第三話 初めての魔法そして衝撃
グリムに教える最初の魔法を悩むネイルは少々考え、決めた様子だった。そして、川の方向へ手をかざした、すると、川の手前に地面から土の壁が現れた。
「まずは、簡単な火魔法を的へ向けて放つ練習をしてみるかのぉ。」
ネイルは、そう言ったあと続けて魔法の詳しい説明をした。
「さっき教えたが、魔力を操る方法はイメージじゃ。そしてその魔力を魔法へと変えるのもまた、イメージじゃ、自分の魔力がどのような形になるのかを具体的に想像するのじゃ。」
説明を聞いたグリムは、的へ向けて手を伸ばし、魔力を自らの両手に集中する。
「グリムよ、魔力が燃えているイメージをするのじゃ。自分の手に集まっている魔力が火へと変わっていくイメージじゃ。」
ネイルに横から助言をされながらグリムが集中していると、グリムの両手に集まっていた魔力が次第に燃える火の玉に変わっていった。
「できました師匠っ!!」
「そのまま、向こうの的まで飛ばしてみなさい。」
グリムは、ネイルに言われるままに、今度は火の玉が的に向かって飛んでいくイメージを頭の中で想像する。すると次の瞬間、火の玉が的へ向かって飛んでいき、的に当たった。
「すごい、けど、、」
グリムは、初めて自分で魔法を使って、心から感動していた。しかし、なぜか疑問符を浮かべている様子だった。
「師匠、イメージどうりに火を打てたんですが、思ったよりも威力が無かったです。」
「それはじゃな、火を生み出して“的に当てる”事に集中しすぎて、火の玉自体に魔力をあまり集められなかったんじゃよ。」
自分の想像力が足りなかったんだと、納得しつつ反省するグリムに、
「じゃが、初めてにしては上出来じゃよ。一度の説明だけでこれだけできるんじゃから、やはりお前さんには、才能がある。」
グリムはそれから、繰り返し魔法を放ちみるみるうちに上達していった。そして修行一日目は夕暮れ前に終了した。
「もう暗くなるからのぉ、今日はここまでじゃな。」
ネイルが修行を切り上げると、
「ありがとうございました師匠っ!!また明日も来てくれますよね?」
グリムが少し不安そうに聞くとネイルは、
「もちろんじゃ、いったじゃろう?しっかり教え込むつもりじゃと。」
その言葉を聞いて安心したように、グリムは笑顔で帰っていった。グリムを見送りながら、たった一日の修行での成長にネイルはかなり驚いていた。
「森を遊び場にして、自然と身体強化ができているうえに、一日で魔法を打てるようになるとは、末恐ろしい子じゃな。」
「ただいまー。」
修行を終え、元気よく帰宅したグリム。するとニーナは、
「おかえり。もうすぐごはん出来るから、手を洗ってきなさい。」
夕飯の準備をしながら、グリムに声を掛けた。そしてグリムは、帰ってきた勢いのまま、手を洗いに行った。
ニーナが、テーブルに夕飯を並べているとき、グリムが、
「お父さんは?」
と聞いてきた。するとニーナは、
「もうすぐ帰ってくるわよ。」
そう言われグリムは、“そっか”といった表情を浮かべそそくさと食卓についた。するとその時、扉が開き、サウロスが帰ってきた。
「ただいまー。」
サウロスが疲れた声で言った。
「おかえりお父さん、お疲れさま。」
「お父さんおかえり。」
ニーナとグリムが、サウロスに声を掛けると、サウロスはそのまま、手を洗い食卓につく。そして三人は夕飯をとり始めた。
「グリム、今日は何をしてたんだ?」
サウロスがグリムに今日一日のことを聞くと、
「今日は、魔導士に弟子入りして、修行してたよ。」
グリムがサラッと言った言葉に驚き、二人の食事の手がピタッと止まる。
『弟子入り!?』
サウロスとニーナが声を揃えてグリムに、聞き返す。
「弟子入りって、誰の!?」
ニーナがグリムに詰め寄り聞く、詰め寄られ驚きつつ、グリムが今日の出来事を説明する。
「“助けてくれた魔導士のおじいさん”かぁ。」
グリムの話を聞いて、サウロスは、落ち着きつつ話を整理しようとしていた。
「グリムに魔力があったなんて、」
ニーナは、驚きすぎて、若干冷静気味でもあった。グリムの衝撃発言に夕食は一旦中断されていた。
「まぁ、これから修行を続けるなら、そのうち、挨拶しないとなぁ。」
サウロスとニーナは、後で冷静に考えようと、食事を再開した。そして、一日の終わりに衝撃すぎる事実を聞かされ、グリムに対する一番大きな不安が増えたのだった。