ぼっちの私が聖女と言われても
コンコンコン、家の入口のドアから音がする
「あら、誰かしら」
ママリアは台所で食事の準備をしていた、隣にはリリアもいて手伝っているところだった。
「母さん私が出てくるよ」
そう言ってリリアは入り口に足早に歩いていく、ドアノブを掴みガチャリとひねる。
「はぁい」
と声を出しつつ扉を開けると、そこには司祭風の出で立ちをした人と、自警団とは違う鎧を着た人が数人立っていた。
「えっと…?」
「ここはリリア・ライドル様のご自宅で間違いないだろうか」
穏やかな表情で男性が微笑む、リリアはとりあえず頷き。
「はひ…そうです」
と、ちょっと間抜けな返事をしてしまった。
「貴女がリリア様でしょうか」
「はい…」
頭の中で自分が何か悪い事でもしたのかと考えが巡る。
何かを壊した記憶もないし、誰かにぶつかった記憶もない、明らかにこの街で見たことのない雰囲気の人達が現れ、少しパニックになっているリリア、すると後ろから声がした。
「リリア~?どうしたのお客様…あら?」
「どうぞ…」
リリアは司祭の前にお茶のカップを出す。
「これはご丁寧に有難うございます」
司祭の男性はお茶に口をつけ、にっこりと微笑んだ。
「それでお話というのは…?」
ママリアは入り口で立ち話もということで、訪れた人物を家の中に案内していた。
司祭のみが家に入り、他の者は外で待機するということだった。
「私はエリアル聖教会のサジンという者です、この度はリリア様にお話があり、参りました」
「は、はい…話とわ?」
緊張した面持ちでリリアは言う、司祭サジンはリリアに向かってこう言った。
「女神様の信託により、貴女を聖女としてお迎えに上がりました」
「聖女?」
自分を指さし、首を傾げリリアは言った。
「はい、この世界を浄化し守る聖女です」
「いやいやいや…私普通の一般市民です」
リリアはぶんぶんと首を横にふり否定した、隣に座っていたママリアが司祭に声をかける。
「この娘が聖女という何か確証があるのでしょうか」
「それに関しましてはこちらを…」
司祭サジンは、床においていた荷物袋の中から一つの水晶型の魔導具を出し、机の上に置いた。
「女神に選ばれた聖女がこれに触れれば七色に光ります」
ずいっとリリアの前に魔導具を出す。
「知ってますよ!こういうのって誰が触っても光るようになってるんですよね?!」
手を胸元でぎゅっと握って触れないようにするリリア。
「それでは先にお母様に触れていただくというのはいかがですか」
「え…」
司祭はママリアの前に魔導具を移動させ、手で触れるように促す、ママリアは恐れることなくペチッと水晶に触れた。
スンッ…水晶は何の反応もしなかった。
「光りませんね」
ママリアは何故か少し残念そうに言った。
「さぁ、リリア様」
「うっ…」
ここまでされて触らないわけにはいかない、深い溜め息をつきながらリリアはそっと水晶に触れた。
「おお…!」
リリアが水晶に触れた途端、光があふれ優しく七色に輝き始めた。
「まさしく聖女の輝き、女神の信託のとおりです」
「嘘でしょ…」
リリアは自分の手を見つめながら呟いた、司祭は続けて説明をし始めた。
「リリア様には聖女として教会の本部で暮らしていただくことになります
もちろん衣食住に関しては教会が全て保証致しますのでご安心下さい
詳しい説明は教会本部についてから細かくお教えします」
「えっ引っ越せって事ですか!?」
「そうです、リリア様は特別な存在、聖女としてのお勤めもありますので教会本部で生活をしていただきます」
「そんな…母さん!」
思わずママリアの方へ顔を向ける、ママリアは真剣な表情で司祭に聞く。
「そのお勤めというのは具体的にはどういう事をするんですか、命に危険は?」
「お勤めに関しては機密事項となりますのでお教えすることはできません
しかしリリア様には教会の騎士や、6人の守護者がお守りすることになっています」
「どうしても…行かなければいけないんですか…」
リリアはうつむきながら言う、司祭は頷き。
「できる限りの貴女への支援をすると約束致します、この世界の為なのです」
ずるい言い方だ、何も知らないそのへんの一般市民を捕まえて。
この世界の為などと言われても困る、聖女としての自覚もないのに、はいそうですかと、ホイホイついていけるほど簡単に考えられなかった。
「考えさせてもらえませんか…」
リリアがそう言うと司祭は申し訳無さそうに首を横にふり。
「申し訳ありませんが、待つことはできないのです、明後日にはここから教会へ移動していただきます」
「急すぎませんか!?」
「申し訳ありません」
物腰柔らかな司祭だったが、有無を言わさない雰囲気があった、これ以上は譲れないという。
その後二日後の朝迎えにくると言い残し、司祭達は帰っていった。
リリア:主人公 前世ではぼっち女子だった、銀髪赤瞳ロングヘア