ぼっち人生の終了と転生
思い返せば物心ついた時からぼっちだったと思う、たとえば皆大好きお昼の時間。
小学校の頃、給食の時間には皆で机を合わせ、向かい合って給食を食べるそれが普通。
でも、それが億劫で、クラスメイトと顔をあわせて食べるのが嫌で、窓際に机をくっつけてカーテンを被って、外を見ながら給食を食べた。
何回かやってたら、学校に親が呼び出された。
中学校の頃、お弁当の時間何時も一人でお弁当を食べている私を気遣って。
クラスメイトの優しく面倒見がいい女の子が、毎日のように一緒に食べようと誘ってくれた。
でも、それも億劫で授業が終わってチャイムがなった瞬間にお弁当を広げ、食べ始める事で誘われなくなった。
高校の時は食堂で一人で食べていたら見かねたのか、学年主任の女の先生が隣に座り先生も一緒に食べて良い?最近調子はどう、なんて話しかけられる日々が数日続いた。
でも、そんな気遣いも面倒で昼は購買部で買って一人で食べるようになった。
別に人が嫌いなわけじゃない、ただ面倒くさがりなんだと思う。
いつもの学校の帰り、住宅地の道路の端を歩く。
「今日もぼっちでいられた…良かった…」
そんな事を呟きながら歩いていると道の反対側にボールを持った小さな男の子が立っていた。
キョロキョロ辺りを見回し、何かを探しているようだ。
ぱっと目が合った、途端に男の子は笑顔になりこちらに向かって走ってきた。
ゴーーと低い音が聞こえ、その方向に視線を向けるとトラックが走って来ているのが見える。
「え…もしかして見えてない…?」
光の加減でトラックの運転手の顔が見えない、ただスピードを落とすことなくそのまま真っ直ぐ道路を走ってくる。
ハッとして男の子を見ると、ボールを落としたのかしゃがんでボールをつかもうとしているところだった。
「嘘でしょ…危ない!」
思わず駆け出し、両手で男の子を拾い上げ、そのまま駆け抜けようとした。
「!」
しかし靴が滑り体勢が崩れる、正面をみると人影が見えた。
一か八か、その人影に向かって押し出すように男の子を投げる。
ふわりと男の子が飛び人影に見事にキャッチされる姿が見えた。
「よかっ…」
ドンッ!横から衝撃を受けたと同時に私の意識はそこで一旦途切れた。
ふわりふわり体が浮いている感覚。
「あー…これ死ぬやつ…まぁいっか…人生こんな事もあるある…」
指先足先から少しずつ感覚が薄くなっていく。
「次生まれ変わったら…ちょっとくらい友達作れたらいいなぁ」
そんな事を思い、どんどん感覚が薄くなっていくのを感じながら眠るように意識は落ちていった。
次に目が覚めた時、自分は赤ちゃんだった、前世の記憶は残ったまま生まれ変わったようだ。
最初は自分の身に起こっている事がわからず混乱した、見たことのない天井、視界の端に映る家具は自分の記憶にある現代の物とは様子が違っていた
そんな風景に驚いていると、幸せそうな男女の顔が視界に入ってきた。
「リリア、私達の可愛いリリア」
そう言って顔を覗き込んでくる、これは母親なのだと理解した、銀髪ですぐりの実のような赤い瞳をしていて、優しげな笑顔で頬を触ってくる。
「リリア、お父さんだぞ!」
そう聞こえて視界に入ってくるのは短髪で茶色の髪で緑の瞳をした男性、父親のようだ、明るい笑顔で自分を見ていた。
「……」
そして時々視界に入ってきたのは銀髪で緑の瞳をした男の子、どうやら兄のようだ、無言でこちらを見て時々頭を撫でていく。
自由に動き回れるほどまだ成長していない時期、耳に入ってくる言葉で自分の環境が理解できた。
父親の名前はディーパ・ライドル、鍛冶工房で鍛冶師として働いているようだ。
元気いっぱい、気力充実、毎日楽しそうに家と職場を往復していた。
母親の名はママリア・ライドル、今は自分が生まれた事もあって家にいるが、その前は教会のお手伝いとして働いていたようだ。
兄の名前はクリス・ライドル8歳年上で街の学校に通っているようだ。
四人家族で暖かな家庭に生まれてこれた事を感謝した。
少しずつ自分で動けるようになってから家の中をまわってみたりもした。
台所、リビング、トイレ、お風呂場、両親の部屋、兄の部屋、空き部屋、倉庫のような部屋もあった。
所々に見たことの無いような造形の物体がある、魔法具と言われるもので人体に巡っているエーテルを魔法具に流すことによって使える便利な物らしい。
現代的とまでは言わないものの、生活するには不便ない技術があった。
動けるようになってから家の中という世界が広がったもののまだまだ子供、外に出る事もできないそんな中暇つぶしになったのは本だった。
子供用の絵本から始まり、読み書きを勉強できる本など、兄がいた事もあって本の種類は豊富だった。
「リリアは本が好きなのかしら?今度新しい絵本を買ってきましょう!」
そう笑顔で言う母親、それを聞いた父親は次の日、絵本を大量に買ってきて呆れられていた。
数年後、5歳になった、家の外をある程度出歩く許可も出た、治安は良い街のようで安心した、といっても家の庭の木の下で本を読む事が多かった。
近くに子ども達が遊ぶ公園のような場所があり、一度様子を見に行ったものの物凄く楽しそうに遊んでいる子ども達を見ると、その中に混ざろうと思えなかった。
「ひとりが楽!」
そう呟き一人庭で過ごす日々、そんな時出会った人がいた。
「こんにちわ!」
「!?」
突然話かけられて驚き反射でビクッと体を強張らせた、家の周りの柵から顔を出してこちらに話しかけてくる男の子。
「あ、ごめんびっくりさせちゃったね」
「な…何か?」
恐る恐る答えると男の子は笑顔で続けて話しかけてきた。
「僕はラヴィータ、ラヴィって呼んで!」
突然の自己紹介、名前を聞きたいわけではなかったが、名乗られたら名乗り返す、最低限の礼儀だ。
「私はリリア」
サラサラでクリーム色の髪に茶色の瞳、可愛らしい顔で子供モデルですって言われても納得の容姿だ。
ラヴィと名乗った少年は柵に手をかけてリリアを見る。
「何時もそこで本を読んでるね、本が好きなの?」
続けて話しかけてくるラヴィータ、リリアは思わず読んでいた本をぎゅっと抱きかかえた。
内心何時もこの場所で本を読んでいる事がわかるようなくらい覗きに来てたのか、もの好きだな、なんて思ったりもしたが、返事はしたほうが良いだろうと思い。
「うん」
と答えた。
「他の子と遊ばないの?」
首を傾げて質問を投げかけてくる。
「え、うん」
誤魔化すこと無くそのまま返事をした、あの集団の中に入れる気はしなかったし、入ろうとも思わなかった、今は本を読むのが楽しいしそれで良いと思っていた。
「そっか、じゃあ僕と一緒に遊ぼう!」
「は…?」
さも当然の流れのように誘ってくるラヴィータにリリアは驚きを隠せないでいた。
主人公:ずっとぼっち、でもそれを良しとしている