ぼっちは逃げるが回り込まれてしまった!
「今日はもう家に入らないといけないから!」
思わず口からでた明白な拒否の言葉、リリアは本を抱き素早く家に入る。
後ろで男の子が何か言っている気がしたがそんな声は聞こえなかった事にした。
自分の部屋に駆け込み、荒くなった息を整える。
「びっくりした…何だったの…」
とはいえ、リリアは自分の口からでた言葉には申し訳無さがあった。
「あの言い方は無かったかなぁ」
少しの後悔と少しの反省の気持ちを抱えたまま、その日を終えることになった。
そして次の日、家の窓から庭やその周りを確認した、人影も見えず一安心した。
「さすがにあんな事言われたら来ないよね」
そう言い、いつもの場所で本を読み始める、そして暫くたった頃。
「こんにちわ」
「?!」
声のした方に体を向けると、昨日の男の子、ラヴィータがこちらに向かって手を振っている。
「今日は遊べるかな?」
昨日と変わらぬ笑顔で誘ってくる。
(昨日の今日で話しかけてくるの!?)
驚きながらもリリアは勢いよくその場に立ち上がり、視線を外し、片手を頭の後ろに添えて。
「あー…今日は家の手伝いがあるから!!」
そう言い切ってそそくさと家の中に入っていく。
ぱっと言った嘘とはいえ、自分で言ったことに責任を持つためにその日は家の手伝いをすることにした。
次の日は部屋で大人しく過ごすことにした、庭にも出ず、窓から外を覗くこともしなかった。
母親には少し心配されたが適当に誤魔化すしかなかった。
そして次の日、部屋で薬草図鑑を見ていたリリア。
「これがヒーリング草…まるい葉っぱなんだ…こっちが毒消し草、ギザギザ葉っぱ…」
ひとつひとつ薬草の絵が描かれた部分を指しながら読んでいく。
「リリアー!お友達が来てるわよー!」
と1階から母親の声が聞こえた、思わず本を抱えたまま立ち上がる。
「友達…?まさかっ!?」
バタバタバタと慌てて階段を降りていき、家の入口まで来た所でその姿は見えた。
「ラヴィ…!?」
「やぁこんにちわ」
手をひらひらと振って挨拶をするラヴィータ、口を開けて驚きを隠せないリリア。
「もうリリアったらお友達が出来たならそう言ってくれたって良いじゃない♪」
何と言いくるめられたのか母ママリアはご機嫌だった。
「さ、お庭で遊んでらっしゃい、外にでかけても良いけど遠くは駄目よ」
ぐいぐいと母に押し出され二人は庭に出された。
「な、なな、なんで…!」
未だ動揺がおさまらないリリアはラヴィータと距離を空けて話しかける。
「一緒に遊びたかったから、かな?」
「あ、あんなにハッキリ断ったのに」
ラヴィータは首を傾げ人差し指を口元に当て。
「あれ断ってたの?」
事もなげにそう言った。
「話した事もないし!」
「これからたくさん話をすれば良いんじゃないかな」
「あんなひどい言い方したし!」
「別に僕はひどい言われ方したと思ってないよ」
「わ、私めちゃくちゃ性格悪いし!」
「性格が悪い人はこんなやり取りしないんじゃないかな」
転生前は一度拒否の姿勢を示せば大体は相手から離れていった、二度三度すれば完全に離れる、構われなくなるし、声もかからなくなる、今回もそうだと思っていた。
「本をさ、すごく楽しそうに読んでるのが見えたんだ」
「え…」
「僕も本が好きで、一緒に本を読んだり本の事で話をしたいって思ったんだ、だから話しかけた」
ラヴィータはリリアに向かって手を伸ばしにっこり笑ってこう言った。
「一緒に遊ぼう!」
それからラヴィータは定期的に遊びに来るようになった、最初は緊張でガチガチだったリリアも回数を重ねるにつれ少しずつ会話ができるようになっていった。
ラヴィは何時も穏やかな顔でリリアの話を聞いてくれた、本を沢山読むようで、リリアが読んだ本の殆どを読破していたし、逆にリリアから聞いた未読の本はすぐに手に入れ読んでいた。
リリアは意外と自分が話をするのが好きなのを知ったし、なんでも無い話を楽しそうに聞いてくれるラヴィに救われていた。
「ラヴィは凄いな…」
リリアは思わず呟いた、口からでた瞬間にしまったと思った。
「どうしたの急に」
不思議そうにラヴィータはリリアを見た。
「わ、私…人に合わせるのが苦手で、会話の内容とか趣味とか…」
リリアはうつむきがちにラヴィータに言う、転生前、クラスメイトが楽しそうに話している趣味の事とか、あのアイドルが好きだとか、アニメが、音楽が…、そういう他人の楽しいものに関心が無かった、知りたいと思うことも無かったのだ。
「じゃあ僕は何が好きでしょう」
人差し指を立ててラヴィータはリリアに唐突に言う。
「え…本かな」
「正解!どんな本が好きでしょう?」
「え…っとよく話が出るのは物語の本、中でも騎士が姫を守るやつ!」
ラヴィータの表情がぱっと笑顔になる。
「正解!」
「やった!」
二人はお互いほほえみ合う、ラヴィータはリリアに言う。
「別に無理に話を合わせるような事はしなくて良いんじゃないかな
友達になったり、親しくなっていくうちに、その人の事をもっと知りたい
その人が好きな物がどんな物なのか気になるって感じになるさ」
「そういうもの…?」
「リリアは僕の事を知ってくれたし、だからさっきみたいに好きな物の話もできる
今のリリアに自信もって」
ラヴィータはそう言ってリリアの頭を撫でた。
そんな風に二人で遊んでいたある日、転びそうになったリリアを庇ってラヴィータが怪我をした事があった。
「ごめんなさい!大丈夫!?」
リリアを庇った時、手をついて地面で擦りむいたようだった、じわりと手のひらから滲む血、リリアは泣きそうになっていた。
「大丈夫だよ、リリアはケガはない?」
「うん…」
お互い立って土埃を払う、その時ふとリリアは思いついた、ラヴィータの手を取り。
「いたいのいたいの…とんでいけー!」
くるくる指を回して上に向かって振り上げる。
「え?」
きょとんとするラヴィータにリリアはハッとして
「あっ…えええぇえっと!痛みが無くなりますようにっていうおまじないで、深い意味はなくって!」
リリアは耳まで真っ赤になりながら自分のやった子供じみた行動を説明していると。
「あれ…」
ラヴィータが自分の手のひらを見つめている、それにつられてリリアを視線を手のひらに落とすと
「傷が消えてる…」
ラヴィータの手のひらの擦り傷は綺麗さっぱり治っていた。
リリア:銀髪でストレートロングヘア、赤眼
ラヴィータ:サラサラでクリーム色の髪、茶色の瞳