表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虫けらは半死半生で彷徨う  作者: 米中毒
女悪魔が内心切れている章
73/76

74話 ”神”

「”神”というのは畏れから力を得る存在の総称だ。」

黒球の動きは読めない。ただただ宙に浮かんでいる。

「信仰心や恐怖心…それらを集めるために加護を与えたりするもんだが………。」

エリーダは膝を着いたフレイを一瞥しながら言葉を続ける。

「こいつは直接食べるらしいね。」

フレイを食らった………か。

僕を貫く、気が狂う程の激情を感知したのだろうか。

黒はまた、僕を狙っているらしい。

大口を開いたままに、直線軌道で向かい来る。

望むところだ。

この先の安全などどうでもいい。

剣撃も、熱も、使えない木々も!そこらの雑魚共も!

効果がないなら仕方ない、氷で圧し潰す。

右腕に魔力を練り上げた。黒一片も残さず掻き消して殺る。

『凡てを焼く火種となれ、初級火球魔法 日火』

僕の氷の前に、火球が黒を焼く。

気を取られた隙に、足へ触手が巻き付いて黒から引き離された。

「ディアナ!邪魔を!」

「落ち着いてください。レイさん。」

唇に指をあてられ、黙らせられた。

飛ぶ火の粉に対し、片目を瞑りながら彼女は僕に注意を向けさせる。

「魔法も効果は無いようです。あれは生物でも悪魔でもお化けでもない。」

「………落ち着いてください。策を考えましょう。」

感情を収めた今になって、黒玉は追尾を止めた。

感情を感知し捕食するようだ。

「下級悪魔が変異したんだろう。知性も肉体も無い。突撃以外に手札は無い。」

偉そうな女は偉そうにふんぞり返っている。

「だが、元が雑魚だから逆に純粋な神に成ってる。攻撃は効かないなぁ~!」

「………俺の封印は………魂を縛る………こいつ…縛るほどの理性もない……。」

「対抗策無いの!?嘘でしょ!?魔王軍大幹部!?」

シアが目を見開きながら叫び散らす。

いつもなら初対面相手は敬語を使うだろうのに、冷静さを欠いているな。

ディアナは魔力の残り香に向かう木に対応するのに精一杯。

どうしようか、この状況。

「……僕が封印をします。時間を稼いでください。」

「”見えざる封印”なら、触らないと発動できないですよ?」

アレに触れるのは自ら餌になりに行くようなものだ。

それに、流動性を持つアレを手で捕らえることは出来ない。

「分かってる。でも、何とかするから…。」

想い人にそこまで言われれば、僕は従うしかない。

どうせ退路も活路もない。

『全ての災禍、惨状、苦難を閉じろ。』

練り始めた魔力に木々が反応する。

フレイの護衛は僕の役目だ。

鼠がそこらを走り回っているから、結界での魔力隠蔽は難しい。

覚悟を決めて、全ての攻め手を切り伏せることにした。

『七天を乗り越え~♪エルルネアン灯台の導きに従えば~♪』

魔力を込めた歌声が、僕ら以外へ注意を向けさせる。

歌の主の周りをシャボン玉は高速で飛行し、中の煙ごと魔物に侵入する。

触れただけで殺せるわけだ。あいつの奥の手か?

筋肉野郎は原因療法に切り替えたようだ。

巨大な木槌で木々をなぎ倒し始め、ディアナもそれに続く。

『覆え!忘却に沈め!』

『英知の図書はそこへ~♪孤独で孤高なユムナスの教えを乞えば~♪』

フレイの詠唱は半分が終わった。

黒球は射程内に収まったままに不動である。

5人が時間稼ぎに徹すれば、十分に余裕があるだろう。

「あ。」

シアの声が上がったその理由。その時は分からなかった。

後から聞いた話では、シアの足に居たのはラブラッドという魔物だったらしい。

オーガ、蛇、蛙。再生を続ける木すらもシアに牙を向ける。

その僅かな動揺、恐怖が沈黙を貫いていた神を引き寄せてしまった。

「カスネズミが……。」

ぼそりと呟いた後、フレイは剣を抜いた。

封印のための縄を外し、目からは正気が消え失せる。

シアに襲い掛かっていた黒は向きを180度変えて、こちらに近づいて来る!

ディアナの腕が伸び、進路を塞ぐが神は意を介さない。

抜いた刃の効果は無く、そのまま距離を詰め終えて僕の真横に齧り付いた。

「フレイさん!」

纏う激情が消え失せて、目の生気が抜けている。

だが、目には暗いながらも正気が戻っている。

『中級封印魔法……見えざる封印………。』

詠唱は完了した。

だが、力の抜けてしまった腕は通り過ぎた神には届かない。

「………捕らえろ。”漆骸”。」

白いローブの裏からは、細切れの黒へ、更に無数の漆黒が伸びる。

黒き塊となった腕の束は、神を一片も残さずに引き込んでいく。

ローブの白は黒に染まり、神の嘆きは手に搔き消され消えていく。

黒の応酬が終えた後、フレイは静かに崩れ落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ