第二話 魔力を感じる
「師匠、早速魔法をおしえてください‼」
出会って間もなく弟子入りしたグリムは、ワクワクしながら、修行を求めた。一刻も早く魔法を使ってみたいという未知への好奇心で満ち溢れていた。
「急がずとも良い、しっかりと教え込むつもりじゃからのぉ。」
ネイルがそう言うと、後ろへ少し飛び距離をとった。
「早速ではあるが、少し組み手をしよう。」
そう言われ、グリムは戸惑う、
「組み手って、何ですか?」
「組み手というのは、一対一で戦ってみることじゃ、実戦形式の稽古のことじゃよ」
いきなりの実戦という言葉に、戸惑いつつも、グリムは意を決し、ネイルに飛び掛かる。
グリムの攻撃を軽くいなしつつ、ネイルは、驚いていた。
(この少年、魔力に関して、何も知らないようではあったが、この身のこなし、無意識に魔力で身体強化しているのか、魔力も多いようじゃし末恐ろしい子じゃな。)
ネイルは、グリムの中に魔力を感じ取ってから、その魔力量に育て甲斐があると感じていた。
「まぁ、まずはこの辺でいいかのぉ。」
攻撃をすべてかされ、へとへとになっているグリムにネイルが尋ねる。
「グリムよ、お前さん、普段何をしておるのじゃ?」
息を切らせながらグリムは、
「この森の中を探検してます。」
それを聞いたネイルは、少し、納得をしたような表情を見せる。グリムがなぜ身体強化を自然とできているのか、何となく理解できたからだ。
「お前さんには、才能があるようじゃの。」
「本当ですか‼」
“才能がある”その言葉を聞いてグリムはとても喜んだ。
グリムが家を飛び出して行ったあと、サウロスとニーナは、二人でお茶を飲みながら一休みしていた。
「グリムは毎日森に探検しに出かけて、ボロボロになって帰ってきて、元気なのは嬉しいけど、やんちゃ過ぎるのは、将来が心配ね。」
ニーナが複雑な心境を話すと、
「心配することないさ、グリムは毎日森で遊んで、身体能力が凄く高く育ってるから、ちゃんと剣を学べば、立派な騎士になれるって。」
サウロスは、慰めるように言った。それを聞いて、ニーナは少し安心したようだった。サウロスのように、立派な騎士になってくれればと、ニーナは願うのだった。
「さてグリムよ、まず魔法とは何か、魔力とは何かを教えよう。」
グリムの才能をみて、師匠としてのやる気を出したネイルが本格的な修行を始めようとしていた。
「お願いします!師匠!」
グリムもまた、待ちきれない様子の中、ネイルが魔法の説明を始めた。
「魔法とは、魔力を使い様々な現象を起こす事を言うんじゃ。そして、魔力とは、魔法を行使するのに必要なもので、魔導士がそれぞれに持っている力じゃ。」
魔法の説明に、胸を躍らせつつも大人しく話を聞いているグリムに、ネイルは説明を続ける、
「魔導士の持つ魔力量には、個人差があるが、扱える魔力量は、修行すれば増やすことができる。じゃから、最初は、簡単な魔法を覚え、魔力量を増やす修行から始める。」
「はいっ!!師匠!!」
ついに魔法が使える喜びに、元気よく返事をするグリム。
すると、ネイルが、徐にグリムの頭に手を置いた。
「まずは、自分の中の魔力を感じるところからじゃな。」
そう言うと、グリムは、ネイルから自分の中に不思議な感覚が流れてくるのを感じた。
「これが魔力ですか?」
グリムが聞くと、
「そうじゃ、この魔力を自分で操れるようになるのじゃ、魔力が体を巡っている様子をイメージしてみよ。」
そう聞いて、グリムは目を瞑り、
(流れる...流れる...)
頭の中で一生懸命イメージした、すると、自分の中の魔力がはっきりと感じ取れるようになった。
「上出来じゃな、そのイメージを無意識にできるように、毎日繰り返すのじゃ。」
(感覚を掴むのが恐ろしく速いのぉ。まぁ、無意識とはいえ、身体強化ができていたからのぉ、この分だと魔法を覚えるのも、時間は掛からんかもしれん。)
グリムの成長速度にネイルが驚いている中、グリムは、自分の中の魔力を操る感覚に興奮していた。
「これが魔力!凄い!!凄いです!!」
「魔力を感じて、操作する感覚を掴んだなら、次は簡単な魔法を使ってみるか、何がいいかのぉ。」
最初に教える魔法を悩むネイルに、
「師匠!早くやりましょう!」
早く魔法を使いたいグリムが修行を更に急くのだった。