序章
美しい星が落ちた、私が8歳のあの夜に
私は町の外れの静かな森にいた
いつも通り綺麗に煌めく星を見るために
みんなに内緒で家を抜け出して
夜の帳がゆっくりと降り始めた時
私の住む穏やかで小さな町に
巨大で醜悪な殺意が形を持ったような
大きな魔物が現れた。
人々の悲鳴と泣き声が、私の耳に響いた。
その時私の町に恐ろしい魔物に向かって
町を飲み込むほど巨大で綺麗な真っ赤に熱せられた玉鋼のような星が落ちた。
轟音と共に私以外の全てを飲み込んで。
なぜか私はその星に恐怖を
掻き消されてしまうほどに
強く強く魅了されてしまった。
あれから9年、私は落ちた星に魅入られて、
落ちる星を再現するための研究をしている。
煌良「はぁ…あともう少しだと思うんだけどなぁ…」
幾度と繰り返した落ちてきたあの星の欠片を
使った実験がまた失敗してしまう。
私は小さくため息をついてから杖を机の上に
置いて立ち上がり、気持ちを切り替えようと自分の研究室を出る。
???「どうしたの、そんな浮かない顔して」
煌良「また失敗だよ〜あの研究。」
研究室を出てすぐ、私の一番の友達
真尋にいつものように声をかけられた。
真尋「まだやってたの!欠片の研究!」
煌良「声が大きい!」
真尋「ごめんって、でも辞めた方がいいじゃないあんな危険な研究、やってる事がバレたら魔術協会のお偉いさんから目をつけられちゃうよ。」
煌良「バレないって、若くて名もない魔術師が個人でやってる研究なんて魔術協会に見つかるわけないよ」
周りに誰も居ないことを確認してしばらくの間、他愛のない会話をして、煌良は研究に戻った。
それから1ヶ月後…
煌良「やっと…やっと一歩前進だ!」
煌良の魔力を繋ぐことで起動する星の欠片を素材とした最上級の魔道具がついに完成した。
魔術や補助、魔力で操作する事により液体と固体に切り替えれる性質を活かした近接戦闘での攻防などができる優れもの。
これでようやく煌良は目標に一歩近づく事ができた。
数日後…煌良の研究室に一通の手紙が届いた。
煌良
その手紙の内容は、煌良を魔術協会の幹部の元へと招集するものそしてこの手紙の内容は
誰にも話してはいけないというものだった。
煌良(研究が見つかった?!)
煌良(いや…まだ見つかったとは限らない…)
出来る限りの隠蔽をした、それでも見つかった可能性に煌良は動揺を抑えきれない。
煌良(見つかったとしてどうする?逃げる?いや…逃亡しても捕えられる…。)
煌良(こうなったら会うしかないね…。)
念の為煌良は、自分が出来る最大限の準備を整えて魔術協会の幹部…星によって全てを失った煌良を拾い育ててくれた養父の元へと向かった。
煌良(久しぶりだね…お父さんと会うのは)
煌良「失礼します」
朔乃「来たか…今回私が君を呼び出した理由は、君の研究内容に関係している。」
煌良
朔乃「君もわかっているとは思うが、星に干渉する事は生命と運命に干渉することで、生命を歪め魔物に変異させられる魔術界の禁忌とも言える存在。」
朔乃「そんな物を研究すれば魔術協会ましてや王国にも目をつけられる、今王国は魔物との戦争中だ…生命を魔物に変えられる魔術を放置しておく訳がない。」
煌良(お父さん…かなり怒ってる…)
朔乃「その王国が数日前にこの周辺で星のエネルギーを感知したので、調査に来るという報せが入った。」
朔乃「恐らく…君が今持っているその魔道具が完成した時に発した魔力を感知したのだろう。」
朔乃(17歳でこのレベルの魔道具を開発出来るとは…親として誇らしいと共にその才能が少し恐ろしくもある。)
朔乃「これまでは隠し通せていたが、王国が調査しに来るとなればそれも無理だ。」
朔乃「まだ間に合う…研究を辞める気は無いか?」
父から、最悪の選択肢が提示された。
煌良(嫌だ…絶対に嫌、この研究を辞めるなんて)
研究をやめるとなればこれまでの記録も、数日前に作ったばかりの魔道具も全て処分しなければいけない。
だが、それよりも煌良はこの止められない、溢れんばかりの星に対する興味や憧れを棄てることがなによりも嫌だった。
煌良「研究を辞めるのは…絶対に嫌。」
煌良は意識せずにその言葉を放っていた。
それからしばらくの沈黙が続き…
朔乃「そういうと思っていたよ、この研究を続けようとするなら…。」
先に沈黙を破ったのは父だった。
それに煌良も続き言葉を発する。
煌良「するなら…?」
煌良は少し震えた声で父に問いかけ、臨戦態勢をとる。
返ってきた言葉は意外なものだった。
朔乃「落ち着いてくれ、悪いようにはしない。」
朔乃「君はとても優秀だ。」
朔乃「…私も昔に星に関する研究に携わっていてね、協会が総力をあげて取り組んだ…まぁ私は端役も端役だったが。」
朔乃「少なくとも私が聞いていた研究目的は、人を幸せにする事を目指す素晴らしいものだった。」
朔乃「だが…突然研究の中心人物らが研究成果を全て盗んで姿を消したらしい、人づてに聞いた話だから、私も詳しくは知らないが。」
朔乃「すまない、話が逸れてしまったな。」
朔乃「とにかく君はとても優秀だ。そんな優秀な君でも王国が本気で調査をすれば…君は追われる身となってしまう。」
朔乃「だから君を王国から出来るだけ遠ざけるために幹部としての権限を使い君には遠征任務に行ってもらう。」
朔乃「場所はカル村という村だ穏やかな田舎村だが最近近くで魔物が確認されたらしい。」
朔乃「君にはその魔物の調査、必要があれば討伐をしてもらう。」
父から明かされた情報、突然言い渡された遠征任務に煌良は唖然としながらも頭と心の整理を始める。
朔乃「言い忘れたが、出発は明日だ。」
煌良「明日ぁ!?」
朔乃「あぁ、持っていく荷物をまとめて、持っていかない研究道具は処分するように、それ以外の支度は私がやっておこう。」
煌良(明日って…はぁ…急がないと。)
煌良はそれから慌てて研究室に戻り、遠征任務の準備を始めた。
煌良「あぁ〜もう!いきなり研究道具を処分しろなんて…もう全部持っていくしか…」
そうこうしているうちに1日が経ち出発の時間が来てしまった。
朔乃「まさか…こんな大事な日に遅刻は無いだろうな…。」
父が煌良が乗る予定の馬車のそばで不安そうに呟く。
煌良「おと〜さ〜ん」
煌良が息を切らしながら、馬車に乗り切るか不安になるほど大きな荷物を背負って走ってくる。
朔乃「まったく、遅刻ギリギリだぞ。」
煌良「セーフ!間に合ったからっ!」
朔乃「そういう事をいってるんじゃない!それになにが入っているんだその大荷物には…。」
煌良「すごいでしょ!研究道具を全部分解してこの袋に詰めて来たんだよ!」
朔乃「研究道具を全て!?そんな重いものどうやって背負って来たんだ…」
煌良「ふふっ、聞きたいんだ~。」
煌良は無邪気な子供のような顔をしながら父にそう言った。
煌良「私が星の欠片で開発した魔道具、名付けて「星滴」を第三の腕みたいにして運んでるんだよ!」
朔乃「ははっ、君は本当に天才だな!」
朔乃「おっともう時間だな、私は御者を呼んでくるからもう馬車に乗っていなさい。」
朔乃「それと…君に渡す物がある私が知る星に関する知識の全てを記した本と君の誕生日に渡そうと思っていた両手杖だ。」
煌良「ありがとうっ!」
朔乃「すまないな…私の力では君を王国から遠ざけるだけで完全に守りきる事はできない。」
煌良「ううん…謝る必要なんて無いよ、お父さんはお父さんに出来る最大限の事をしてくれた。」
煌良は満開の笑顔とほんの少しの涙を浮かべて父に感謝した。
その後、父は御者を呼びに行きついに出発の時間が訪れた。
朔乃「これからしばらく会えなくなるな…。」
煌良「別に今生の別れって訳じゃないって。」
朔乃「そうだな…。」
御者「お嬢様さん、そろそろ出発しますよ。」
煌良「しばらくの間寂しいと思うけど、またねお父さん!大好きだよ!」
朔乃「あぁ…また会おう。」
その言葉を最後に煌良を乗せた馬車は走り出した。
朔乃「本当に…寂しくなるな…。」
この作品を読んでくださり、ありがとうございます。
今回が初投稿なので、至らない点も多いと思いますが、温かく見守っていただけると嬉しいです。
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