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ぼっちだって落ち込むことはある

「これって…」

 ラヴィータは自分の手のひらをじっと見つめ感覚を確かめる。

「リリア…君は…」

 ラヴィータの表情は硬く、リリアをじっと見つめた。

「え、もしかして何か駄目な事を…?」

 リリアは不安げにラヴィータに問いかけた、ラヴィータはリリアの手を取り。

「リリア、今の事は僕達二人だけの秘密にしよう…」

「どうして…?」


 ラヴィータは考える素振りをみせ、静かに言う。

「その…僕も詳しく説明できないんだけど…今のはちょっと駄目だと思う」

「ダ、ダメッ!?」

 ガンッと頭に衝撃が落ちた気がした、何時も笑顔のラヴィータからの駄目発言、明らかに態度が硬化した意味もわからないまま、その日は解散となった。


 次の日からもラヴィータは遊びには来てくれていたものの、リリアはなんとなくラヴィータとの間に壁一枚ができたような気がしていた。

 それでも定期的に遊びに来てくれたし、いつも通り話もするし笑い合いもした、そんな日々が続いて一年ほど経った時。


「じゃあね」

「うん、またね」

 二人はそう言って手を振りあった、リリアは次は何をして遊ぼうかななんて思っていた、だが、それからラヴィータがリリアの前に現れる事は無かった。



 最初は忙しいのかな、なんて思っていたリリアだったが、一週間、一ヶ月、日々過ぎていき、ある日思ったのだ。

(ラヴィはもうココには来ないんだ)


「嫌われちゃったのかな…」

 街の周囲で事故とか事件とか、そういう物が起きていなかったか自分で情報を集めもした。

 だがそんな事実や噂はひとつもなかった、そもそもラヴィータという少年が本当に居たのか怪しいくらいだった。

「まさかイマジナリーフレンドとかっていう…やつ?」

 そんな風に思えたのも最初だけで、日にちが経つにつれリリアの元気は無くなっていった。

 外に出なくなり周囲がわかるほどに笑顔が減り、部屋に引きこもるようになった

「ラヴィータ君と喧嘩でもしたの?」

 なんて母親に言われたりもした、リリアは言葉を濁すしか出来なかった。



「リリア、クリスに剣を習ってみないか」

 そう言われたのは、兄クリスを含め家族四人で夕食を囲んでいる時だった。

「え…」

 リリアは思わず父親のディーパの顔をみる。

「どういう事ですか」

 食事の手を止め、同じように父親の顔をみるクリス、その容姿は相変わらず眉目秀麗で、透明感すらある銀髪に緑の瞳、髪はひとつに束ね、肩に流すような髪型をしていた。

 クリスは無表情でイマイチ何を考えているかわからない、リリアは少し苦手意識があった。

「最近リリア元気がないだろ、ずっと外に出てないのも良くない、気分転換にクリスの時間がある時に、剣術を習うのはどうかと思ってな」


 父親の言い分はまぁわかる、ずっと部屋に引きこもりでいる娘に少しでも外に出て欲しいという思い、でもリリアは唐突にそう言われても、はいそうします、とは言えなかった。

「…しかし…」

 兄も反応は微妙だった、兄はこの度学校を卒業し、地元の自警団に見習いとして従事する事が決まっていた。

 学校にいる時は朝から晩まで勉学と剣技を磨くのに励み、ほとんど家で顔を合わせる事がなかったが、自警団に所属する事になり、一日の拘束時間は長いものの、休みも増えるという事だった。

「わかりました、私の時間がある時で良いなら」

 そうクリスは言った、親と兄がそう決めたのだ、リリアが意固地になって拒否することもない。

 半ば諦めに近い気持ちで、リリアもその要求を飲むことにした。


 クリスの教えは丁寧だった、軽い材質でできた木剣から始まり、立ち方、武器の持ち方、構え方、足運びや振り方など細かに少しずつ無理なく教えてくれていた。

 何よりリリアをやる気にさせたのは、クリスの剣技の美しさだった、オーケストラを指揮する指揮者のように滑らかで力強く綺麗だった。


(兄さんみたいに剣が扱えるようになれたらなぁ)

 そんな事を思うまでにリリアに気力が満ちていた。


 時間がある時で良ければ、そんな話だったのにクリスはかなりの時間を鍛錬に使ってくれていた。

 クリスの居ない時間は勉学に勤しんだ、学校にも通い、前世と同じく特に友達ができるわけではなかったが、前よりは社交的になり、クラスメイトと普通に会話はできるようになっていた。

 しかし友人、親友というカテゴリーの交友関係は築けなかった。


「やっぱり1人でいるのが楽なんだよね…」

 前世での世界でも、今の世界でもやはり学校は基本集団行動だ、何人かのグループだったり。

 クラスに1人はいるカリスマ的人気者がいたり、趣味を同じくした集まりがあったり、どこも変わらないものなんだなと思った


 街の学校というのもあってか、偉そうなお貴族様がいない、それも有り難かった。

 身分が高貴な人は派閥を作りたがる、本人にその気がない場合も稀にあるが、結局は周りが派閥を作るのだ、そんなものに巻き込まれたくない。


 それに集中して勉学に励めるのは良かった、コツコツと勉強してわかったことがある。

 この世界には魔法がある、しかしこの世界の人が全員使えるわけではないようだった。

 2人に1人の割合らしい、そこから個人で得意な属性というものがあるようだった。

 水・火・土・風・闇・光だ、闇と光が得意な人は他の属性に比べ絞られるという。


 そして魔法を使うには触媒が必要だと言うこと。

 簡単に言えば杖、魔導書などだ、魔力の操作や増幅等に適した鉱石があるようで、触媒が無いと魔法は使えない。


(私が昔ラヴィに使ったのが魔法なら、あの時の私は触媒を持っていなかった)


 そして悲しい事にこの世界では、魔法が使えるもの全てが歓迎されるわけではないようだった。

 地域によっては迫害や隔離という扱いを受けている土地もあるようで、あの時のラヴィの反応は

 それに関係していたのかもしれないと思った。


 毎日をリリアは勉学や剣術に励んだ、自分が意外と体を動かす事が好きなのを知った。


「やぁっ!」

 ギィンと鉄がぶつかり合う音がする。

「踏み込みが甘い!」

 クリスにそう言われ一旦距離を取るリリア、家の庭で指導を受けていた。

「いきます!」

 リリアはグッと脚に力を込め駆け出す、クリスを目の前に剣を振り下ろすが難なく受け止められる、力いっぱい剣を押しているリリアに対してクリスはその力を受け流す形で剣をさばくと。

「わっ!わわ!」

 バランスを崩したリリアは前のめりに倒れる、うっかり手放した剣の柄の部分がおでこにぶつかった。

「痛っ」


「今日はここまで」

 クリスは素早く美しく剣を鞘に収め、倒れているリリアに手を差し出す、その手を取り、リリアは立ち上がる。

「ありがとうございました」

 にへっとおでこを擦りながらクリスにお礼を言った。



 そんな毎日を過ごし、年月が経ちリリアが15歳になった頃、転機が訪れた。

リリア:銀髪、赤瞳、腰までのさらさらストレート

クリス:銀髪、緑瞳、後ろで髪を束ねて前に流している

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