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グリムの魔法譚  作者: 水石 方一
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第七話  驚愕

ネイルに同行し、修行の旅に出たその日に幾つかの山を越え、日が沈み辺りはすっかり暗くなっていた。


「グリムよ、ここらで休もうか。」


ネイルが声をかけると、グリムは少し疲れた様子で答えた。


「分かりました。」


二人は山沿いの道から少し外れた所に荷物を下ろし、ネイルがテントを取り出してグリムに言った。


「辺りを見て、薪木になりそうな枝を拾ってきてくれ。」


そう言われたグリムは、枝を拾う為に近くの森へ入って行った。



「これの実験としては、いささか小規模ではあるが...問題は無いだろう。」


夜の暗い森の中に、闇に溶け込む真っ黒なローブに身を包み込んだ男が一人、その手には紫色の大きな宝石が付けられた人の身の丈程の杖が握られている。


男は、近くにあった熊の巣穴に杖を向けると、杖の宝石が怪しく光り、夜の森に不穏な気配が漂っていた。



明るい焚き火を挟み、ネイルとグリムは食事をしている。旅立つ前に、村で貰った肉とパン、焚き火で焼いて食べている。食事中、グリムは次の行き先をネイルに聞いた、


「師匠、今日はいくつも山を越えて来ましたが、次の街や村までは、まだ掛かるのですか?」


ネイルは食事の手を休め、答える。


「そうじゃな、大きな街までは、まだ2、3日掛かるのぉ、じゃからその前に、ここから少し行った所にある村に寄って食べ物を蓄えてから向かうつもりじゃ。」


グリムは、パンを頬張りながら心の中で、魔法の修行の旅として、意を決して出てきた初日、山越えだけで一日が終わり、少しだけ落胆していた。しかし、旅は始まったばかりだと自分に言い聞かせていると、ふと思い浮かんだ事をネイルに話す、


「今思うと、師匠と出会ってから旅に出るまで、凄く"とんとん拍子"だった気がします。」


その言葉にネイルは、少し笑いながら、


「ハハハッ、そうじゃな、じゃがそれはわしのせいじゃ。」


"とんとん拍子"は、自分のせい、という言葉にグリムは、驚いた顔をする。


「そもそも、わしのこの旅には、幾つか目的があってな、その一つに、"弟子をとる"というのがあったんじゃよ。」


「そうだったんですか。」


驚きながら話を聞くグリムに、ネイルは話を続けた、


「お前さんと出会ったのは、わしが旅に出て割とすぐじゃった、弟子を取ろうと旅に出た矢先、才能を持ったお前さんに出会った。運命じゃな。」


自分との出会いを語るネイルに、グリムは前から聞きたかった事を尋ねた。


「師匠は、出会ったときから、"僕に才能がある"って言ってくれますが、僕にはよくわかりません。どうして才能があるって思うんですか?」


その質問にネイルは、出会った時の事と魔法についての説明を始めた。


「お前さんに初めて会った時、お前さんは身体強化の魔法を使っていた、じゃがお前さんは、魔法どころか魔力の事も知らんかった。魔法とは、意識的に魔力を操る事、魔力があるとはいえ、無意識に魔法を使うというのは普通はあり得ない。」


ネイルの話に、グリムは疑問を持って、更に尋ねた。


「でも、それだけで、才能があるってなるんですか?」


グリムの疑問に、ネイルは首を横に振り続けた、


「お前さんの才能に確信を持ったのは、わしの言った魔法を一度で成功させた時じゃよ、あの時、確信に変わったんじゃ。」


グリムは、ネイルが自分と出会い、自分に魔法の才能があると分かった時点で、この旅はすでに決まっていた事に、心底驚いた。そして、-師匠って割と怖い人なのでは?-という意識が芽生えたのだった。



旅、二日目の朝。二人は荷物をまとめ出発の準備をする。


「グリムよ、そろそろ行くぞ。」


ネイルが、荷物を背負い声を掛ける。


「はい。」


そう言うと、ネイルの後に続き出発する。

山沿いの道を進み少しすると、村を囲む木の塀が見えてきた。塀の大きさを見る限り、さほど大きな村ではなさそうだった。二人が村の門まで近づくと、村の中が何やら騒がしい事に気が付いた。


「何かあったんでしょうか?」


二人は、門の前に立ち止まり、辺りの様子を窺っていると、門の上から声を掛けられた。


「村に、何か用か?」


声の方を見ると、門の上の物見櫓から若い男がこちらを見下ろしていた。門番のようだ。


「旅のもんじゃが、入れてもらえるかのぉ。」


ネイルがそう言うと、


「少し待ってくれ。」


と門番の男が言った後、ゆっくりと門が上がり始めた。すると、門が上がり切る前に中から、


「早く入って!」


さっきとは別の男が、催促してきた。グリムたちは、言われるがまま中へ入ると、すぐに門が閉まった。村の騒がしさといい、門番の様子といい、二人は村からの只ならぬ空気を感じていた。





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