ぼっち水の守護者と出会う
ある日大司教エルディアスに呼ばれたリリアは、大司教と最初に対面した聖堂に足を運んだ。
「お呼び立てして申し訳ありません」
笑顔でリリアに話しかけるエルディアス、リリアはぺこりとお辞儀をしてエルディアスに向かって。
「こんにちわエルディアス様」
と、挨拶をした、エルディアスは相変わらずの美麗で金髪の長い髪に碧眼、吸い込まれそうな瞳だ。
「エルと気軽に呼んでもらって構いませんと前に言いましたね?」
「うっ」
リリアがエルディアスと会う時、何時もリリアがエルディアス様と呼ぶと、毎回訂正されて言われた言葉だった。
時々エルディアスから発せられる圧をリリアは感じていた、威圧とか高圧とかそういうものではないが、有無を言わせない圧、頬をポリポリとかきながらリリアは。
「こんにちは、エル」
「はい、こんにちわ」
満足そうに頷くエルディアスにリリアはほっと胸をなでおろした。
「今日お呼び立てしたのはもうすぐこの教会に水の守護者が到着すると報告がありました」
「水の守護者…?」
「守護者の事は以前ご説明しましたね?」
リリアは姿勢を正し答える。
「はい、水、火、土、風、闇、光の六属性の守護者がいて、その…聖女を守る役割があるって…」
「そうです、守護者は聖女の貴女が発見され、その後女神によって選定が下され、啓示によって私に知らされます、そこから啓示にあった特徴などから調べられ、貴女が触れたことのある魔法具で対象者かどうかがわかります」
「結構手間がかかるんですね」
「そうですね、女神様も万能では無いということでしょう」
(これは笑って良いタイミングなのかな…?)
エルディアスとの会話でたまにジョークなのかそうでないのかわからない時があった、そういう時は何時だって。
「ですねー」
と、リリアは言って流す事にしていたのだった。
「おや、到着したようですね」
エルディアスは入り口の方を見てそう言う、リリアはパッと振り向く。
しかし窓から入り込む光によってその人の顔は見えない、ただ何やら走ってくる音が聞こえる。
「リリア!」
「へっ?」
走ってくる人影が近づいてきたと思ったら唐突に抱きしめられる。
「なっななななん!?」
ぎゅっっと抱きしめられて焦るリリア、思わずリリアは相手の体を押しのけた。
「だっだ誰ですか!いきなり!…あれ?」
リリアは押しのけ後ずさった後、いきなり抱きついてきたその人物の顔を見ると、見慣れていた顔が見えた、銀色の髪緑の瞳。
「兄さん…?」
数ヶ月前に遠征で出て行ってしまって、挨拶すらできなかった兄、クリス・ライドルが立っていた。
「リリア…!良かった顔色も良い、元気そうだ…」
ぐいっと距離を詰められ、両頬に手を当てられ顔を覗き込まれる。
「兄さんなんでここに!?」
「彼、クリス・ライドルが水の守護者です」
エルディアスは久しぶりの再会に驚くリリアと、久しぶりに見る妹の姿を隅々確認するクリスを見て言った。
「遠征から帰ったらお前はもう居なくて、教会に旅立ったと聞かされた時は身に詰まる思いだった…それから暫くすると教会の人間が家に訪れ、私が水の守護者だと言われたんだ」
「そうだったんだ…」
リリアは兄の姿を見てじんわり自分の心が温かくなった気がした。
「とりあえず顔合わせはこれくらいで、まずはこの教会についてなど、詳しい説明は後から別の者にさせます、まずは案内を受けてクリス殿の部屋まで案内してもらって下さい」
エルディアスはクリスに向かって伝えた。
「しかし私は…!」
クリスは何かを言いかけるがそれをエルディアスが止める。
「リリア様とは後でいくらでも話が出来ます、長旅でお疲れでしょう、まずはお休み下さい」
「…わかりました」
クリスは渋々頷き、案内の者と共に聖堂を去っていった。
「エルディ……エルは水の守護者が兄さんって知ってたんですよね?!」
リリアはエルディアスに向かって言うと、エルディアスは頷く。
「えぇもちろん、全ての情報は私の元に集まるようになっていますので」
「じゃあどうして教えてくれなかったんですか!?」
リリアは不服そうにエルディアスに詰め寄ると。
「リリア様に早々とクリス殿が来ると伝えたらどうなりますか」
「それは嬉しくて毎日ワクワクで待ちます!」
「そうすると貴女の事です、毎日の勉強に身が入りそうにありませんね…」
「うっ」
確かに兄が来ると伝えられたら、毎日ソワソワワクワクで指折り日にちが経つのを数えるに違いない。
指摘された事に大して反論できないリリアは項垂れて。
「そう…ですね、ハイ」
と、認めるしか無かった。
「貴女のここでの生活が少しでも色づくと良いですね、他の守護者も見つけ次第この教会に来てもらう事になっています、その時はまたお知らせします」
そう笑顔で言うエルディアス、リリアは控えめに頷き。
「わかりました…」
と答えた、しかしリリアはこれからは兄が一緒だという事に対して安心を感じていたのだった。
兄のクリスと再開してから数日後のこと…。
「兄さん早く!早く!」
教会の廊下を足早に歩くリリア、行き先を指差しながら後ろからついてくる兄クリスを急かす。
「急がなくても鍛錬場が逃げることはないよ」
「気分の問題!」
リリアとクリスは教会騎士団の鍛錬場に移動していた、クリスが来てから毎日のように赴き、自由時間にリリアは剣術を教えてもらっていた。
「今日もよろしくお願いします!」
リリアはクリスにお辞儀をし、置いてある練習用の剣を手に取った、クリスも同じように剣を取り、構える。
「いつでも」
クリスはリリアにそう言うとリリアはぎゅっと剣の柄を握り込み構えた。
「いきます!」
金属と金属がぶつかる鈍い音が響く、リリアとクリスの打ち合いを少し離れた所で見ているのは騎士団員達。
複数人で同じように鍛錬をしている中、ちらちらとリリアとクリスを見ている。
「なぁなぁ聖女様って剣術できるんだな」
騎士団員の中の1人がそう言う、短髪の軽快そうな男性だ。
「しかも形が綺麗っていうな、兄のクリス様に昔から教わってたそうだ」
別の騎士団員が言う。
「なんでお前そんな事知ってるんだよ」
「実はこないだ話したんだよ」
団員2人は会話を続ける。
「最初はなんかおどおどしてるっていうかさ、話しかけにくい雰囲気だったんだけど、たまたま話しかけるタイミングがあってちょっと話したら普通に話してくれんの」
ちょっと得意げに話す騎士団員。
「まじかよ」
「マジマジ、それから顔覚えてくれたのか、通路ですれ違ったりしたら挨拶してくれんだよね」
「へー俺も今度話しかけてみようかな」
そんな話をされているなどリリアは知る由もない。
「遅い!」
クリスはリリアが斬りかかってきたのを難なく躱し、逆に追撃をする。
「っ!」
力強く斬り払われた剣撃を受けきれず、リリアは体勢を崩し後ろにぐらりと体が傾く。
「わわっ!」
クリスはグイッとリリアの腰を引き寄せ、傾いた体を抱き寄せる。
「大丈夫か」
「う、うん、大丈夫…有難う兄さん」
クリスはじっとリリアの瞳を見る、その視線に耐えきれなくなったリリアは。
「き、今日はここまでかなー!?」
リリアはパッとクリスから離れてパンパンと服を叩く。
(なんか兄さん、こっちで会ってから過保護になった気がするんだよなぁ…)
心のなかでリリアは思う、出会えば調子や体調、困り事が無いかなどを毎回聞かれた。
「そうだな今日はここまでにしよう」
クリスはリリアの持つ練習用の剣を手に取り、所定の位置へ片付ける。
「じゃあ兄さんまたね!」
リリアは手を振って鍛錬場を立ち去って行く、それを見届けるクリス、その視線はリリアが見えなくなるまで送られていた。
リリア:主人公 前世ではぼっち女子だった、銀髪赤瞳ロングヘア、兄の美しい剣技が好き
クリス:リリアの8歳年上の兄、銀髪緑瞳肩下まで伸びた髪を一つに束ね前に流す髪型、過保護が札をつけて歩いているようだ
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