ばあちゃんへの報告
詫びに御座います。お納めくださいませ。
じいちゃんからお前への手紙、の後の話になります。
孫が夏休みの宿題でこのままこの通りに書いた、と思っていただければ。
身勝手で申し訳ない、感想が欲しいです。もちろん感想サービスも使いますが。
この作品の反応によって次のお話をどうするか考えたいので。
「ばあちゃーん、仏壇に手紙入ってたー」
僕が生まれる前に肺がんで旅立った、じいちゃんからの、きっと僕への手紙。
じいちゃんは嘘つき、僕はじいちゃんの話をばあちゃんから聞いたことがなかった。ばあちゃんとはよくお話をしていたんだけど、じいちゃんの話は全然しなかった。とーさんとかーさんからもじいちゃんの話はあんまり聞いてない。かーさんのじいじとばあばからも…じいちゃんって何者なんだろう。
「んー?どれどれー?」
ばあちゃんがきゅうりとなすに割りばし刺してこっちに向かってきた。じいちゃんってどんな人だったんだろう?お盆だからってとーさんとかーさんが、ばーちゃんの家に顔見せに行ってこいって言われて列車とバスを乗り継いでやっとたどり着いた。ばあちゃんはいつもにこにこしてる。とーさんのかーさん、だからばあちゃん。かーさんのかーさんはばあばって呼びなさいって言われてるからばあばって言うんだけど、僕はばーちゃんって呼びたいのでちょうどいいんだ。難点はばあちゃんの家遠いんだ。毎年思うんだけど、とーさんとかーさんってばあちゃんの家あんまり来ないんだよね、なんでだろう?
「じいちゃんからの手紙。じいちゃん嘘つきだよ」
ばあちゃんからきゅうりとなすを受け取って仏壇に置く。ばあちゃんには手紙を渡して、一度仏壇に向かう。
「じいちゃん、嘘ついてると地獄に行っちゃうよ?」
手を合わせながら思わず口に出しちゃった。ばあちゃんがそれを聞いて、
「そうだね、地獄に行っちゃうねえあのじいさんは」
でもばあちゃんはにこにこのまま。ばあちゃんが怒るのって滅多にないんだよな。なんかで怒られたことがあったけど…もう覚えてない。
「じじいのお手紙、読ませてもらうかねえ」
ばあちゃんが手紙を読み始める。そんなに長い手紙じゃないからすぐに読み終わるだろう。麦茶飲みたいから麦茶を取ってこよう、ばあちゃんの分も持ってこようかな。
「じじいめ、全く憎い手紙を残してくれたもんだ…ホントにあんたは身勝手でわがままで…見たことない孫にまでこんなもの残して…ほんっとあんたは生きるべきだったじじいだよ…」
ばあちゃんがなんかぶつぶつ言ってるな、独り言つぶやくようにになったら認知症のサインだっけ?認知症防止で、ばあちゃんが寂しくないように出来る限りここに来ようっと。麦茶をコップに注いで、お盆にのせて仏壇のある部屋に持ってきた。あ、じーちゃんの分も持ってくるべきだった?
「ばあちゃん、じいちゃんの分の麦茶忘れちゃった」
ばあちゃんがお盆に乗せていた麦茶を仏壇に上げる。それはばあちゃんが飲むコップだよ?ああ、もう一個注げばいいのか。
「ばあちゃんはいいよ。それより麦茶ありがとうね、じいちゃんきっとごくごく飲んでるよ」
ばあちゃんはにこにこ顔のまま。でもばあちゃんにも飲んでもらいたい。
「ばあちゃん、じいちゃんってどんな人だった?」
麦茶より先に気になったじいちゃんの事をばあちゃんに聞いてみる。初めてじいちゃんの話が聞けるかも。
「そうだねえ…あのじじいはとにかくわがままだったよ」
わがままだったのか…歳取るとわがままになるってホントだったのか…
「でも、お前のお父さんが産まれてから、人が変わったように真面目に生きてたよ。どこにでもいそうな、何の特徴もなさそうな、でも嘘を吐き続ける…ただ、あのじじいは優しかったねえ…」
…どこにでもいそうな人とばあちゃん結婚したの?それの方が凄いと思うな。生きててつまんなくないのかな?僕は麦茶を一気に空けてばあちゃんに聞いてみる。
「じいちゃんと結婚してつまんなくなかった?」
そのまま聞いてみる。どういう答えが返ってくるか結構ドキドキする、初めてのじーちゃんの話だから、じいじじゃない、仏壇でニカッと笑ってる、つるっぱげてるじいちゃんの顔。子供ながらこの人ご先祖様なのかな?って思ってた、実在したじいちゃん。手紙は何がホントで何が嘘か僕にはわからない。
「あのじじいはね、大嘘つきなんだよ。自分の病気も隠して、誰にも心配させないで勝手に旅立とうとした詐欺師。まあ最期にはバレちゃったんだけどねえ、じじいは最期を乗り越えた詐欺師だったって訳さ。お前がこの手紙を見つけなければ、このじじいはただの仏壇に飾られてるつるっぱげでしかなかったんだけどねえ。誰よりも家族の事を気にかけて、家族のだれよりも心配して、ばあちゃんをも騙して、勝手に旅立っちゃった極悪人だ」
…言葉だけだったら随分酷いことを言ってるんだけど、ばあちゃんはにこにこ顔のまんま。ばあちゃんはじいちゃんがとっても好きなんだなあ、でも誰も僕にじいちゃんのこと言わなかった。なんでだろう?
「わしは孫の顔を見ることなく旅立つ、じじいとして失格なんだ、これは遺言だ。孫にわしの話はするな、先祖のつるっぱげとでも思わせとけってね…自分で遺言破るペテン師だよ」
…じいちゃんに失格とかあるのか…僕がじいちゃんになる時気をつけよう…
「遺言はもう無効なんでしょ?ならもっとじいちゃんの話聞かせてよ!じいちゃんも手紙でじいちゃんは嘘つきなんだよって話の種にしていいって書いてあったじゃん」
8月のお盆送りに知った、じーちゃんの秘密。優しい詐欺師、嘘まみれのじいちゃんのお話だけど、その嘘は全部優しい嘘だった。誰も傷つかない、誰もが優しい気持ちになる、とっても優しいじいちゃん。嘘はよくないと思うけど、優しい嘘はいいなあ…
最初に思ったのは「じいちゃんからお前への手紙」の後書きで書いた、ばあさんも旅立った後での「ばあさんからの手紙」にしようと思ったんですけど、生きてるうちにじーちゃんのウソをばらまいちゃいたいなーと思った結果こうなりました。
統一感ないな?と思われるのは当然の事です。孫はまだ言葉の使い方や聞き取り力がまだまだ上手じゃないと思って書いたので。