14:ダンジョンクリア
当たり前だがホブゴブリンの攻撃範囲は広い。推定2メートル程の大きさでそれに合わせたサイズのこん棒を振り回すから、半径2メートルちょいくらいはこん棒が当たる範囲だろう。
まあ、態々ホブゴブリンの攻撃範囲に入る必要は無い。見るからにこん棒攻撃一辺倒なホブゴブリンの戦闘スタイルに俺が合わせなければならない理由など、これっぽっちもないのだから。
適切な距離を保ちながら光魔術を放ち、距離を詰められそうになったら急いで離れる。それを何度も繰り返すことでホブゴブリンのHPは直ぐに10%を下回った。
楽だな、ホブゴブリン。さっきのって、まあ、あれも集団で圧殺されかけただけだから1対1なら強くはないしな。ボスとはいえ、それの上位種的な存在である以上、劇的に強くなる訳でもないか。
「ゴアァガァ…」
「ん? なんだ?」
後2~3発くらいで倒せそうだなぁ、と考えていたところで、ホブゴブリンが今まで振り回していただけのこん棒を上に掲げた。
叩きつけ? いや、距離があるしな、地割れ攻撃…はさすがにホブゴブリンが出来るような技ではないし、衝撃波系の技を放つ特殊行動か?
とりあえず今まで見たことのない動作をしているホブゴブリンを警戒して直ぐに動けるように体制を整える。
って、別にホブゴブリンの行動を待つ必要は無いよな。さっさと攻撃しよう。
「ライトボー…」
「ゴォガッ!」
俺がライトボールを放つよりも数瞬先にホブゴブリンは手に持っていたこん棒をこちらに向かってぶん投げて来た。
投げられたこん棒は俺が遅れて放ったライトボールを何事もなかったように消し飛ばし、唸りを上げているかのような勢いで俺に迫る。
待て、これ食らったらHP全快でも即死するくらいの威力あるんじゃないか!?
「ちょ、っそぉいっ!」
俺は全力で横に飛び、飛んで来たこん棒を避ける。そして避けて直ぐにこん棒は俺が元居た位置に着弾し、この空間に轟音を響かせてさらに向こうへバウンドしながら飛んで行った。
「ガアァア!!」
「ちょまっ!?」
こん棒に気を取られていた隙にホブゴブリンが目の前まで迫って来ていて、俺に向かって攻撃を繰り出していた。それを身を捻って強引に躱し、ホブゴブリンから距離を取る。しかし、距離を取ってもホブゴブリンはすかさず距離を詰めて来る。
「何だよ、ホブゴブ。インファイトしようってか? 止めろよ、俺インドア派なんだよ!」
「ゴアアァッ!」
攻撃を避け、逃げながらライトボールを放つ。心なしか先ほどよりもダメージの通りが悪い。おそらく、特殊行動の影響で耐久値が若干上昇しているのだろう。
「インドア派に接近戦を仕掛けてくんじゃねぇ! 多少は戦えるって言っても多少でしかないんだよ! お前みたいなアウトドア派に…ん?」
いや、こいつってダンジョンマスターだよな? ダンジョンマスターにとってダンジョンは家みたいな物、だとすると…
「お前もインドア派だとぉ?!」
「ゴア? ガアァアッ!!」
ホブゴブリンは俺がそう叫ぶと、は?みたいな行動を取ったが直ぐに攻撃に戻った。
まあ、冗談はここまでにして真面目にホブゴブリンに攻撃をしよう。
「ライトボール! ライトショット!」
「ゴッガアッ!」
光魔術2連発を食らうのはさすがに耐久値が上がっていたとしても手痛いダメージだったのか、ホブゴブリンの動きが鈍った。
そして、さらにライトボールとライトショットを放つことでホブゴブリンは地面に倒れ徐々にポリゴンになって消えて行った。
『ダンジョンマスターとの戦闘に勝利しました! この戦闘による報酬が支払われます。
初めてダンジョン(初級)をクリアしました。
全プレイヤー中初めてダンジョンをクリアしました!
称号を獲得しました!
ダンジョンクリア報酬が発生します。おめでとうございます。
ダンジョンをクリアしたため、ダンジョン入口への転移陣の利用が可能になりました』
ああ、しっかりアナウンスされるのか。しかし、モンハウを除けば規模的に初心者向けの規模だからそうかもしれないと思っていたが、やっぱり初級扱いなんだな。
報酬は…強制インベントリ行きか。いや、奥に宝箱があるからそれがダンジョンクリア報酬だろうな。インベントリに入っている物はホブゴブの討伐報酬だな。
んー、そう言えばダンジョンマスターを倒したのだから、もしかしてこのダンジョンの消滅とかあるのか? それっぽいアナウンスが無いから崩壊しない可能性もあるが、俺がここから出たら消える? 残ってくれた方が素材獲得のためにありがたいんだが、どうなんだろうな。
そんなことを考えながらダンジョンクリアの報酬と思われる宝箱の前に来た。宝箱の見た目は…ゲートキーパーを倒した時に出て来たものよりも豪華な装飾が施されている。と言っても、金が使われていたり宝石の装飾があったりするわけではなく、ちょっと装飾に気を使ったかなぁ、くらいな感じだ。ゲートキーパーの時に出て来た宝箱は木箱に蓋が付いた程度の物だったから、それに比べれば豪華には違いないだろう。
では早速中身を拝見。さすがに魔石だけってことは無いだろうから、いい物が出ることを期待しよう。
それで、宝箱の中身は……何かの欠片と魔石(小)が6個だった。
「また、魔石。欠片の方は……何だこれ?」
大半が魔石だったことはがっかりだがもう1つの方は…うーん、綺麗な感じな欠片ではあるんだが、元は多分球体? その10分の1くらいのサイズの欠片だ。見た目的に水晶球に近い感じはするけど、若干濁っている。
[ダンジョンコアの欠片 レア度:5 Fs:‐]
ダンジョンを形成するために必要なコアの欠片。完全な状態ではないためダンジョンを作り出すことは出来ない。しかし、コア自体に自己再生機能を備えているため、十分な個数を集めることでダンジョンコアとして再生できるかもしれない。サイズ:1/10
あ、そう言う事か。ダンジョンをクリアすれば確かに手に入ってもおかしくはないよな。しかし、説明文からしてFSOって自前でダンジョンを作れるのか? 明らかにこれを10個集めればダンジョンコアになって、ダンジョンを作れるようになる感じだが。
いや、出来るかもしれない、だから別の何かも必要だったり、条件があるのもしれない……のか?
まあ、結局このダンジョンで得た宝箱から取れたアイテムの大半が魔石だったが、クリア報酬の宝箱の中身は確認できたし、ここに居てもやることが無い以上、さっさとダンジョンの外に出て、街に帰るか。
ダンジョンから出て街に戻ってきた。そして、預け金を払ってギルドに預けていたシュラを返してもらい、なるべく人目に付かなそうな場所に移動する。
別に隠れてこそこそする必要は無いのだが、色々やっている間に他のプレイヤーが寄って来ても目障りなので、その辺を気にして人目に付かなそうな場所を選んだ。
まあ、プレイヤーの密度からして完全に人目がない場所は皆無に等しいが、なるべく人が来なさそうな場所を見つけて、そこにあった石積みの花壇の縁に腰を下ろした。
「育成スキルを使う前にちょっと確認したいことがあるんだよな」
ダンジョンで戦ったことで俺のレベルが上がった際にステータスボードを確認した時、気になった事があったのでシュラに看破を掛けてステータスを確認する。
『NAME:シュラ 種族:レアスライム LV:5 属性:水
HP:48/48 MP:24/24
STR:8 INT:14 総合攻撃力:11
VIT:12 MND:18 総合防御力:15
AGI:12 DEX:5』
ああ、やっぱりレベルが上がっているな。テイムスキルのレベルがいつの間にかに上がっていたからもしかして、って思ったら案の定だったわ。
戦いに参加していないどころかギルドに預けていたシュラのレベルが上がるという事は、テイムモンスはテイマーの側に居なくても経験値を獲得できるという事だ。
さすがに戦闘に参加しているよりも少なくなっているようで、シュラのレベルの上がり方からして多分10%くらいしか貰えてはいないだろう。
むしろそれ以上に経験値を得ていたら、俺のレベルが上がらなくなるので妥当な範囲だとは思うけどな。
まあ、あれだけ戦って倒した敵の数は100どころかダンジョンに入る前の物も合わせれば300近く倒しているのに2レベル分しか上がっていないから、おまけ程度の範囲なのだろう。
ただ、預けているテイムモンスが増えた場合にどうなるかは気になる。残念ながら今の俺ではまだ2匹目をテイムできるようにはなっていないので、確認のしようがないけど。
ま、その辺りは追々わかる事だな。
それで、確認も済んだので、育成スキルを使ってシュラのレベルを上げていこう。




