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ランドセルと社畜

作者: てへぺろ

正直いって、うちの会社はクソだと思う。


くだらない慣習ばかりだ。


まず朝礼が始業開始前からある。

しかもそこで社歌を合唱する。

背中で手を組んで、朗々と歌うことをいられるのだ。


「ああ~♪我らが愛しき弊社~♪お客様は神!お客様は神!」




その後、お辞儀の練習をみんなでする。

ちょっとでも違うと叱咤されるのだ。


「おいっ!お辞儀の角度は120度だっ!119度でも121度でもないっ!社長を見ろあの華麗な腰の折り方を!」


社員数少ない弊社は、社長も部長も係長もみんなこれを一緒にやる。




なんでこんなクソ会社に勤めてるかって?

週休三日で給料がべらぼうに良いからだ。

おかげで俺は都内に一戸建持ち、結婚して子供は二人、趣味のサッカーもエンジョイしてる。


何度か転職も考えたが待遇が良すぎて、心を売る方をとった。




そんな今日、新たなクソ慣習が追加された。


「今日から営業はランドセルでまわることになった。これで利益倍増と社長の夢でお告げがあったそうだ」


デスクに置かれた黒いランドセルを見て、俺は崩れ落ちかけたが家族を思い浮かべて耐えた。


「今日のお辞儀練習は、ランドセル背負ったままで!」


帰りたかった。


しかも恐ろしいことに、今日は重要顧客先へ社長と行く予定だ。





雨の中、超重要契約書が入ったランドセルを背負った社長はルンルンだった。


客先につくと向こうの代表取締役が車止めまで出てきて、にこやかに出迎えてくれる。

社長はいそいそと取締役の前に行き、お辞儀直前の構えをとった。


俺は気づいてしまった。

社長のランドセルのふたの留具が留まっていない。プラプラしている。


あのまま120度お辞儀なんてしたら、社長のランドセルがカパリと開き、滑り台よろしく書類が流れ出るだろう。


ここは、車止め。

下は雨でびちょびちょ。


「ふぉっちょおおおっ!」


俺は渾身のスライディングとともに、お辞儀する社長の頭の下にとびこみ、滑りおちてきた書類を仰向けでキャッチした。


速やかに立ちあがり、なるべく華麗にターンを決め、うやうやしく書類を客先に差し出す。


「こちら本日の資料になります」


どこからともなく拍手が湧き上がった。




次の日、社長はえらく上機嫌だった。


「今日から朝礼時にランドセルとの連携プレイ、スライディング書類受け渡しの練習を行う。君、前に出て例をみせるように」


転職しよう。


そう思った俺の肩に、部長がぽんと手を置いた。


「そろそろ週休四日になるらしいぞ?」


「ふぉっちょおおおっ!」

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