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50話 圧倒

釘は抵抗なくサクリと喉に刺さった。


魔力を練る時間はなかったはずだ。


だから、おかしいだろう?

なんでフレイがうずくまっているんだ?


「シアさん!」


私の腰に触手が巻き付き、放り投げられる。


「レイさんは前を向いてください! 止めますよ!」


そうだ、呆けている時間もない。


二人は放たれた矢の雨を止めてくれている。


空中で姿勢を立て直して、フレイのそばに着地した。


血は僅かに地面に垂れている。


出血が多いのか少ないのかはよく分からないけど、赤黒く輝く釘は血を啜っているようで不気味だ。


呼吸がうまくできていない。

当然声を出せないから詠唱も出来ていない。


回復魔法はフレイしか使えない。

本当にまずい。


いや!

まだできることはある!


フレイの手を握って人差し指を伸ばさせる。


「落ち着いて……ゆっくりでいいから、私が守るから…!」


意図を察してくれたのだろう。


フレイは地面に文字を描き始めた。


魔法は呪文を書くことでも発動できる。

それはさっき学んだことだ。


手の動きを邪魔してはいけないから、背中をさするだけにとどめて剣を構える。


ゴブリンの数はさらに減っている。


二人が倒した分も含んでいるだろうが、悪魔の腕が更に肥大化しているから、いい状況ではないんだろう。


悪魔と目が合う。


またあのにやけ顔だ。

目の前にディアナがいるのに、そんな余裕があるのか?


「GGGGGGGGDDDDDDDDDDDDGGGGYYYYYYYYYYYYGGGGGGGGGGGGGGGGYYYYYRRRRRRRUUUUUUUUUWWWWWWWAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!!!」


もう三度目だから感覚で分かった!


魔力を乗せた暴音が周囲を包む。


一人づつ確実に消すつもりだ!


練り上げた魔力は拡散してしまっただろう。

もう一回書く余力はあるか?


あっても、雄叫びを上げられ続ければどうしようもない!


口なんていくらでも増やせるはずだ………!

クソ山羊め!

またあのにやけ顔だ!


「ディアナぁ! レェイ! 何とかして! フレイが!!」


「生きてるよ……ひとまずは…」


座り込んだままではあるが、釘を喉から引き抜いている。


吐きそうな顔をしているが、残った左目は開いている。


私は”なんで!?”と思った。


「なんで!?」


「血文字になってたからだよ。魔力を練らなくても血には魔力が流れてる」


床を見ると血が文字列を形成している。


大声を出しても文字を消せるわけじゃないのか。

そりゃそうか。


「GUU……AA…」


ディアナはめちゃくちゃに腕を振るっている。


血と魔力片が飛び散る。

瓦礫が飛び散る。


さっきの大声でゴブリン達の隙ができていたんだろう。


先の通路は氷で閉ざされ、敵はもはやもう僅かである。


「GUFFU……www♪」


ダメだ、忘れてた。

こいつは壁に潜れるんだった。


小さく呼吸を整え、剣を構える。


ここからは私の仕事だ。


爪の攻撃は私なら止められる。

止めなければならない!


「フレイ……壁から離れてて!」


散らばる黒破片と共に笑う目が、崩れ始めた地面に溶けた。


と思ったが、半分ほど潜ったところで動きは止まった。


「「エ?」」


そのままディアナの尻尾が地面ごと抉り飛ばす。


笑っていた目は軽く砕かれた。


「魔力を遮断する結界を張った。耐久力はないけど………」


「GUUUUUUUUUUUUUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」


いや、まだだ!


壁にこびりついた破片が叫び声を上げると、氷を突き破って黒い剣が飛来する。


ゴブリンの身体を貫き飛んできた剣を握った瞬間。


雰囲気が変わった。


目の色がどす黒く濁り、纏う魔力が迸る。


「RARARA………。」


細切れにされていた体が瞬時に再生し、……むしろ膨れ上がる。


剣を覆うのは魔力と怨念……とでも言うべきエネルギーだ。


悪魔の意識はナニカと混ざったようだ。


先程までの笑いは無い。

あるのは冷徹な、冷たい殺意だけだ。


「RUUAAAA!!」


剣を二人に振り下ろした───


───そしてそのまま打ちのめされた。


私が参戦できる速さではなかったが、見えはした。


剣を振り下ろした瞬間、顔面を尻尾で殴られて、同時に脇腹を左拳で抉られた。


右の触手で肩を掴み、倒れ込むことすら出来なくなると、レイの剣に貫かれてしまった。


止めとして上からディアナの血をかけられて、そのまま燃やされてしまう。


苦しんでいる悪魔を二人で踏んづける光景と熱気の中で、私はこう思った。


「終わり!?」

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