表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/100

101話 妖精の森

森の緑は澄んでいて、葉を超えて射す日は温かい。


地面から伝わる感触は、湿り過ぎず、乾き過ぎず。


吸って吐く空気は心地よい。


「ね~ぇ~。なんか落ち着かなくない?やっぱりさ~~」


左隣で歩く少女はそわそわしながら不満をまた呟いた。


「…………分かんないわよ。水差さないでくれる?」


私はため息をついた。


シアとは微妙に合わない。


「ん~僕もイザベラに賛成だけど、シアの気持ちも分かるなぁ。」


右隣の幼馴染は分かりやすい仲裁を試みていた。


「なんていうか、魔界じゃ大体が敵だったから、

生命に囲まれると緊張するというかね。」


フレイの主張は割とどうでもいい。


こういう仲裁は再開してから度々あった。


昔は一人でいる事が多かったくせに、今では誰より空気を読む。


「ねぇ、あとどれくらいで着くの?」


気遣いに免じて話を変える。


シアが文句を言うのは二度目。


一日三回までは怒りを収めると決めている。


「そうよ!馬車っていう便利なやつには乗れないの?」


三回目。次は無い。


「馬車があれば次の朝には辿り着けたんだけど、徒歩だから明日じゃ着かない。」


フレイはチラリと森に走る影を睨みつけた。


「…………彼らが認めてくれなきゃ歩き続ける事さえ敵わないよ。」


森の中で歩いて二時間。


シアに教えられて気が付いたけど、ずっと見られている。


「まぁ、話しかけてくれるまで待とう。」


そう言いながらシアのカバンをまさぐる。


フレイ自身の荷物は人形とその服でいっぱい。


旅にまで持っていくなら、服はもっと少なくてよかったか。


「魔界で買ったパンの残りがあるけど、イザベラも食べる?」


そう言い終わる前に、シアの口にはパンを突っ込んでいた。


灰色でえらく丸いパンを受け取る。


第一印象は岩だった。


千切れるイメージが無かったのでそのまま口に入れてみる。


次の印象は鉄だった。


噛み切れなかったので、大きく開けた口から取り出す。


「これって食べ物?」


「僕も最初はそう思ったよ。」


私はちょっと唾液を拭いてからシアに手渡そうとした。


彼女は手を出さず、口を開けた。


「まぁ、街に着いたら食べられる物を食べたいかな。」


頭を掴んで灰色の塊を口へねじねじ押し込む。


「もぐもぐもぐ。どったのフレイ?」


シアは苦しんでは無いが、フレイは少しオロオロしていた。



大きな自然のアーチをくぐった瞬間、鳥の声が途切れた。


影が目の前を急接近する。


木の枝で出来た天井からナイフの反射が目に写る。


「えい!」


その影はシアに捕まった。


「えぇ!放せよ!?おい!!」


八歳ぐらいの少年には羽が生えていた。


「ココがどこだか分かってんのか!?人間が入ってくんじゃねーー!!!」


「妖精の森でしょ?通りたいから偉い人呼んでくれる?」


私は猫なで声を意識しながら耳にささやく。


拘束を振りほどこうともがきながら叫んできた。


「アルノール様はつぇえんだぞ!

てめぇらは全滅でェ!!!」


「だ!か!ら!呼んでって言ったでしょ!」


心の中で少し安堵する。


妖精は見た目で年齢が分かりにくい。

もし成人だったら、耳元で猫なで声を出した自分はしばらく立ち直れない。


子供に対抗するシアの幼稚さを観察しながら、杖を構える。


「オイオイ、放してやってよ。

妖精の悪戯は大抵される方が悪いんだぜ?」


赤く整った服装の青年が木々の隙間から降りてくる。


短い杖を戯れに振ると、鳥の鳴き声が再び満ちる。


「この妖精の森を指揮している、つぇえ妖精アルノール様だよ。

何の用かな?人間二匹にスライム一体の珍妙な客人よ。」


「この森を超えて、ティアチューシュへ行きたい。

”聖教団”に用があるんだ」


フレイは胸に手をつきながら答えた。


確固たる意志と相手への敬意を両立するいい挨拶だ。


「なるほどだ。だが、断った方が面白そうなので断る。」


妖精の長はタクトを森へ振るった。


割れんばかりの音が轟く。


弦が震え、木管が重なり、金管が森を押し広げる。


ヴァイオリン、ヴィオラにチェロ、コントラバス。

フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット。

トランペット、ホルン、チューバ、あと多分その辺全部。


適当に知っている楽器を挙げただけだ。


だが、多分全部あるだろう。


指揮棒と手で全ての音を静止させ、彼は三角帽を深くかぶった。


「”カガン王国の妖精の森代表”兼”戦闘総指揮者”アルノール。

偉大なるその名に懸けて嫌がらせをさせてもらいます。」


「二人共、戦うしかないみたい。」


フレイは剣を空飛ぶ妖精の王へ向けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ