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虫けらは半死半生で彷徨う  作者: 米中毒
スライム娘が大体イライラしている章
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57話 無謀な試み

声が途切れるよりも先に腕が振り下ろされる。

標的はディアナ。

ロッドはフレイを連れて離れた。

巨大な腕とディアナは張り合い、なんと、完全に止めた。

「GRRAH!」

身体を僅かに捻り、尻尾でディアナを叩いたが恐らく防御は出来たようだ。

作ってくれた隙に乗じて私はとにかく叩く。

集中を途切れさせれれば上々だ。

食いちぎられない限り、壁に叩き付けられても私は死なない。

………はずなので身体を張ろうと思う。

魔力の起こりが分かったのでパッと離れる。

氷と炎がドラゴンを包んだ。

正確に言うと氷がドラゴンを覆い、炎が一部を焼いているという感じだ。

突如ドラゴンが半回転し、冷気と熱気が飛び散る。

私は氷塊の一つに吹き飛ばされたが、他の人は大丈夫そうだ。

レイは華麗に避け、フレイとロッドは盾に身を隠す。

ディアナは多分………大丈夫だろう。

鱗に焦げ目すらついていない。

観察はまばたき二回する内にドラゴンは跳躍していた。

狙いはレイだ。

彼女の最大出力なのだろう。

ドラゴンと同サイズの氷塊……いや、二回りは大きい氷壁を生み出す。

しかし、その程度では勢いを完全に殺すことは出来なかった。

土埃によってよく見えないが………今は祈ることしか出来ない。

悲鳴や泣き言を飲み込んで、尻尾をひたすらに叩く。

尻尾を攻撃しても大きなダメージはない。

だから、そう。こうやって気をそらせれば十分なのだ。

尻尾は私を掴み、天井に衝突させる。

私が跳ね返り、無防備に落下する。そして牙が私に迫った。

金属音が鳴り響き、竜の意識が逸れた瞬間。

またしても氷の鎖が私を救ってくれた。

引っ張っていたのはディアナだ。

レイと攻撃の間に割り込んでいたのだろう。

二人とも生きている。

炎がドラゴンの視界を塞ぎ、ロッドもフレイも逃げ延びているようだ。

『断罪の炎をもかき消す地獄の業火よ、今我のもとに集え』

ディアナの詠唱を合図として私とレイも個々に分かれる。

『中級火炎魔法!燃焼(バーン)!』

横腹を焼く炎はドラゴンの意識をさらに散らす。

レイも負けじと氷を飛ばす。

空気の流れが生じ始めた。

ドラゴンブレスだ!

誰が狙いかまでは分からない。分かっても今から防げる代物ではない。

全員が回避に専念する。

息を吸い込み終わったその瞬間。

私にはドラゴンが、ほんの少し笑った気がした。

放たれた音は熱が空気を切り裂く音ではなく、地面を砕く激突音だった。

ディアナの居た場所が潰れ、何度も何度も何度も破壊音が響く。

「ディアナ……!」

レイは再び大きな氷塊を生み出し注意を引こうとした。

押し殺したはずの恐怖が私の判断を鈍らせていた。

あいつは溜めを終えている。

眩しいほどの光の束がレイの影を消す。

氷塊は七割ほどの穴が空けられ、声も魔力も空間の中から抉り取られた。

……ドラゴンの右足から火柱が上がった。

魔法によるものではなく、ディアナの血から生じたものだ。

この状況では良いように考えられない…………。

私には最後のあがきにしか思えなかった。

白竜が少し右足を眺める僅かな時間が私を少しだけ冷静にしてくれた。

そうでなければ私はそのまま食い殺されていただろう。

迫り来ていた牙を間一髪避けて逆鱗を狙う。

逆転の一手はもうこれしかない。

しかし、それはあまりにも無謀な試みでしかなかった。

あっという間にチャンスは通り過ぎ、ドラゴンは強く羽ばたき距離を取った。

終わりだ。

大きな目と僅かに見つめ合った。

空気がまた吸い込まれている。

もう……気力が尽きてしまった。

静まり返った空間は容易く私の願いを砕く。

強がって、安心させたかった人も…もう居ない。

隠していた恐怖が私を覆う。

大きな口が開き、魔力が流れ始めた。


だが、また盾と剣を打ち付ける音が響いた。

私も白い竜も、そちらを向いた。

ロッドはレイの前に立ち、注意を引かんと懸命に打ち付ける。

彼らの足元の黒い門が閉じようとしていた。

ゲート……他人は通しちゃいけないんじゃなかったっけ?

竜は目を細め、優先順位を変えるだけだという態度だった。

だが、また音が響いた。

結界の破れる音だ。

フレイの張った、魔力を隠す結界。

それが壊れた瞬間、魔力があふれ出す。

『今こそ栄光の時が来た』

ディアナの、弱いが、確かに覚悟を感じる声。

『最高位火球魔法』

「GRRRRRRRAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAH!!」

一度に三度も状況が変わった。

動揺がブレスを発動を遅らせる。

魔道霊(ルアリ)の王炎』

火球とブレスが押し合うが、三回目では威力も落ちていたのだろう。

口内で破裂し、竜はのけ反った。

しかし、それでも最強。

広げた羽が強く空気を押し、即座に体勢を立て直し倒れたディアナを食らう。

氷柱が注意を引くが、尻尾がロッドとレイを叩き潰す。

そして私の方へ向き直り、口を開きながら飛び込んで来る。

だが………狙いは私を大きく逸れていた。

ディアナもフレイもよろけながら起きている。

ロッドもレイも立っている。

フレイは血を流しながら魔法を維持していた。

『中位魔法………悪意ある煙(フューム)

最後の最後。

最高の隙。

竜は疲弊している。

魔力は完全に削いだ。

さっき飛ばしてた氷が動きを制限している。

逆鱗はすぐ近くにあって、私は剣を握っている。

「うあああああああ!!」

両手で押し込んだ肉は固い。

それでも押し込む……。

ここで止めたら私は愚図で終わる!

これからの未来もない!

「UAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

魔力を込めた音撃も、怯んでいい理由にはなりえない!

恐怖も困難もこれで終わりだ!終わらせる!

ズブリと剣は入り込み、睨んでいた目からは精気が抜けた。

魔力は周囲に拡散し始め、少しの静寂の後、全員が息を吐いた。

……………終わった。

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