ラブコール大作戦
主人公の少し過剰な胸騒ぎから始まる、キャンパスでの一幕です。
「勘違いならいいのに」と思いながら走った先で待っていたのは……。
少し切なくもドライな空気感を楽しんでいただけたら嬉しいです!
朝もはよからメッセージを送った。返信はすぐ来た。
━━起こしてくれて有り難う!
返ってくるメッセージ。
お役に立てて良かった。早く会いたいね
━━今日は1時限から講義あるから、もう家を出なくちゃ。
どこか余所余所しい。うん。怪しい。
わたしはすぐ訝しむ。慎重なのか、ただ単に疑い深いのか?独占欲が強すぎるのかもしれない。
でも確かに、何か他人行儀に感じる。
ヤバい!こういう感情が持続すると、いつか忍耐力が限界を超えたときに爆発する。
早く大学キャンパスに行かなきゃ。彼とわたしは同じ大学生だ。この日の彼の1限目の講義は何処の講堂で行われるかはわかっている。
ストーカーみたい。
彼の行動を全て把握しているわけではないが、これは立派なストーキング行為かもしれない。
まあともかく。キャンパスに着くと、彼の講堂の入り口で息を整えた。ドアが開いて出てきた彼は、友人たちと笑い合いながらスマホを操作している。その画面を一瞬覗き込んだわたしの目に飛び込んできたのは、見たこともない女性との親しげなやり取りだった。心臓が嫌な音を立てて跳ねる。
嫌な予感が的中したのか。残念ながら そのようだ。ここからは彼への復讐の仕方を考えよう。
そんなことをしたって何にもならないことは分かっているが。そうでもしなきゃ気が済まない。
彼がこんな初歩的なミスをするとは意外。
こうなったら、今この瞬間、公衆の面前で彼の頬を思い切り叩いてみようか。
いやそんな生易しくては叶わない。熱は急速に冷めていく。
もう彼なんてどうでもよい。いずれ こうなる運命だったんだ。
そう思うしかない。
彼がわたしに気づき、ヘラヘラとした笑顔で手を振ってきた。その薄っぺらい顔を見た瞬間、胸の奥で渦巻いていたどろどろとした嫉妬も、復讐への情熱も、驚くほど綺麗に消え去ってしまった。
「あ、おはよう! なんでここにいるの?」
能天気な声が空気に溶ける。わたしは叩くはずだった右手で、バッグのストラップを強く握り直した。
「ううん、通りかかっただけ。……それじゃね」
「え? 待ってよ、昼一緒に食べ――」
呼び止める声を背中に聞きながら、わたしは一度も振り返らずに歩き出した。
連絡先をブロックし、彼とのトーク履歴を削除する作業はほんの数十秒で終わった。あんなに胸を締め付けていた執着が、嘘みたいに軽い。
復讐なんて、自分の貴重な時間を1秒でも彼のために使うのがもったいない。
秋の冷たい風が頬を撫でる。わたしは深く息を吸い込み、次の講義が行われる教室へ向かって、いつもより少しだけ軽い足取りで歩き始めた。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
感情が一瞬でサーッと冷めて、何の未練もなく相手を切り捨てる主人公の潔さを書いてみました。
執着を手放した瞬間のすっきりとした軽やかさが、秋の冷たい風とともに伝わっていれば幸いです。
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