70 宝探し開始
イベント開催当日。俺はイベントが開始すると同時にイベント用のフィールドへ移動する。視界が暗転し、目の前にイベントフィールドへ移動中というウィンドウが表示される。
事前に準備は済ませてあるので、イベント開始時刻の12時になった瞬間、イベントに参加した形だ。
イベントフィールドへの移動方法は、各町に存在しているギルドに設置されている専用の受付で『イベントに参加する』を選ぶことで移動することが出来る。
すでに俺と同じようにイベントフィールドへ移動しようとしていたプレイヤーが複数いたが、金曜の夜にしてはそこまで多くはないように感じだが、最初は様子見というプレイヤーが多かったのかもしれない。
暗転していた視界が回復し、目の前に表示されていた移動中のウィンドウが消えて完全にイベントフィールドへの転送が完了された。
「無人島系のフィールドなのか」
転送されて最初に目の入ったのが目の前に広がるジャングル。そして足元の砂浜。振り返ればそこには海が広がっていた。
「です」
シュラは砂浜の感触が気になるのか、何度も足踏みして砂の感触を確かめていた。ぷらてあは日当たりがいいからか、陽がさしている方へ向き直り、そのまま動かずに日を浴びている。
「時間も限られているし、さっさと探索しに行くか」
宝という名のポイントを稼げるのは合計6時間までだ。場所はいいし、のんびりするにはいい場所ではあるが、そうしている時間はあまりない。
「いくぞー」
砂浜を楽しんでいるシュラとのんびりしているぷらてあを連れて俺はジャングルの中へ足を進めた。
イベント用のフィールドだけあってジャングルの中であってもけもの道のようなものがあり、ある程度歩きやすいようになっていた。ただ、このけもの道を少しでも逸れれば完全にジャングルの茂みの中に突入することになる。
まあ、このままけもの道を進んでいても宝は見つからないだろうから、どこかでこのジャングルの中に突入しなければならないわけだが。
「時間制限がある以上、道を探している余裕もないだろうし、適当に突っ込んでみるか」
他よりも少し進みやすそうな場所を見つけてそこからジャングルの草むらに突入する。草を分けるように足を進めていくと、俺の後ろをシュラとぷれてあが付いて来ていた。
しばらく歩いていくと少し開けた場所に出た。
「ですー」
「・・・」
少々歩き難い草むらを進んできたからか、シュラとぷらてあが少し疲れているような表情をしている。
心配になったため、少しかがんで2人の様子を確認する。
「2人とも大丈夫か?」
「大丈夫ですー」
「ん」
返事を聞く限り大丈夫そうだな。というか多分疲れたというよりも歩き難いからそれが不満って感じなのかもしれない。
いっそ俺が2人を背負えればよかったのだが、今の姿だとさすがにどちらかしか運ぶことはできそうにない。こういう時に小柄なアバターは不便なんだよな。
まあ、俺がそういうキャラにしたんだけどさ。
「うん?」
少しかがんだことにより視線の位置が変わったことで草むらの中に何かがあることに気づいた。
「このフィールドで何かあるってことは…」
その何かを草むらの中から引っ張り出す。少し土を被っていたためそれを払い確認するとそれは地味な革袋だった。そして、それを動かすと何か金属がぶつかるような音が鳴った。
「やっぱりな」
その袋の中を確認すると入っていたのは金色のコイン。それを手に取った瞬間、視界の端に現在の獲得ポイントが表示され、同時に手に持ったコインがその場から消えた。そしてそのコインが入っていた革袋も同時にどこかへ消えて行った。
「おっと?」
「なんです?」
持っていた袋とコインがいきなり消えて驚き声を上げたことで、それが気になったシュラが声を掛けてきた。
何が起こったかよくわかって居なさそうな反応からして俺が手に持ったものが見えていなかったようで、シュラとぷらてあが首を傾げながら俺のことを見ていた。
「ああ、今拾ったのは今回探している物だよ」
「探すです?」
「あー、シュラ達には見えないみたいだけど、探すのを手伝ってもらう感じだな」
「わかった」
手伝ってもらうという言葉にぷらてあが反応してそう言葉を返してきた。シュラも手伝うということでやる気が出たのか、両手を上に突き出し気合を入れているようなポーズをとっていた。
本当にわかっているのか微妙な気がするが、やる気が上がる分にはいいだろう。さっそく見たようなものが無いか周囲を探索していこう。
最初に宝であるコインを見つけてからしばらく。
ジャングルの中を探索し順調に宝を見つけて着実に獲得ポイントを伸ばすことが出来ている。
「今のポイントでどのくらいの順位なんだろうな」
他のプレイヤーが居ない空間のため、どれくらい宝を見つけているのか判断ができない。
「前回は途中でランキングが出たからなぁ」
時間経過で順位が表示されていた前回のイベントとは違い、今回のイベントは期間中であればいつでも参加することのできるため、参加期間が終わるまで順位が確定することはない。
しかも俺はイベントが始まってすぐに参加した形だ。仮に順位が表示されていたとして、ある程度の指標になるかもしれないが、イベント初日なのでランキングとしては大して参考にはならないだろう。
「ですー」
今のポイントを眺めてあれこれ考えていると、俺が見つけている宝が見えないことが不満なのか、少しシュラの機嫌が悪そうな声を上げていた。
ぷらてあはそこまで気にしている様子はないが、何かと興味を持つことの多いシュラは見えないというのが相当不満らしい。しかし、こればかりはイベントの仕様のため俺ではどうすることもできない。
良い感じでシュラをあやしながら宝探しを再開する。
これまでお宝を見つけた場所と同じような場所を探しながら歩く。木のうろの中やちょっとした洞窟。最初に見つけたように草むらの中にもあったがこれは少し獲得ポイントが低めだ。
お宝の種類はコインだけではなく、ザお宝といった感じの宝石が施されたアクセサリーなどの装飾品もあった。当然、こちらの方が獲得ポイントは多い。
なんだかんだそこそこの数のお宝を見つけているが、これはステータスの影響を受けていたりするのだろうか。さすがに見つけることに関してはステータスの影響を受けるようなことはないと思うが、少し見付け易いような気もする。
あとはモンスターを倒した時にどのくらいポイントを稼げるかなんだが、今のところまだ遭遇していないんだよな。
ポイント効率がいいのかはわからないが、最初からモンスターが出現していると宝探しを一切せずにモンスターばかり倒し続けるがプレイヤーが出てくるだろうし、そうならないように制限をかけている可能性はありそうだ。
さすがに宝探しと銘打っているイベントでモンスターだけでポイントを稼がれると、なんのイベントかわからなくなるしな。まあ、ならモンスターを出すなって話なんだが、多分物探し系が苦手な人用の救済措置みたいなものなのだろう。
「お、あったな」
少し先の崖の中腹あたりに少し埋まったお宝と思われる物を見つけた。
「シュラ。あのあたりに何か攻撃を当ててくれないか」
シュラの視線に合わせるようにかがんだ後、そう言ってお宝と思われるものがる場所を指差しながら指示を出す。
自分でスキルを使えば同じことをすることもできるが、シュラ達に何もさせないのは連れてきた意味がないし、何かさせておいた方がシュラの機嫌も良くなるので、こういうことはできる限りシュラ達にしてもらうことにした。
「ですっ」
俺が指差した辺りにシュラが攻撃を放つ。その攻撃が当たったことで周囲の崖が崩れ、土や岩と一緒にお宝も落ちて来た。
普通だったらこんな取り方をすればお宝が傷つきそうなものだが、システム的にそういったことは起きないようなので問題はない。
ぷらてあには上ではなく崖下にあるようなお宝を採取するときにツタを出してもらい、それを使って採取する形で手伝ってもらっている。
一応取りにくい場所のお宝が取れるような2人を連れて来たのはいい選出だったと思う。
「しかし、比べられないって欠点はあるが、他のプレイヤーが居ないっていうのやはり動きやすいな」
他人の視線がある中で今のようなことをするのは少しためらってしまうが、ないとわかっていれば遠慮なくすることが出来る。
それに宝の奪い合いもないし、妨害も起きない。
直接の競い合いが好きな奴には少し温いイベントかもしれないが、そういうギスギス案件のストレスが少ないイベントは本当に気持ちが楽だ。
そんなことを考えつつ、できるだけお宝を見逃さないように周囲を見渡しながらジャングルの中を進み、時折シュラとぷらてあの力を借りてお宝を探し、獲得ポイントを稼いでいった。




