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黒の星眷使い ~世界最強の魔法使いの弟子~  作者: 左リュウ
第八章 ヘル・パーティ
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第百四十話 時間稼ぎ

7月25日(月)発売、「黒の星眷使い」第3巻の表紙が公開されました!

↓MFブックス様の公式サイトで確認できます!

http://mfbooks.jp/4060/


また、特典の情報も公開されました。

↓活動報告に書いておいたのでご確認を!

http://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/146332/blogkey/1461751/


Twitterでも宣伝ツイートを呟いたり見どころを呟いたりしてるのでよろしくお願いします。

https://twitter.com/left_ryu



繰り返しますが発売日は7月25日(月)! つまり来週発売です! よろしくお願いします!

「『七色星団』だと? あァ、ナルホド。ソフィア・ボーウェンのお仲間か」

「勿論イエスだ赤の魔神。単細胞のようだが、こちらの情報を記憶できる程度の頭はあるようだね」

「挑発のつもりかよ」

「いやなに、ただの感想さ。私は正直者だからね」


 ヨーカクはウィンクを決めるとパチンと指を鳴らして空中にカップを出現させる。彼がカップを持つと中に黒い液体が現れた。


「失敬。私はこの『コーヒー』という飲み物が大好きでね。こうして定期的に摂取しているんだ。……うむ。やはりカフェインは良いものだ。私はこれなしでは生きていけない」


 優雅にカフェインを摂取するヨーカクは、「さて」と言いながら地に伏すライオネルを見つめる。


「ここからはお説教タイムだライオネル。ユキは頑張っているというのになんだね君のそのザマは」

「おいコラ。アタシを無視して勝手に説教タイムに入ってんじゃねぇぞ!」


 地獄の業火とも呼ぶべき禍々しい火球が襲い掛かる。が、ヨーカクはしれっとした表情で魔法陣を展開して弾き、受け流していく。

 真正面から受ければ魔法陣も木っ端みじんに吹き飛ぶような攻撃だろうが、彼は防御用の魔法陣の角度や魔力を調整することで攻撃を別の方向へと逸らしているのだ。

 絶妙な魔力コントロール技術。いつもと変わらぬ師の強さ。


「何度も何度も私は忠告したはずだ。復讐心だけで白魔力を使いこなせはしない。『最輝星』などもってのほか。むしろ君がご両親から授かった、純白の魔力が穢れてしまう」


 恐ろしい威力を秘めた火球が降りしきる中、ヨーカクは平然としながら、淡々と説教をこなしていく。

 まるで「雨が振っているから傘でもさそうか」と言わんばかりの表情だ。


「なに、心を無にしろとは言わないさ。心には何かを秘めておくべきだ。それがたとえ復讐心でもね。目標に向かって突き進むのは何より人を動かすエネルギーだ。が、君に関しては、否、白魔力に関してはダメだ。白魔力は意外とデリケートなんだ。なんといっても、アレは人の想いを力に変える。復讐心などという視界の狭くなるような想いでは制御は出来んさ」

「チッ……ならこいつはどうだ!」


 魔神と化したロートは膨大な炎の渦を凝縮させ、巨大な拳を作り出す。


「ッ、おい師匠! アレは流石に…………!」

「話はまだ終わっておらんよ。ライオネル、君に足りないのは落ち着きだ。一杯どうだね? ああ、そうそう。そちらのお嬢さんたちもどうかな?」


 ヨーカクはぽかんとしているルナとユーフィアに向けてコーヒーを薦める。


「なぁに、苦いがミルクと砂糖を混ぜれば君達でもなんとか飲めるはずさ」


 巨大な炎の拳が放たれる。

 が、それでもヨーカクは怯まない。


「ふむ。夏を感じるね」


 それだけを言うと、カツンとステッキで軽く地面を叩く。

 すると、地中から巨大な壁がせり上がり、瞬く間にロートの放つ炎を防ぎきる。


「魔神のお嬢さん。君と遊ぶのは骨が折れるからね。少しだけ待っていてもらおう」


 ヨーカクが指を鳴らすと、壁がボコボコと蠢き、巨人へと形を変える。


「デカブツが!」


 ロートは炎の剣を生み出すと巨人の右腕をあっという間に一刀両断してしまう。

 魔力を一点により鋭く集めたことで切断に成功したのだ。


「やはりまともにぶつかると火力の面で押し負けるか。まあどの道、君達魔神は殺せない。何しろ私は白魔力を持たないからね」


 ヨーカクはゴーレムを瞬く間に復元させる。が、再生させた傍からロートは切り飛ばしていくが、魔神が削るスピードより速くゴーレムを復元させていく。それと同時並行でゴーレムに幾重にも魔法をかけていく。何十、何百、何千といった魔法を。


「少しの間、檻に入ってもらうよ」


 ゴーレムはその巨大な二つの手でロートを覆いつくす。対するロートは真正面から炎をぶつけて焼き払おうとするが、ヨーカクが幾重にも施した多種多様な魔法の壁に阻まれた。

 地鳴りのような音が響き、巨人の手がロートを多い、抑え込み、封じることに成功する。


「これでほんの僅かな、星の瞬きほどの時間が稼げる。まあ、すぐに出てくるだろうけどね」


 けろっとした表情で言ってのけるヨーカク。

 アッサリと。

 ライオネルが苦戦どころか一方的に押し負けた相手をこんなにもあっさりと封じ込めてしまった。


「ライオネル。今のが君の一撃だったら、確実に魔神は終わっていただろう。だけど君に魔神を倒すことは出来ない」

「…………ッ……」


 そんなことは分かっている。

 自分の弱さを今、痛感している。


「チャンスをあげよう、ライオネル」


 ヨーカクは懐から小箱を取り出し、蓋を開ける。

 中には鋼鉄で形作られた、小さな鳥の形をした魔道具が収まっていた。


「それは……『星遺物』ですか?」


 巫女としての直感が働きかけたのか、物を見ただけでユーフィアが言葉を漏らす。


「正解だ。エルフのお嬢さん。ライオネルがつけているブレスレットと同じ、『星遺物』を元に私が改良を加えた『星遺物』でね。私の作った『鎧』の強化パーツ、といったところだ」

「それをつかえば……勝てるのか、魔人に」

「かもしれない。それは君次第だ、ライオネル」

「構わない。師匠、それをオレにくれ!」

「ダメだ」


 目の前に提示された希望に縋るライオネルを、ヨーカクは一蹴する。


「復讐だけに囚われ、目の曇っている愚か者には託せない。託したところで使えないからね」

「ッ…………!」


 だから、と。

 ヨーカクは師としての目でライオネルと向き合う。


「思い出せライオネル。君が戦う理由を。君は何をしたくて戦っているんだ?」




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