表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虫けらは半死半生で彷徨う  作者: 米中毒
女悪魔が内心切れている章
64/75

65話 アイスゴーレムvsレイ

『さぁ第二試合が始まる前に!私から言い訳をさせていただきます!』

僕の試合は結界を張りなおしてからだったので六分と二十秒ほど遅れた。

だが、結界の強度への謝罪でも、遅れたことへの謝罪でもなかった。

魔界においては安全の保証などないのは純然たる事実なのだろう。

『二つ名持ちは出場できないはずなのに~。私達はこの婆を知っている!』

目の前にいる老婆は魔法瓶から湯気を立てつつ解説の声に耳を澄ませている。

飲んでいるのは白湯であるようだ。

味のない水を、温めて、保温して、わざわざ飲む理由が分からない。

『肉体と魂と記憶!黒魔術の三大要素をこよなく愛する変人!』

『畜生黒魔術士!ロベコ聖殿騎士団特別指名手配筆頭!脳内毒草女!』

『カスのエリザベスがなぜ出場しているのか!その理由は!』

マイクは司会のダニカから隣の大男に手渡された。

『本人曰く─実験するだけで、自分は戦わない─だそうだ。』

老婆は水筒をひっくり返して水を棄てる。

物理法則から考えると異様だ。

水は途切れることなく流れ続け、人型を形成し始めた。

聞いたことのない呪文を唱えながら、二つの小瓶の中の何かを注いだ。

「実況でも言ってるけどね、私は戦わないからね。狙ってきたら殺すけどね。」

老婆の声は存外、クッキリとしていて聞きやすかった。

「”混魂疑似神像”。こいつの試運転だからね、大会の規定には従ってるよ。」

『対するは!灰砂の国の悪魔レイ!実績は聞かないが実力は保証しましょう!』

観客共が賭けを変える時間の間に装飾が加えられて疑似神像とやらは完成した。

水は凍り、魔力が注ぎ込まれた黒い球が埋め込まれ、拳には金属版が張られた。

『これ以上引き延ばしても面白くないでしょう!さぁ準備はオッケー!?』

魔女は箒をどこからともなく呼び寄せて宙に飛ぶ。

僕の相手は氷で出来た木偶の坊か。

『第二試合の開始だぜッ!』

銅鑼の音が鳴り響くと同時に巨拳が振るわれた。

操作をせずとも勝手に動くらしい。

迫る拳はそこまで脅威には感じない。

ある程度の余裕を持ったうえで避け、氷をぶつけたが………効いてはなさそうだ。

僕の攻撃手段でいうと、氷と冷気と剣だが、どれも有効打にはならないか。

魔力を大量に使えば、巨体と言えど拘束は出来るだろうが、勿体ない。

また、変わらずに振ってきた拳に合わせる。

氷相手なら炎だろう。

『凡てを焼く火種となれ。初級火球魔法 日火』

火球を生み出して前に飛ばす。

最も平凡な魔法の一つだが、溶かすだけなら十分だろう。

「流石に想定内だからね。」

巨体の動きは急に加速し、火球を拳で散らす。

火球を防ぐ知性はあるようだ。そして………

「溶けてない!?何で!?」

罵声飛び交う観客席の中でもひときわ大きな、聞き覚えのある声が響く。

老婆も流石に無視できなかったのだろう。解説を始めた。

「拳に薄く張ったのはね、オリハルコン。熱伝導性が最も低い素材でね──」

『断罪の炎をもかき消す地獄の業火よ、今我のもとに集え』

『中級火炎魔法 燃焼(バーン)

解説には興味がないので戦いを続けた。

金属は拳にしか付けていないのだから、全身を覆ってしまえば問題はない。

避けることも防ぐことも出来ない大きさの火炎を放射した。

ここまで動きが遅いと魔力も十分に練られる。

「お婆の話はちゃんと聞いてほしいね。」

人の形が崩れ始めたところで魔法の持続が切れてしまった。

炎を突っ切った拳が僕の左腕を折ったのだ。

氷像は表面が溶けている。だが、パンチの威力と速さ、魔力も増加している。

「黒魔術は肉体、魂、記憶に干渉する術の総称。真骨頂はそれらとの等価交換。」

解説に耳を傾けつつ、人形の相手にも集中する。

魔法を唱える時間は無いので剣を抜いて相手をする。

「魂と記憶を練りこんでるからね。破壊されるほどに等価交換が発動する。」

胴に穴を十ほど開け、両腕を切り落とす。

なるほど。確かにどんどん加速している。

「氷で作るんだからねぇ、破壊は想定してるに決まってるよ。」

氷は自動で溶け始め、欠損部を補う。

削れば削るほどに人型に近づく。

男とも女とも分からないが、身長が僕と同程度になるほどになった頃。

速さでも並ばれた。

その動きは流麗で、武道の心得が見て取れる。

金属片はもう落としたので炎は通じるが、戦いの速度が速すぎて魔法は発動不可。

左腕の治癒はもう終わらせたが、これから先の負傷は治す余裕はない。

向こうは自動で補修されて、強化までされるのだから長期戦はも不可能だ。

そう考えている内に、剣を弾き飛ばされた。

壁に突き刺さり、取りに行く余裕はなさそうだ。

左足の蹴りが僕の顎に迫る。

だから僕は横腹を殴り飛ばした。

人形は急な戦術の変化対応が遅れて防ぎ損ねたようだ。

これに急所という概念はないだろうが、どうでもいい。

全身を砕いてしまえばそれで終いだからだ。

相手の動きは十分に観察を終え、ある程度は体得した。

確かに強化されているが、再生より先に砕けば問題ない。

掌底を、蹴りを、拳を振るい、破壊を続ける。

腕を、脚を、腹を全てを砕いて、辛うじて残った頭を馬乗りになって砕いた。

降参の意思が試合を終える条件なのだが…………。

『もう勝負は決したでしょう!レイ選手の勝ち~!』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ