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虫けらは半死半生で彷徨う  作者: 米中毒
女悪魔が内心切れている章
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66話 レイvsフレイ

『次は第五試合!!悪魔レイ対!魔導士フレイ!』

第三、第四試合は、実力伯仲の二人が争うだけのつまらない試合だった。

なので、この試合の展開だけを考えていた。

僕の前に立つこの人は、どうやって戦うつもりなのだろう。

身体能力でも、魔力量でも、出力も僕に劣る。

基本戦術も、一対一で不利な魔法と発動の速さが売りの魔術。

正直、左腕だけに呪いを宿した程度では僕の方が速いし強い。

かと言って、完全に身を預ければただの暴走。

わざわざ戦う必要もなくなる。経験も何も積めないから。

第一試合で見せた、謎の手段にそこまで自信があるのだろうか。

白いローブに身を包んだ小柄な姿からはあまり多くは読み取れない。

だが、逃げる気はなさそうだ。

『さぁお二人さん!準備は良いのか~!????』

観客席は湧いている。

いつもなら、多少見下す所だが、今だけは誰よりも興奮してしまっている。

『さぁさぁさぁさぁ!!開始だ~!』

銅鑼の音が鳴った瞬間に魔力を右手に集中させる。

遊びは無い。最初から全出力の氷で潰す。

これで負けてしまうなら、最初から戦いの間に立つ必要もない。

『打飛』

しかし、それは杞憂だったかもしれない。

氷を放つよりも先に、釘が手のひらを貫いた。

最初から手を狙ったわけでは無い。

首を、正確に言えばその中の頸動脈を狙ってきた!

触れた感触は冷たさと滑らかさ。実物!

成程!物体を生成してから放つより、既に出来ている物を飛ばす方が速いか!

ガントレットに仕込んでいた釘は後十本こちらに飛来している。

更に剣を左手で抜き、右手でこちらに杖を向けた。

それだけか?

こちらも剣を抜き、飛来物を弾く。

目には精気が宿っているから、封印は部分的な解除!

魔法を主体で攻める気だろうが、この程度の足止めでは何にもなりはしない!

駆け寄ると同時に氷片を飛ばす!

だが、どれも届きはしなかった。

『これは意外な異常事態だ!フレイ選手の背から黒い手が伸びてきたぁあ!』

三十を超える手が文字を宙に刻む。

火球が即座に展開され、杖による指揮に合わせて僕の身体を包んだ。

爆炎を防ぐための氷壁の展開が少し遅れ、一発食らった。速すぎる…!

思考の間も黒い腕は稼働して、火球の攻めは緩まらない。

杖は火球の制御のために使っているらしい。

宙に火球を保持しているので攻める隙は無い。

だが、魔法の高速発動の理屈は分かった。

呪文の同時記述だ。

『凡てを』

 『焼く火種』

  『となれ。初級』

   『火球魔法 日火』

一つの呪文を四つの指で記述する。

単純に発動の速さが四倍になるわけだ。

また、どうやら勘違いがあったようだ。

魔剣の呪いは、”身体を乗っ取り、全てを切り伏せる”。

悪魔は、”身体を乗っ取り、自分のものとする”。

魔剣の呪いは腕で止めているが、悪魔は完全に開放している。

身体を完全に乗っ取った僕を見ておきながら、それでも悪魔を宿すとは。

そこまで本気で来てくれるとは………!

僕も本気で行かなくてはならない。

六割方溶けた壁から飛び出し、氷片と共に魔力を飛ばす。

紫に輝いた氷は火球の半数を掻き消し、道を開けさせる。

物量で負けるのなら、速度で潰す。

剣での打ち合いは即座に始まった。

左腕は勝手に動いているのだろう。

僕を殺さんと、剣閃が黒く光る。

だがそれに主人を守るつもりはない。

剣を逸らしたと同時に左拳を腕に叩きこむ。

フレイの右手は魔力で繫いでいるだけ。

直ぐに殴り千切れるつもりだったが、感触が変だ。

三発叩きこんだが、完全には千切れなかった。

装備の上というわけでもないのに、金属か?

魔剣が僕の首を狙ってきたので距離を取る。

火球によって距離を予定よりも大きく取らされたが問題ない。

魔力を練り始めた多数の腕を氷柱が切り裂く。

それに反応した魔剣の動きにも反応し、氷柱が更に舞う。

僕は空中に拡散し終えた。

どんなに微かであろうとも、動きと魔力に反応し氷柱を撃ちこめられる。

あの日のことを覚えてくれているのだろう。

本人の動きは止まった。剣も手放した。

空中に残った火球を一つづつ潰す。

黒い悪魔も理解したようだ。活動を止め身体に引っ込んだ。

良く戦ったけれど、もう策はないだろう。

声を出すだけで反応してしまうから、周りに判定してもらうしかない。

ちょっと首に切り傷でもつければ、十分だろう。

剣を片手ににじり寄る。

射程内に入るまで、気づけなかった。

右腕には小さな球が握られていた。

小さな結界の中には、小さく圧縮された熱が隠されていた。

魔力も動きも探知できなかった。

既に!いやッ!最初から溜めて!隠して!狙っていたのか!

「ここまで…!」

広がった冷気も魔力も、その熱は押しのけ、僕の身体を貫いた。

咄嗟に氷を生成はしたが、腹は大きく焼けた。

肉を焦げる匂いを楽しみつつ、次の一手に対応をしなければならない。

『全ての災禍、惨状、苦難を閉じろ。』

フレイは僕の腕を掴み、紡ぐ呪文は封印魔法。

勝ちに来てくれている…!

封印をされれば、完全に僕の負け!

僕も、勝ちたくなってしまった。

後で治療ができるように、ほんの僅かだが、氷を目に掠らせた。

片目を失ったことを、一人泣いていたことは知っている。

視力を完全に失えば、動揺してしまうだろう?

だが、握る力はますます高まり、剝がせない。

目を抑えている手は、震えている。

だが、眼帯は僕を逃がさないという意志と共に睨んでいるようだ。

『覆え!忘却に沈め!中級…』

目は潰しておいて正解だったと思える。

こんな下衆な笑顔を見られたら、嫌われてしまったかもしれない。

脚をフレイの腹に打ち込むが、離さないでいてくれる!

内臓が震えるほど痛いだろうに、力を緩めないでいてくれる!

仕方ないので、半歩近づいて、首を掴んで投げ飛ばす。

頸椎が折れる一歩手前の力加減の前では、フレイは簡単に吹っ飛んだ。

だが、まだ腕は握られている。

『封印魔法…見えざる封印……。』

宙に浮かぶ身体からは鎖が伸びていた。

ガントレットと繋がっていて、魔力も未だ込められている。

僕の腕を離さないこれはもう、執念というしかないだろう。

魔法は完全に発動した。

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