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どうやら裕福な家庭のようです。


 光が収まるとあたしは、膜につつまれて水の中にいた。苦しくないのか?とか思うだろうが、まったくそんなことはない。

 逆に心地いいくらいだ。これは、きっとあれだ。え~っと、何だっけな。あ、そうそう。お母さんの中の"羊水″ってやつだ。うん、あったかい。

 薄っすらとだけど光も感じる。薄い膜に手を当ててみると、外からの音が振動として伝わってくる。

 そして、かすかに人の話し声が聞こえてきた。

「ねえ、貴方。生まれてくる子はどんな子かしら。イルフォードやアルフォードみたいに元気な男の子かしら。それとも、ユーティリアやマゼンダみたいにかわいらしい女の子かしら。貴方は、どちらがいいの?」

 どうやら今度の両親は、もうすでに子供がいるらしい。しかも、かなりのラブラブ具合と見た。

「僕はどちらでも構わないよ。君が生んでくれる子供なら、どんな子だって素敵に違いないのだからね」

 パパン、それは言い過ぎだろう。そう、思わず遠い目をしたくなってくる程に甘すぎる会話だ。けど、愛されていることに変わりない。愛されて生まれることに、あたしは安心した。生まれた時から、疎まれての生活なんて厭すぎる。安心したからなのか、あたしは徐々に眠りに落ちていった。

  柔らかな優しい声と深くて少し低い温かみのある声に包まれながら…。


 それからは、毎日これから父と母になるであろう人達の惚気やらなんやらを延々と聞かされた。おなかの中で。しかし、時折両親の声ではなく、別の声が聞こえる時もあった。それが、多分あたしの兄弟となる人たちの声だろうことはすぐに予想がついた。とても明るくて、楽しそうに話している。いつかあたしもその中に混ざることができるのだろうか。

 あたしはその時を楽しみに、再び眠りについた。



 またしばらくして、まどろみの中から意識が戻ってくると、今度はさらに意外なことがわかった。

どうやら、あたしの家族はかなり裕福だということ。いえね、外の様子をうかがっていると、召使さんらしき人がいることが判明。まず思ったこと、それは―――

(うちの親が貴族かぁ…。やっていけるかな。というか、貴族って美形な人のイメージがあるけど…、うちの両親はどうなんだろ。もし美形なら、あたしも美形だって可能性が高い。それはそれでおいしいけど…やっぱり以前の――生前のあたしのままがいいな)

 容姿のことだった。いやさ、普通に考えてだよ。今までと姿かたち変わってたら、違和感なくね?

やっぱし見慣れた姿がいいっていうか…。あたし自身、以前の姿が好きだったし、何のとりえもない普通の顔だったけどさ。

 ま、とりあえず普通の容姿で生まれることを期待しときますか。ってか、それしかできないしね。

あ~あ。早く生まれて、楽しいこといっっぱいしたいなぁ。あ、神様(?)から言われたことしなきゃいけないんだった…。……………面倒くさっ。やりたくねーなぁ…。しょうがないか。やることやれば、後は好きにして良いらしいし。

 大山サツキ、いっちょ頑張りますか!!


 サツキは決意を新たにし、次の人生を謳歌してやろうと、気合を入れた。

 こうしてサツキ―――またの名をサティルノの物語は幕を開ける…。

 波乱万丈なのか、それとも普通の人生になるのか。

 それはサツキ次第であることに変わりはないのだが…


(…待てよ。貴族になったら、お城とかにも行くよね。そしたら、王子様とか、その側近とか…いろんな男―――しかも極上の!!!―――を間近で見れるってこと!?それにあまり女の人がいないってXXXも言ってたし…、ってことは、やっぱり…、うはー!俄然やる気が出てきた!!神様ありがとう!あたしこの世界これてよかったわ。BLが、しかも生BLが見れるなんて…!さいっこーじゃない!不良×平凡や、主×従者、逆もまたしかり…!なんて美味しいの!!今なら、何だってできる気がするわ!!)


 どうやら、あまり心配の余地も無さそうなほどに異世界に馴染むサツキであった…。

 しかし、その前に、

(生まれることが先よね…。ああ、早く外の世界を見てみたい!)

 早く両親や兄弟に会いたい。早く家族になりたいと、そう思うサツキであった。





  まだかな。まだかな。はやくあいたい。


  あいされたい。あいしたい。


  はやくかぞくになって、いっしょに

 

  わらいたい。なきたい。あそびたい。


  だから だから はやく はやく


  うまれておいで わたしたちの いとしき こどもよ


  どうか どうか きみが


  ひとりでも おおくのひとに あいされることを


  このせかいを あいしてくれることを


  これから きみに


  ひとつでも おおくのしあわせが おとずれることを


  わたしたちは ねがっているよ


  はやく あいたいな あいたい あいたい




  ああ わたしたちのもとに うまれてきてくれて


  ありがとう ありがとう





しかし、明るい話にするとか言いながら、まったくなってませんね…(^^;)

どうも自分は、明るくするのが苦手なようです……。

これから、精進してまいりたいと思います。

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