、すぐさま黒炎をまとった拳を打つが、間髪入れずにライオネルが消える。
気配を探ろうとするが、辺りを高速で移動しており場所が掴めない。
「ハァッ!」
光が炸裂し、白騎士の鎧が輝きを増した。
彼は光の軌跡を描きながら増大したスピードを得た高速移動で翻弄しつつ、一瞬の隙を突いて拳を叩き込んでくる。
「ぐっ……⁉」
「てめぇが殺してきたやつらの痛み、思い知しりやがれッ!」
強化された白魔力の攻撃は着実にロートの体を削っている。
拳の一発一発が重い。
明らかに押し負けている。
体が削られ、煙のように、血のように魔力が噴き出していく。
「このアタシが……負ける、だとォ⁉」
敗北。
明確に迫ってくる己の死を自覚した時、ロートの中に黒い、邪悪な炎がメラメラと燃え上がった。
認めない。そんなことは、絶対に。
「ちょこまかとォッ!」
全身から炎の矢を噴出させる。
全方位同時攻撃。
周りの被害もおかまいなしに打ち込む攻撃。
もちろん、このままでは巫女にも当たり、死ぬ。
「けどよォ、お前なら庇うよなァ!」
予測通り。
ライオネルは高速移動を駆使して先回りし、黒炎の矢を切り刻んで巫女達を守った。
動きは止まった。
ここだ。
「死ぬのはテメェだ!」
ありったけの魔力を練り込んだ黒炎の閃光を放つ。
ライオネルは避けることはしなかった。当然だ。避ければ後ろにいる巫女達に直撃する。
だから避けない。直撃は避けられない。
見捨てれば自分は助かるのに見捨てない。
それが、
「それがてめェら人間の弱さだァッ!」
邪悪な炎が勢いを増し、光を押しつぶしていく。
「違うッ!」
ライオネルは右手に光の剣を生み出し、ロートの放った閃光に突き出した。
☆
光と闇が激突し、互いを削りあう。
激突の余波が周りにも影響を及ぼし、地面を削り取っていく。
ロートは言った。
それが人間の弱さだと。『それが』が、何を意味しているのかは言わなかったが、ライオネルには分かる。
だから否定する。
違う、と。
「仲間を守ることが出来る。互いに助け合うことも、支えあうことも出来る! それが人間の強さだ!」
自分一人ではここまでの力は得られなかった。
当の昔に脱落していた。
死んでいたかもしれない。
ユキという残された宝物がありながら。
だけど自分は今、ここにいる。
生きている。
仲間に支えられて。
これが強さでなくて、何というのだろう。
「う……おぉぉぉぉッ――――!」
光の剣が輝きを増していく。
押しつぶそうとして来る闇を払い、塗りつぶす。
想いを込める。
ありったけの魔力をこめる。
ここで負ければ、奴はきっとユキにも手をかける。
そんなことはさせない。絶対に。
(父さん、母さん……オレに力を貸してくれ!)
どこかで、誰かが微笑んだ気がした。
頷いてくれた、気がした。
「いっけぇぇぇ――――――――ッ!」
光が迸る。
闇を消し去っていく。
白と青の輝きはやがて巨大な渦となり、ロートを飲み込んだ。
「がァアアアアアアアアアアアアアアアアッ⁉」
その悲鳴は、未だ自分が負けたことを信じられないかのように聞こえた。
だけどライオネルは、言ってやる。
「あばよロート。お前だけは許すことは出来ねぇが……オレに大切なことを思い出させてくれたことだけは、感謝するぜ」
それは、勝利宣言であり、手向けの言葉でもあった。
光が止む。
静寂の中、この世界から一人の魔神が完全に姿を消した。