30:インスタントダンジョン
次の階層は……さっきの階層と同じ見た目だな。
まあ、2階層目だけあって、前の階層と比べて道幅が若干広く、既にモンスターと言うかウサギが出現している。
ウサギのサイズが少し大きくなっているから、種族が違うのだろう。看破を使ってみたところ種族がフットラビットに変わっていた。前の階層に居たのはただのウサギだったので変わったことは確かなようだ。
レベルも10に上がっているが、ゴブリンと同じくらいのステータスなので苦戦することは無いだろうし、そもそも数が少ないから近付いて来たウサギから順に倒していけば囲まれることもない。
そしてしばらく進みながら、襲い掛かって来るフットラビットを倒し続け、前の層と同じような開けた場所に出た。
奥に進む道も無いので、他のダンジョンと同様にここがこの階層の終点という事だろう。
さて、今度のゲートキーパーは何だろうか。さっきみたいに数で攻めて来るタイプか、1匹のみか、それとも数匹?
開けた場所の中を中心に向かって進む。まだ、ゲートキーパーは出て来ていないな、と思った瞬間、頭上から何かが落ちて来たので、咄嗟に後ろに飛び退いた。
上から降ってきたのはデカい灰色の毛玉……いや、ウサギだった。それを確認したら直ぐに看破を使う。
[ (ダンジョンボス) ビッグラビット LV:15 属性:なし]
HP:1200
MP:150
総合攻撃力:104
総合防御力:90
スキル:不明
あれ? ゲートキーパーじゃなくてダンジョンボス……だと?
このダンジョン2階層で終わりなのか? ボス自体はゴブリンダンジョンよりもレベルは高いんだが。
あ、いやでも、ステータスがたぶんホブゴブリンよりも弱めか。その分、スキル面で強いのかもしれないけど、現状はわからないな。
今更だけど、こいつ頭上から落ちて来たというよりは、最初は端の方に居て俺たちがこの場所の真ん中に近付いて来たタイミングで目の前に飛び込んで来ただけっぽいな。上をチラッと確認したら何もなかったから、おそらくそうだろう。
まあ、そんなこと考えていないで、こいつがボスとして出て来たのだからさっさと戦わないと駄目だよな。
そんなことを考えている内にビッグラビットが飛び上がった後、こちらに向かってのしかかりを仕掛けて来たので、回避する。シュラたちに至っては俺よりも早くビッグラビットの攻撃範囲から逃れていた。
「ぷらてあ、朱鞠。ビッグラビットを拘束してくれ。その後は、状態異常をかけて攻撃。俺とシュラは拘束出来次第攻撃に移るぞ」
「わかり…ました」
「シュ」
「わかったのです」
俺の指示に従って朱鞠が、攻撃後の硬直なのか動けなくなっているビッグラビットを糸で拘束し始める。ある程度朱鞠の糸がビッグラビットに絡みついたところで、その上からさらにぷらてあが蔦で拘束する。
FSOは基本的にパーティーを組んでいればフレンドリーファイアは発生しない。そのため、ぷらてあから伸びている蔦を攻撃しても、ぷらてあにダメージを与えることは無い。
しかし、朱鞠の糸は相手を拘束した段階で拘束アイテムと言うかオブジェクト?のような状態になり、それを攻撃し一定のダメージを与えてしまうと糸は消滅してしまう。
まあ、それがあるからぷらてあは、朱鞠の糸がある程度ビッグラビットに絡まるのを待ってから蔓で拘束したのだけど。
ビッグラビットを身動きが出来ない状態にしたので、俺とシュラは攻撃を開始する。朱鞠も糸を自分の体から切り離した段階で攻撃に移っており、既にビッグラビットにダメージを与えている。
「はんまー、なのです!」
「ライトランス!」
ぷらてあに拘束された上、毒と麻痺の状態異常を受けているビッグラビットは動くこともできず、シュラの攻撃を受けて大幅にHPバーを減らした。
そして俺の攻撃や朱鞠による攻撃、ぷらてあによるドレインなどを一気に受け、ビッグラビットは拘束されてから1分も経たない内にHPが全損し、ポリゴンへと変わっていき、数秒でそのポリゴンも完全に消えていった。
ダンジョンボスであるビッグラビットを倒したことで、ボス討伐報酬の宝箱が出現した。しかし、いつもとは異なり、外へ出るための転移陣は出て来ていない。
おかしい、そう思いながらも宝箱の中身を確認する。
宝箱の中には一応魔石が入っていた。ただ、数は3個で他にビッグラビットの素材がいくつか入っているだけだったけど。
中身を取ったことで宝箱が消えていく。宝箱が消えたことで何か変化がある可能性があるので周囲を確認する。
「宝箱の中身を取っても転移陣は出て来ないのか。これ、どうやって外に出るんだ?」
「出られ…ないの」
「いや、うーん」
俺の言葉に反応して、ぷらてあが心配そうに声を掛けて来た。
しかし、周囲を見渡すも何か変わった部分は見当たらない。来た道を戻ったところで、次の階層に進むための転移陣は一方通行なので戻ることは出来ない。
もしかしたら、入ってきた所に転移陣が出ている可能性もあるので、周囲を一通り確認して何の進展もなければ確認しに行こう。
「どうしたものか」
「なんか穴が開いた……です」
「ん?」
何かに気付いたのかシュラが俺の装備している防具の端を引っ張り、それに気づいた俺はシュラが指差している方を確認した。するとそこには今までなかった先に進むための穴らしきものが開いていた。
「ふむ。よく見つけたな、偉いぞシュラ」
さっき確認した時は無かった気がしたのだけど、とりあえず見つけたシュラを労って頭を撫でておく。
「やったです!」
頭を撫でられて嬉しそうにしているシュラを見てほっこりする。
しかし、先ほどまでなかったと記憶している以上、おそらくあの穴は宝箱を開けた後に出現したのは確かだろう。その後に俺も確認していたのだけど気付かなかったのはタイミングが悪かっただけか?
それにシュラが、穴が開いたと言ったのでちょうど見ている時に変化したのかもしれないな。それに一気に穴が開いたのなら気付きやすいと思うが、ゆっくり穴が開いていったとすればチラッと見た程度では気付きにくい気もするし。
先に進む場所が出て来た以上、そこに進むしかないだろう。
『ふふふ。よくぞ我が僕を打ち倒した挑戦者たちよ! そなたらに我に会う権利を与えるのじゃ! さあ、目の前にある穴の先へ進み、こちらに来るが良いぞ!』
先に進もうとしたら何処からともなく変な声が聞こえて来る。
アナウンス……ではないな。アナウンス用のログに残っていない。という事は、シュラたちにも聞こえて……いたようだな。シュラが声の主を探して周囲を窺い、ぷらてあは首を傾げ、朱鞠は……無反応に見えるからよくわからないな。
というか、呼ばれなくても行くつもりだったんだが、と反論というかつっこみたくなったが、声に出しても伝わる気がしないので、そのもやもやをため息として吐きだす。
誰の声だとか、何処から聞こえてきているのか気になるが、何と言うか、こんな感じで誘って来る場合って、多いとは言わないけど罠の時もあるんだよなぁ。まあ、今回は行くという選択肢しかないから、行くしかないんだけどさ。
罠の可能性も考え、十分に警戒して進んでいく。
先に進むために開いたと思われる穴はそれほど大きくなかった。上部はアーチ状になっているが高さは2.5メートルくらいで、横は1メートルといったところ。
穴の中は普通に通路になっていた。直ぐ向こうに空間が広がっているように見えるので、通路の長さは10メートルもないだろう。
そして通路が終わり、先の空間に到着。そこはダンジョンボスがいた場所とは異なり、とても小さな空間だった。変わらない所と言えば、この空間に何一つ物がないところだろう。まあ、真ん中に存在している小さい者を除けばだけど。
『よく来たのじゃ! 我が名はアンゴーラ。このダンジョンのダンジョンマスターであるぞ!』
そこには小さな毛の長いウサギが堂々と鎮座していた。




