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プロローグ
妃候補という立場は、私にとって救いであり、檻でもあった。
家が傾き、誇りだけを抱えて生きる私に残された道は、それしかなかった。
選ばれる保証などないと分かっていながら、私はその名を名乗った。
けれど――
誰かに選ばれる前に、私はすべてを失いかけていた。
夜の路地裏。
行き場をなくした私の前に現れたのは、名も身分も明かさない、不思議な青年だった。
彼は何も問わず、ただ静かに手を差し伸べる。
その手が、どれほど危険で、どれほど優しいものなのか。
この時の私は、まだ知らない。
これは、
没落寸前の家を背負った妃候補の私が、
正体を隠した王子に拾われ、守られ、
やがて溺れるほどの想いを注がれていく物語。




