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虫けらは半死半生で彷徨う  作者: 米中毒
女悪魔が内心切れている章
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62話 準備

背骨ごと貫いたが、まだ死んではいない。

だが、これ以上氷を使えば身体を分解しなくてはいけない。

脳だな。レイピアで串刺しがベストだ。

「ストップ!終わりにしとこう!」

手を叩く音がまた合図となった。

フレイも回復魔法を唱え始め”終わらせて”という空気にする。

「これ以上は面倒でしょ。これ以上は死ぬかもしれないよ?」

「……………あ~分かったよぉ。」

丸刈りは自身の腹を貫いた氷を齧り回復に当てる。

能力で腹を膨らませて、その肉と散らばった肉片を繋いで穴を塞いでいるのだ。

フレイはやや引きながらも回復に専念する。

僕の損害は肉体の損傷だけ。両腕とあばら骨。肺もやられたか。

お互い後遺症もないうちに終わらせておくのが、確かに穏便だ。

「喧嘩吹っ掛けて引き分けの場合、こっちの負けだよ。魔界じゃね。」

”仕方なし”という空気で財布を出してきた。

勝てば色々手に入る。

成程。魔界は僕の価値観にガッチリはまっているようだ。

もし、戦いを止めずに勝てば財布ごと獲れただろう。

相場は分からないが、宿代ぐらいにはなるはずだ。

「お前、名は?」

「馬鹿なのか?さっきから呼ばれてただろ。」

思わず心の内がそのまま出てしまった。

さっきからきつい言葉になってしまっているがフレイは気にしてないだろうか。

「………二つ名はないらしいな。考えてやろうか?」

「いらない。フレイ?治療は歩きながらでいいですよ。」

負けを認めさせられたから多少スッキリした。

齧られれば魂ごと消滅させられる相手の前に長居したくもない。

僕達は振り返らずそのまま去った。


そのまま歩いていき、目的地である武器・防具屋に着いた。

宿の看板娘とやらによれば、鱗は防具に出来るので買い取ってくれるらしい。

また、下手に面倒を起こせば死につながるので買取価格は常に適正だと。

常識を見て学ぶしかない僕にとってはありがたいことだ。

受け取った金貨というものも価値基準も、少しずつ理解しなくては。

「防具も用意してほしいんですが……。」

「防具の相談はあっちでやってくれ。吾輩はこの人の剣を見る。」

店頭の爺の、フレイを蔑ろにし僕を優先する姿勢は腹が立つが、まぁいい。

レイピアがこれからも戦っていけるのか、見てもらう必要がある。

フレイがどんな防具を所望しているのかは直ぐに見られるだろう。

大会には僕とフレイが参加することにした。

降参するまであらゆる手出しが禁じられ、生死も問われないので危険だ。

そう言って止めようとしたが、どうやら策があるらしい。

それに、”大会ごときで死ぬなら多分どこでも死ぬ”という意見には納得だった。

しかし、優勝できないだろうというのが僕の正直な予想だ。

多彩な魔法を習得し、ここまで生き抜いた優秀さは認めよう。

だが、小さな舞台で正面から勝てるとは思えない。

身体能力も魔力総量も僕に劣る時点で勝てないだろう。

………だが僕はワクワクしている。

暴食との戦闘では無かった感情が、再び生まれている。

僕の生はあの火球から始まった。

執着だなんて言われてしまっていたが、やはりフレイは特別だ。

理性は理解できない何かが、あの人にはまだある。

シアでもディアナでもなく、フレイにこそ何かが。

こぼれた笑みを収める。

また、初対面の時のように怖がられたくはない。

ディアナのような柔らかな笑みを目指して少しずつ改善はしている。

「あ~。話聞いています?もしもしもしもーし。」

「聞いてますよ。刃を研いだら終わり。勧めてきた物は要りません。」

さっき見た触れる火球を試そうと思ったが、難しいな。

大会まで僕も手を抜くつもりはない。

しっかりと戦って、正面から潰す気で殺る。

それを乗り越えてくれるからこそ。それを期待しているからこそ。

「お客さ~ん。その悪趣味な笑い、吾輩なんかしちゃったの?」

また漏れてしまっていたか。反省反省。

楽しみは二日後までに取っておこう。

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