33:ダンジョンの名称
アンゴーラによって表示されたウィンドウは、ダンジョンを操作するための設定画面だった。
「ふむ、ダンジョンの名称を決めてください……ね」
『今すぐ決める必要は無いぞ。後から変更することもできるのでな。まあ、その時にはダンジョンポイントが必要になるがの』
「なるほど。安易にぽんぽん名称は変えるなってことね」
『まあ、そういう事じゃな』
どれくらいのダンジョンポイントが必要になるのかはわからないけど、最初にしっかりと名称は変えた方が良いだろうな。
と言っても、そうそうパッと思いつくものではないのだが。
うーん。俺のダンジョンだから、冥加ダンジョン? いやリアルネームを使うのはないな。ミヨのダンジョン。……侵入してきたやつらを倒すから、いつもネームとして使っている茗荷の茗をアバターネームのミヨにして、荷は相手を倒す武器として牙に変えて、ミヨ牙? 一部だけ漢字なのもおかしいから、ミヨガダンジョンか。ネーミングセンスが無さすぎるが、変に捻り過ぎてもな。ミヨガダンジョンでいいか。
何か嫌になったらダンジョンポイントを消費して変えればいいのだし。
とりあえず決まったのでミヨガダンジョンと名称欄に打ち込む。
『決まったようじゃの。本当にこれでいいのかの?』
「ああ、これでいい」
『それでは次に行くのじゃ』
次のウィンドウに表示されていたのはダンジョンポイント(DP)の使い方と変換率だった。
『見ればわかると思うのじゃが、ダンジョンポイントを使うには妾が必要じゃ。ダンジョンポイントを使って何かをしたいと思ったら妾に話しかけるのじゃ。それと、ダンジョンポイントをアイテムやFsから得る場合の変換率は、100Fsで1DPとなっておる。アイテムは売値が対象じゃな。それと小数点以下のDPはしっかり反映されるが、数値としては見えないのじゃ』
なるほど。リアルマネーでダンジョンポイントを稼ぐなら1円で10DPになると。だったら限界ギリギリまで課金して、それをガチャ分だけ残してそれ以外をFsにしてダンジョンポイントにすればいいか。まあ、今あるOCは全部Fsに換金しよう。
「なあ、今からFsをDPに変えることは出来るか?」
『ぬ? まあ、出来るが、なんじゃ、もうこの説明は要らんのかの』
「え? いや、いる」
『だったら、ポイントの変換はこの説明が終わってからじゃな』
「わかった。説明を続けてくれ」
何で説明が要らないって話になるのか、と思ったけど、この先の説明でDPを使ってみるとかのチュートリアル要素でもあるのかもしれないな。
と言うか、シュラたちが若干飽きてきているような気配があるんだけど、早めに説明を聞き終えた方が良いのかもしれない。
『うむ。では続きじゃが……』
アンゴーラによるダンジョン運営の説明が続く。
DPを使うことでダンジョンを成長させることが可能で、ダンジョン内に出て来るモンスターもDPを使うことで増やしたり、強いモンスターを出したりすることが出来るようだ。
ゲートキーパーを倒すことで出て来る報酬の内容もDPを消費して決めることが出来る。ボーナスで出て来る宝箱も同じようだ。
内容を指定していない場合は、魔石になるらしい。今までゲートキーパーを倒した時に出て来た物の中で魔石が多かったのは、ダンジョン側が報酬を設定していなかったからのようだ。たまに出て来た素材とかは、ダンジョンがそうなるように設定していたという事だろう。
俺がログアウトしてゲーム内に居ない場合でも、ダンジョンは挑戦者を受け入れなければならないようだ。居ないからと言って誰も入れないようにはならないらしい。そのため、早い内にダンジョンを成長させて簡単にクリアできないようにする必要があるようだ。
ただ、最初にダンジョンが開かれるタイミングは、ダンジョンポイントを初めて使用したタイミングから1時間後らしい。まあ、使ったタイミングで入って来られるようになっていたら、簡単にクリアされてしまうので、そう言った猶予が無いと困る。いや、1時間でもかなり短いと思うけどさ。
『まあ、こんな感じじゃな。さらに詳しい説明が欲しいなら、妾に直接聞くか、ヘルプを確認するのじゃ』
「ああ」
『っと、忘れておったのじゃ』
「ん?」
30分程で大体の説明は終わった。
これでOCをFsに返金してから一旦ログアウトするかと思ったところで、アンゴーラが言葉を付け足してきた。
『ゲートキーパーのことなんじゃが、テイムモンスターをゲートキーパーとして配置することが可能なのじゃ』
は? 何ですと!?
シュラたちをゲートキーパーに設定できる、っていや待て。ゲートキーパーって倒されるのが前提だよな? という事は、ゲートキーパーに設定したら死んでしまうのではないか?
「倒されたら復活できないシュラたちをゲートキーパーに設定するのはちょっとなぁ」
『いや、ゲートキーパーに設定したテイムモンスターは、倒されても復活するのじゃ。ダンジョンの中で出て来るモンスターは倒しても次の時には復活しておるじゃろ? それと同じようにテイムモンスターも復活するのじゃ』
「え? ……マジで?」
まあ、確かにダンジョンの中で固定されたモンスターは何度攻略しても同じ奴が出て来るけど、プレイヤーがテイムしたモンスターも配置さえすれば復活するとか、マジか?
『まあ、復活させる際にはDPが必要になるのじゃが。普通、復活に必要なDPはモンスターを配置する際に必要になるDPと同じ量が必要じゃから、DPが足りなくて復活できない場合もありえなくはないがの。すぐに復活できない場合は、一時的に復活は保留扱いになるのじゃ』
「さすがに何の消費も無く復活はできないのか。いや、当たり前か。それでも、すぐに復活できない時に即消滅みたいなことにならないのは有り難いな」
と言っても、復活にはDPの消費があるからって、それがマイナスになるってことは無いのだけどな。死んでも消えないってだけでプラスだし。
それに、テイムモンスターには戦闘経験値と言う隠しステータスがあるらしいんだよな。これはレベルアップのための経験値とは別物で、敵と戦うことで得られるものらしい。
死んだらそこまでのテイムモンスターにとって、この戦闘経験値を得るのは極めて難しい。格下相手だと獲得量が減るらしいから格上と戦うべきなんだが、それだと死ぬ可能性が高まるから下手に格上と戦わせる訳にもいかない。
そんな中で死んでも復活することが出来るというのは、戦闘経験値を得る上で非常に有用なものだ。
まあ、ダンジョンに強いプレイヤーが来なければ意味はないけどな。
となると、プレイヤーがたくさん来るようにダンジョンを弄る必要がある訳だが、どうしようか。
あれ? 待てよ。シュラたちをゲートキーパーに設定したら連れ出せないよな? それって通常エリアの攻略がつらくならないか? 俺一人で先に進むのは職補整の関係でレベルが上がり難くなるし、ソロプレイになるから攻略がつらくなるのでは?
「なあ、シュラたちをゲートキーパーに設定したら外に連れていけなくなる……よな?」
『いや、連れていけるのじゃ。ただ、その場合は能力が2割くらい低い劣化コピーが代わりのゲートキーパーになって、挑戦者と戦うことになるがの』
「なるほど」
『それと、その劣化コピーが戦って勝った場合は経験値などもしっかり獲得できるのじゃ。まあ、負けた場合は何も手に入らないがの。それに復活の際に使用されるDPが少し増えるのじゃ』
「ほう」
設定した上で連れ出すデメリットは若干弱くなるのと、負けた場合はDPが多めに消費されることくらいか。
それと、おそらくシュラたちが戦って負けた場合は、経験値を得られなくても戦闘経験値は得られるだろう。何も手に入らないっていうのは、劣化コピーにはそれが無いってことなのだろうな。DPの消費が増えるのは課金すればどうとでもなるから無視していいだろう。
『言い忘れておったのはこんなところじゃな』
「そうか」
いろいろ試したいことが出て来たし、このダンジョンをどんな感じに弄るかも考えないとな。とりあえず、シュラたちをゲートキーパーとして設定するのは確実だけど。
今後の予定をどうするかを考えていると、不意に装備の裾が引っ張られた。
「ん?」
引っ張られたところを見ると、どうやらぷらてあがやったようだ。今までこんなことをされたことは無いんだけど、どうしたんだ?
「じかん……だいじょうぶ?」
「時間? って、あ!」
そろそろログアウトしないと拙いな。思いの外、アンゴーラの説明に時間を取られたせいであまり余裕はない。
安全装置によるログアウト勧告アラートまで10分もない。さすがにここまで少ない時間でダンジョンを弄ることは無理だ。
「ぷらてあ、言ってくれてありがとうな。しかし、時間的にログアウトしないと拙いな」
ぷらてあの頭を撫でながら周囲を見渡す。そう言えばここから出るにはどうすればいいんだ。転移陣もないし、まあ、ここでログアウト出来るならそれでいいんだけど。
「アンゴーラ。ここってログアウト出来るのか?」
『ログアウト? ログアウト、というのはよくわからぬが、ここはダンジョンマスターの自室扱いじゃから寝ることは出来るのじゃ。外に出るのならダンジョン操作一覧から可能じゃな』
アンゴーラも一応NPCだからログアウトっていうのがわからないのか。でも、寝ることが可能ってことは、ログアウトは出来るみたいだな。
今からダンジョンの外に行って近くの町でログアウトってなると、微妙に時間が足りない気がするからここでログアウトするか。
そうして俺は地面に寝そべり、そのままログアウトした。




