ぼっちは新しい環境にビビる!
出立前夜、両親とは話ができたが、兄のクリスは街周辺の見回り遠征に行っているため話ができなかった。
「父さん母さん、兄さんによろしく伝えてくれる?」
「あぁ次帰ってきた時に伝えておくよ」
「一生会えないわけじゃないし、嫌になったら帰ってきちゃいなさい」
両親は笑顔で言っているが、寂しそうに見えた。
「行ってきます!」
心配させまい、とリリアは笑顔で馬車に乗り教会本部へ向けて出発した。
旅は馬車に乗り、こまめに休息を取りながら進んだ、街を通れば宿を取りそこで泊まる。
馬車は二台、1台は司祭が乗っている、2台目は聖女であるリリア、護衛に歩兵と騎馬兵が含まれた。
「1人は有り難いけど、ちょっと暇かも…」
必要なものは全て教会が用意すると言われた、もう面倒なので荷物を持ってこなかったのだ、旅路はただ流れる景色を見ているだけの時間がほとんどだった。
立ち寄る街や村では人に会わないように行動の制限をされた、教会の者と常に行動が一緒だった。
(なんか捕まってる気分…)
1度騎士の人に話しかけてみたが、職務中ですのでと断られてしまった。
暇だという事以外では快適に旅は進み出発してから20日程経った頃、司祭からもうすぐ到着だと教えられた。
しばらく教会のある街への道を進んでいると、窓からちらりと見えた外の景色にリリアは驚いた。
「こ、これって…!?」
巨大な城のような建物の周りに街が形成されていた、かなりの広さだ。
街に入る為に大きな門を通る、そこから一本広い道が伸びており、真っ直ぐ巨大な建物に続いていた。
街に入ってからは馬車の両側の窓はカーテンが閉じてあり外は見えない。
前にある小さなのぞき穴から見えるだけでもかなりの広さだというのがわかる。
一本道を通り、教会本部の敷地内に入る、そのまま進んで建物入り口に馬車がつくと、外からコンコンコンとドアを叩く音がした。
「聖女様、到着しました」
ドアを開けられ馬車から出る、そこで見えた景色に思わずリリアは。
「ひえっ…」
と驚いてしまう、建物に入ったと思ったがそこはまだ途中で、奥にも広い敷地が見えた。
「まず大司教様に会って頂きます、その後聖女様が生活する建物の案内をしますので、ついてきて下さい」
「は、はい」
建物の内部に入り奥に進むと大きな聖堂があった、その奥に人が立っているのが見える。
長い絨毯の上を進むとその人影はこちらを向いた、絹糸のような長い金髪と碧眼の男性。
「初めまして聖女リリア様、私はこの教会の大司教を務めているエルディアス・ファーランドと申します、どうぞ気軽にエルとお呼び下さい」
「うっ眩しいっ」
笑顔で自己紹介されたがその美麗さに思わず目を逸してしまった、そしてリリアは思った。
(街の女の子が見たらぶっ倒れる美しさっ…なん、なんなの!?)
「は、はじめまして、リリア・ライドルと言います…本当に自分が聖女なのか懐疑的です
よろしくお願いします…お世話に…なります」
ぺこりと頭を下げて挨拶をした、エルディアスはにっこりと微笑み頷いた。
「リリア様にはこれから少しずつこの教会の歴史や教会がある街の事など様々なことを学んでいただきます、ひとまず長旅でお疲れでしょう、今日はお休み下さい、明日から詳しい建物内部の説明等させていただきますので」
エルディアスはリリアから少し離れた所にいた人に視線を移し。
「アネット、リリア様をご案内しなさい」
「はい!」
アネットと呼ばれた娘は、ずいっと一歩前に出てリリアに向かって勢いよく頭を下げる。
「聖女様のお世話係のアネットです、よろしくお願いします!」
「よろしくお願いします…」
「こちらへどうぞ!」
アネットはそう言ってリリアの前を歩き始めた、リリアはエルディアスにぺこりと挨拶をしてアネットの後をあるき出した。
案内されたのは建物の外を出て教会の敷地内に個別に作られた館だった。
「こ、ここ…?」
「そうです、聖女様専用のお屋敷ですね、といっても小さいですけど」
自分の実家の数倍ある建物を見て小さいと思えないリリア。
屋敷の中に入ると一本廊下が通っており、その廊下に沿っていくつか扉があった。
「1階は炊事場、倉庫などや、食堂、私達使用人の待機室があります」
「しょく…どう」
二階に続く階段を上がる、所々に絵画や石像などの調度品も置かれている。
「2階は多目的ホール、応接室、会議室があります」
「会議室…」
さらに階段を上がっていくと。
「ここが聖女様が主に使用する階です、お部屋、トイレ、バスルーム、図書室、礼拝堂があります」
「れいはいどぅ…」
部屋のドアを開け2人は中にはいる、ふかふかの絨毯生地の床に、大きなベッド、書物ができそうな机に休憩スペースだろうか、テーブルとソファが置いてある。
大きな窓もありその外にはバルコニーが見えた。
アネットは部屋の説明をすると。
「必要なものはその都度言ってもらえればご用意します、あと洋服ですが、とりあえず置いてあるものを着用してください、後日仕立て屋が採寸などに来る予定になっています」
「ここ1人で使うんですか…」
大きさと豪華さにドン引きしているリリアが後ずさりしながら、アネットに言う。
「もちろんです、使用人は常時2人待機しています、外には警備の騎士と屋敷周辺の見回りもありますのでご安心下さい!」
にこっと笑顔で伝えるアネット。
「今日はお風呂にはいってゆっくりお休み下さい、後で夕食をお持ちしますね」
「はひ…」
ぺこりとお辞儀をして部屋を出て行ってしまったアネットの背中を見送り、リリアはボスンとソファに腰を降ろした。
「これもうお姫様なのでわ…?だめだ、色々考えたら逃げたくなりそうだから…さっさとお風呂はいっちゃお…」
よろよろと部屋の外に出て少し進んだ先にあるバスルームに向かう。
「なんですかぁこれぇ!?」
大きな鏡が取り付けられた鏡台があり、大きな棚にはタオル類や洗剤類が店のように並んでいる。
その奥に大きな浴槽が見えた、ぱっと見るに実家で使っていた魔法具と形状は違うが、同じ機能の物が取り付けられているようで、使うのに困ることは無さそうだ。
「うう、こんな緊張するお風呂今までに無いよ…」
置いてある石鹸をタオルで泡立てる。
「なにこれっ物凄く泡立つし凄い良い香りがするっ!」
髪も体も洗いつやつやになる、浴槽の中で両足を抱え座るかたちで肩までつかるリリア。
「広すぎて落ち着かない…」
リリアは入浴後食事をとり、部屋にあるベッドの隅に座り大きなため息をつくリリア。
「もっと小部屋なのを想像してた…一人部屋有り難いけど広すぎて緊張する」
リリアはばふっとベッドに倒れ込む、大の字に寝ても広さに余裕がある、リリアが三人寝れそうな大きさだ。
「もういい、明日からなんか色々ありそうだし寝ちゃお…」
リリアは疲れもあってか、吸い込まれるように眠りにつくのだった。
リリア:主人公 前世ではぼっち女子だった、銀髪赤瞳ロングヘアー、本人が思ってないが可愛い
エルディアス・ファーランド:大司教 金髪碧眼サラッサラのロングヘアーバチバチの美形






