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黒の星眷使い ~世界最強の魔法使いの弟子~  作者: 左リュウ
第八章 ヘル・パーティ
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第百四十一話 リゲルモード

「黒の星眷使い」第3巻が発売されました!

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今回は完全書き下しとなっておりますので、web版既読者の方でも安心してお楽しみいただけますので、よろしくお願いします!


Twitterでも宣伝ツイートを呟いたり見どころを呟いたりしてるのでよろしくお願いします。

https://twitter.com/left_ryu


「オレは…………」


 何をしたくて戦っているのか。そんなことは決まっている。

 復讐だ。

 父親と母親の仇をうつためにこれまで戦ってきた。


 だけど、師はそれだけでは駄目なのだという。


「だったら、どうすりゃいいんだよ!」


 叫んだ直後、ロートの拘束が解かれた。

 巨人が溶解し、魔法の檻も砕け散る。


「しゃらくせぇ!」

「ッ! アイツ、もう出てきやがったのか!」


 魔神と化したロートのエネルギーは凄まじく、もはやヨーカクですら抑えるのは困難。

 ましてや、ライオネルでどうにかなるのか。


「それ、でも……!」


 やるしかないのだ。復讐を遂げる為に。

 なんでもする。なんでもやる。

 自分がやらねば誰がやるというのだ。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」


 叫ぶ。力の限り。

 拳を握り、剣を掴み。

 何の策もなく、ただただ前に突き進む。


 これまでもそうしてきた。

 親を殺されてから、復讐だけを目的にしてきた。

 目の前にいる魔神はライオネルにとってのすべてなのだ。


「テメェはもう飽きた。さっさと失せろッ!」

「ぐッ⁉」


 だというのに、当の魔神本人はライオネルのことを歯牙にもかけない。

 道端に転がる石ころを蹴り飛ばすかのように、黒炎で形作った巨大な拳でライオネルを薙ぎ払う。


「根性はアタシも嫌いじゃァねぇけどな。が、今は邪魔だ」

「ッのやろォ!」


 壁に叩き潰されてもすぐに立ち上がる。

 ただ、前に進む。

 拳を振るう。

 薙ぎ払われる。

 剣を振るう。

 殴り飛ばされる。


 何度も、何度も、何度も、何度も、何度も。


 立ち上がっては無様に転がされる。


 ああ、なんて。


 なんて…………、


「無様なんだよ……ちくしょう……」


 もう全身ボロボロだ。

 鎧はひび割れ、亀裂が入り、白亜の輝きも損なわれている。

 あの日から、人生のほとんどを目の前の魔神を倒すことに捧げてきたのに。

 こんなにも差があるのか。

 こうまで敵わないのか。


 頭の中でヨーカクの言葉がフラッシュバックする。


 ――――復讐だけに囚われ、目の曇っている愚か者には託せない。託したところで使えないからね。


 じゃあ、どうしろっていうんだ。

 仕方がないじゃないか。だって、オレにはこれしかないんだ。

 仇を討つことしか。

 復讐しかないんだ。


 ――――思い出せライオネル。


 何を思い出すっていうんだ。


 ――――君が戦う理由を。


 理由なんて決まっている。復讐だ。仇を討つんだ。


 ――――君は何をしたくて戦っているんだ?


 何をしたくて。何をしたいか。

 復讐。そう。復讐だ。

 オレ達の親を殺した魔神を殺す。

 オレとユキの親を殺したアイツを…………、


「あ…………」


 それはあまりにも突然だった。

 不意に、突然に。

 何かがストン、と心の中に納まった。

 まるで、欠けていたピースを見つけたかのような。


 一滴のピースがぽつりと頭の中に広がり、波紋を広げる。

 何のための復讐か。誰の為の復讐か。

 そもそものきっかけは、何なのか。


「思い出した…………そうだ……オレは……」


 頭の中に浮かぶのは、妹の……ユキの、笑顔。


「ユキを、守りたかったんだ……」


 守ること。

 それがきっかけだった。


 残されたユキという存在を守りたくて。

 必死になって。

 力を求めた。

 復讐という動機を求めた。

 それがいつからか歪んでしまった。きっかけを忘れて、前に進むことしか考えていなかった。

 最初はただ、守りたかっただけなのに。


「忘れてたぜ…………ったく、本当に大馬鹿野郎だ、オレは……」


 拳を力強く握りしめ、立ち上がる。


「待ちな…………魔神」

「あァ?」


 ロートは立ち上がるライオネルを見て、心底めんどくさそうに声を漏らす。


「まだ立つのかよ。いい加減しつこいぜ、テメェ」

「しつこくなきゃ復讐なんかやってられねぇよ」


 思い出した。

 自分が何のために戦っていたのか。

 復讐。だけど根っこにあるのは『守る』ことだと。


「そんなボロ雑巾みたいな状態でなァにが出来るってんだよ」


 確かに。

 今や全身ズタボロだ。鎧は亀裂が入っているし、剣もひび割れている。

 体には力が入らないし、立っているのがやっとの状態だ。

 でも不思議と、負ける気はしない。


「お前に勝つことぐらいは出来る」

「ハッ。ほざくんじゃねェよ。いい加減、テメェの戯言も聞き飽きた」


 ロートは手を掲げ、さながら太陽の如く巨大な火球を作り出す。

 あんなものをくらえばひとたまりもない。

 死は免れない。どころか、死体すらも残らない。


 恐怖はない。

 不思議な感覚が体を包み込んでいる。

 自分が今、何をすべきか頭が理解している。


「消え失せろッ!」


 禍々しい太陽が迫る。

 灼熱の業火に身を焼かれる刹那、


「いくぜ…………!」


 力を振り絞り、再び魔力を込める。


「――――『最輝星オーバードライブ』ッ!」


 白銀の輝きがライオネルを包み込んだ。

 爆炎が巻き起こり、空気を焼く。

 だが、白の輝きはロートの作り出した死の炎を瞬く間に斬り裂いた。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」


 白の輝きに混じって青い光も生み出され、嵐を起こす。

 嵐の中、ライオネルの剣が光の粒子となって分解され、鎧を新たに構築していく。

 暴走はしていない。

 安定している。

 ライオネルが発動した『最輝星』を、ヨーカクとルナ、ユーフィアも目にしていた。


「それでいい。君はそれでいいのさ、ライオネル。復讐に囚われたダークヒーローなんて君には似合わない」


 白と青の光が斬り裂かれる。

 中から現れたのは、新しく生み出された、白と青の鎧に身を包んだ『白騎士』の姿。

 ロートは驚愕の表情を露わにし、新生したライオネルを凝視している。


「テメェ……一体そいつは……」

「これがオレの『最輝星』…………ソウジに習ってつけるなら、『リゲルモード』ってところだ」


 新たに生み出された姿、リゲルモード。

 全身を白と青のパーツで構成された鎧。


「すごい……! ヨーカクさんの『星遺物』を使わずに変身しました!」

「それは当然さ、ルナさん。何しろこの『星遺物』は確かに『星遺物』ではあるけれど、今はただの飾り。鎧の『強化パーツ』だなんて話は嘘だからね」


 けろっとした顔で言ってのけるヨーカク。


「もしもあの我が弟子が、最後までこいつに縋ろうとしていたのなら……私はきっと、あの子を見捨てていただろうね。そうしなければいけないぐらいに、あの子の中で復讐心というものが大きくなっていた」


 だけど、ライオネルは乗り越えた。

 ならばもう。あとは見守るだけだ。


「へェ……やるじゃねぇか。これならちっとは楽しめそうだ」

「楽しめるもんなら楽しんでみな。赤の魔神」


 ライオネルは右手に光の剣を出現させ、切っ先をロートへと向ける。


「その前にオレがテメェをぶった斬る。オレの守りたいものを、守るために!」





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