表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虫けらは半死半生で彷徨う  作者: 米中毒
主人公がボコボコにされる章
4/54

4話 悪魔

いつから意識が戻ったのかは分からない。

気づいたころには、ぼーっとした思考もできない状態だった。

まだ身体に力は入らないが、だんだんと状況が分かってきた。

引きずられているのだ。

ロープが腕に巻きつけられ強引に引きずられている。

一応、怪我人として配慮されているのだろうか。布が1枚敷かれていて、摩擦による拷問状態にはなっていない。引きずっているのは多分、人型をしている。魔界の魔物であればすでに死んでいるだろうし、生け捕りにするにしても、もっと乱暴である気もする。そして何より鼻歌を練習中のようだ。

この魔界で鼻歌交じりに荒野を横断する化け物の声は、女性のものに感じる。

「起きたんだね」

背中を見せながらそう語る声からは敵意を感じない。

「歩ける?」

「あぁ…はい」

かすれた声で答えると、ロープはボトっと落とし、振り返りもせずそのまま歩き続けている。

慌ててロープをほどき、小走りで背中を追いかけた。

「あれはアドリブでやったのかな?それとも多少は経験を積んできているわけ?」

意識を失う前にみた閃光を思い出し、蛇へ放った魔法のことだろうと察しはついた。

「アドリブです」

「そんな気はしてた」「あなたが最後の一匹に襲われたのは魔力を使い切ったからよ」

「ホワイトスネイクは魔力で判別しているのだから、完全に魔力を使い切ったらそれはそれで不自然」

「それに閃光にも無駄が多いわ」

「威力はもっと抑えて長時間当て続けるのがベスト」

一気に捲し立てれたが、アドバイスは的確なものなのだろう。

何より解毒と手当、危険地帯から運んでくれたので文句などない。

「助けてもらっといて、失礼かも知れませんがあなたは何者なんですか?」

まずは感謝を伝えるべきだったと後から思ったが、彼女?は気にしていないようだ。

「その質問を待っていたわ」

いきなりくるりとこちらを向いてきたので、止まり切れずちょっと近づきすぎたが、これも彼女は気にしていない。フードを下し、目を閉じて静かに語りだす。

「私は、九大俗魔が一人」

いきなり胸ををドンと右手で叩き、大きく息を吸い、目を見開いて、言葉を続けた。

「腐老の悪魔!ダン様よ!」

色々と感想はあった。

なんでこんなに余裕があるんだとか、なんで助けてくれたのかとか、胸をたたく動作がなんかこう………いいなとか。

とりあえず最初に思ったことをいうことにした。

「すいません誰でしょうか」

ローブから、銀髪、青い目、すらっとした体系をのぞかせた彼女は真顔に戻って振り向き、フードを被って、もう一度歩き始めながら会話を続けた。

「あなたワイバーンと一緒に落ちてきた子よね」

「村がワイバーンに襲われたんですが、戦えるのが僕一人で」

「だから魔界に自分もろとも落としたと」

無茶するわねーと何の感情もなく続けたのを見るに、挨拶への反応が薄かったのを根に持っているのかもしれない。

返答に困っていると彼女のほうから続けた。

「んで、帰りたいの?その村とやらに」

「返してもらえるんですか!?」

期待に胸をふくらませ、つい大きな声を出してしまった。

「いや?無理よ。」

そりゃそうでしょといった態度で返される。

「地上から魔界に行くのはゲート開けば落ちるだけだし簡単よ?」

「けど、魔界から地上へはゲートを開いて、さらに上らないといけない。」

だから、地上への移動方法は限られているのだと。

明らかに落胆した僕を一切気にせず、それに、と続ける。

「私に無償で助けてもらえると思っちゃダメよ」

「………帰ったら一生懸命稼ぎますから助けていただけませんか」

「悪魔に金で頼もうっていうの」

学校で習った知識を掘り起こし、唾を飲み込んでから、言葉を続けた。

「………生贄が…いるんですか」

「いや、今貰っても困るけど」

何を言われたのか分からず、混乱しながら記憶をもう一度辿っている最中、助け船が出た。

「欲しいのは魔力よ」

さらに混乱した。息苦しいほどに濃い魔力の中で、ワイバーン以上に魔力をたぎらせているというのに

何を言っているのだろうか。

「さっきも言ったけど、私は悪魔よ」

「悪魔っていうのは肉体の代わりに魔力で構成されているの」

「だから生贄とかは通常いらないし、魔力のほうがありがたいの」

「なんで周りの魔力を使わないんですか?」

無知な相手への説明には慣れているのだろうか、よどみなく答えた。

「魔力は水分としてたとえられることが多いわ」

「悪魔は水たまりみたいなものでね、魔力が溜まったところに自然に発生するの」

「そして時間がたてば蒸発して消えてしまう」

「人間から水をそそいでもらわないと形を保てない。だから悪魔は契約を結ぶのよ」

言い終えると、こちらを振り向き、フードの下から顔をのぞかせ、こう聞いた。

「条件次第で手伝ってあげてもいいけど、まずは………」

「名乗れよ。初対面だぞ。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ