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虫けらは半死半生で彷徨う  作者: 米中毒
スライム娘が大体イライラしている章
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44話 穿孔のトラップダンジョン

穴は深いとはいえ、見えない距離ではないはずだが底が見えない。

無数の亡霊に覆い隠されている。

壁に隣接している階段には数えきれないスケルトンが歩いている。

……それでも。

「フレイ!!」

「待ってください。シアさん。」

柵も何もないレンガ造りの大穴にかけた足を止める。

彼女は私を死から遠ざけるかのように、穴との間に割り込んだ。

「もう落下してしまったでしょう。」

「生きているかは分かりませんし、私たちが戻ってこれるかも分かりません。」

ディアナの目は真剣だ。先程まで伸ばしていた手を戻し、語り掛ける。

「理解したうえで、五秒で決めましょう。」

「「行こう。」」

声が重なっていた。

「俺は行くつもりだよ。あの人に死なれたら困る。」

レイは先ほどまでのように、何もないように、真顔で応えた。

「私は無敵ですから。でも、ディアナも来てくれませんか?」

無理やり笑顔を作ってお願いをする。でも、そんな必要もなかったようだ。

「五秒は長すぎましたかね。階段を下る時間なんてもったいない!」

そうするとディアナはこちらを見たまま、背中から重力に身を預けた。

私も待つ時間なんてない。助走をつけて飛び込む。

亡者たちの怨念込もったうめきが聞こえる。霊体を重力のパワーで突っ切る。

冷たい。おぞましい。恐ろしい。

ここは入ってはいけない領域だと感覚の全てが伝えてくる。

レンガの地面が近づく。フレイの死体は見えない。あるのは血溜まりだけだ。

轟音が目の前に聞こえる。ディアナは尻尾で落下の衝撃を豪快に受け止めた。

でも、あー私はそんな力はないので……顔から地面の冷たさと衝撃を受け止めた。

「あんたら馬鹿なの。生まれたての私でも、この高さはまずいって分かるよ?」

氷の鎖を多数壁に引っ掛け、緩やかに着地したようだ。

今は、彼女と争う時間はない。

「馬鹿でいいから……フレイを探して。」

「フレイさーーん!大丈夫ですか!?」

「ここ……でーす。」

そこにはワイバーンにうずもれたフレイの姿があった。

片膝を立てて座っている。出血は見られない。呼吸も大きくは乱れていない。

「良かった!生きてる!?」

「うーーーーん。多分?それより、そっちは全員無傷なの?心折れるなぁ。」

フレイだって、そう言おうとした時に気が付いた。

片手で隠されていた顔の下に。正確には右目に。

私と同じ青い右目は真っ黒に変色していた。

そしてポロポロと砂のように崩れ去る。

「あの怪しい本に感謝だね。黒魔術を使うなんて思っていなかったよ。」

「生きてて良かったですね。生身の人間なのに。」

「詠唱破棄で高位魔法を使ったからね。代償を払ったけど……。」

レイは何ともないように座り込むフレイに語り掛け、フレイも普通に言葉を返す。

ディアナは言葉を失っている。私がおかしいわけじゃないみたいだ。

「幽霊を阻む結界が張られてるみたいです。救援を待ってみます?」

「……リディさんに話を聞いてる。封印のための施設で、出口は奥にある。」

そう言って、まだ考えがまとまらない私とディアナに指差しする。

「ダンジョン攻略する方が階段を上るよりまともな考えですかね。」

「……その目って、治せないんですか。フレイさん。」

「はい。回復魔法では、身体の部品を作ることは出来ないから。」

「でも、ディアナの腕は治ったし、魔法で腕も補えたじゃない!フレイ…。」

「ディアナはアザエフの腕を移植しているから生やせたけど、僕は無理。」

「魔装構築で補うのも無理かと。俺も肉体を得るまで視力はなかったですし。」

レイはやはり何事もないように残酷な事実を述べた。淡々と、淡々と。

「取り合えず中を探索してみましょう!私も階段は無理だと思います!」

ディアナは主に固まっている私に言っている。

だって、肩を叩いてくれているから。


先程までと違って、私とディアナが前に出て階段を下る。

中は思っていたよりも明るい。レンガ造りの壁と天井はむしろ安心感がある。

だが………流石にこれは怪しすぎる。

温かい通路とはいえ、一応フレイが生きていた安堵感が残っているとはいえ、この異常さを見逃すことは出来ない。

階段を下りて数十歩進むとそこには宝箱があった。

通路の最奥というわけでも、モンスターに守られるわけでもなく、ただそこに。

「………流石に早すぎませんかね。展開が。」

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