04 おやすみ
その夜、ヒカリはなかなか寝付かなかった。新しい場所に慣れないせいか。そう言えば僕はヒカリのことを全然知らないと思いつつ、彼女の部屋に入った。
「…おうじさまはおひめさまをみると、きっとおひめさまがたすけてくれたのだとおもいました。…」
一人でぶつぶつ言っている。そう言えば藤本教授がお話を聞かせてくれると言っていた。しかし一人で思いだしながら喋っても眠れないのだろう。
「何のお話?僕が聞かせてあげようか」
「ほんと?あのね、『人魚姫』」
寝物語が人魚姫か。
「分かった、ちょっと待ってて」
僕はパソコンで文章を探し、コピーした。プリンターから紙が出るまでまた考えた。
藤本教授は人魚の分野で政府にも一枚噛んでいる。その人がなぜ売ったりなど・・・。
僕は紙を見ながら話を読んだ。ヒカリはじっと大人しく聴いていた。
「・・・人魚姫は泡になって消えてしまいました。おしまい・・・」
「おはなしがちがうわ」
「え?」
ヒカリは少し眠たそうにしている。紙を揃えながら僕は尋ねた。
「どこから違った?」
「ナイフをすてるところまではあってたわ。そのあとまじょがきて、にんぎょひめがしななくてもすむようにしたのよそれで、おうじさまにほんとうのことをいって、ふたりはけっこんするの」
僕はぽかんとした。藤本教授は何を思って―――。
「そっか。じゃあ、きっとこれは別のお話だったんだな。今度藤本教授にちゃんとしたやつを聞いてくるよ。それまでは、他のいろんなお話を読んであげよう」
「うん」
ヒカリはにこっと笑った。そして、上目遣いで付け加えた。
「でも…さっきのもきらいじゃなかったよ」
何とも言えない優しい気持ちになる。僕は思わず目を細めた。
「おやすみ」
「おやすみ」




