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グリムの魔法譚  作者: 水石 方一
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第一話  出会い

 ー 人を生かすのは、冒険(もくてき)である 

       故に人は、"未知"を恐れ、憧れる。 ー


「がんばれ!ニーナ!!」


息を荒げ、苦しむ女性に、男性が懸命に声をかける。

すると、新たな命が産声をあげる。


「元気な男の子ですよ!」


子をとりあげた助産婦が声をかける。

産まれた我が子を抱え、涙ぐむ母ニーナに寄り添う父サウロス。


「俺たちの息子だ。」


「ええ、名前はどうしましょう、、。」


夫婦は、目を合わせ考える。そんな時、サウロスの目に一冊の本が映る。すると、サウロスは微笑み言った、


「グリムにしよう!」


「それって...」


ニーナが少し驚く。その名前は、夫婦が好きな物語の主人公の名前だった。


「あの本のような、たくさんの冒険をして、逞しく育つように...、どうかな?」


「そうね、いい名前だわ。」


夫婦は、我が子に、(グリム)と名づけた。




「グリム〜!...もぅ、どこへいったのかしら?」


母ニーナが、庭へ向かって大きな声で呼んでいる。


「どうしたんだ?」


庭で剣の鍛錬をしていた父サウロスが尋ねる。

少々呆れ気味な声でニーナが口を溢す。


「ご飯ができるのに、あの子ったらまたどこかへ行ったみたいなの。」


「また、森に探検しに行ったんじゃないか?」


サウロスが言ったその時、上から子供が降ってくる。


「母さん、今日は鹿の群れがいたよ!」


獣道を冒険していたのか、服に木の葉や小さな枝やらがくっついたボロボロな格好をした少年が元気良く報告する。


そんな姿を見て、


「グリム、今日は随分とボロボロだな!」


サウロスが軽く笑いながら声を掛ける。


「今日はいつもより奥に行ってきたからね!」


グリムは、自慢げな表情で言っている。すると、


「もう!!、そんなことはいいから、早く手を洗って着替えてきなさい!」


そう言われると、グリムは、そそくさと家の中に着替えにいった。


「あいつも、もう7歳か、元気に育ってるなぁ。」


そう言うサウロスに、ニーナが、


「元気過ぎるわよ。それに、"まだ"7歳よ!」


そう言って、昼食の準備に戻って行った。


あれからグリムは、7歳になり、日々近くの森を遊び場にする元気が有り余る、好奇心旺盛な少年に成長していた。



家族3人で食卓を囲み昼食をとる。するとサウロスが、


「そろそろ、グリムも剣の鍛錬を始めてみるか。」


と、グリムに聞いてみた。その言葉を聞いたニーナが、


「まだ早いんじゃない?」


と、心配そうに言うのだった。


「剣の扱いを覚えるには、慣れる為にも少しでも早い方がいいさ。」


サウロスはそう言いながら、グリムの方見ると、少し複雑そうな表情を浮かべている。


「僕、剣にはあまり興味ないよ。それより、森の中を探検する方が好き。」


グリムの答えに、


「そうかぁ」


と、残念そうに、サウロスが肩を落とした。



昼食を終えると、グリムは、


「行ってきまーす!」


と、勢いよく家を飛び出して行った。 


「ちょっとグリム〜!、暗くなる前に帰るのよ〜!」


ニーナが大きな声で言うと、返事もなく行ってしまった。

(ちゃんと聞いてるのかしら?)と心配しつつも、いつもの事とも思っていた。



森の中を駆けるグリムは、(どこまで行こうかな)と、ワクワクしながら考えていた。すると、ひらけた河原を見つけた。


「ここは、初めてくるな。こんな場所があったんだ。」


辺りを見回していると、


ー グォーーッ!ー


大きな声が聞こえ、はっ!? と驚く。そこには、見たこともない大きな熊がこちらを威嚇していた。

恐怖でどうしたらいいか分からないグリムに、その熊は、勢いよく襲い掛かった。


「うわぁー!!」


怖くてとっさにグリムが瞑った、その時、

ドォーーンッ!!と大きな音と共に、


「危なかったな、怪我はないか?少年よ。」


と、声を掛けられた。グリムは恐る恐る目をあける。

そこには、見知らぬ老人と、倒れている熊が見えた。

グリムはその光景を見て、安堵と驚きで腰を抜かしてしまった。


「あなたは、誰ですか?、あの熊を、倒したんですか!?」


驚きながら質問をするグリムを見て、


「まずは落ち着くのじゃ、少年。」


そう言われて、


「すみません、びっくりしてしまって。」


そう言うと、グリムは少し落ち着きを取り戻した。そして、再度老人に質問をした。


「助けもらってありがとうございます、あなたは一体何者なんですか?」


グリムの質問に、老人が答えた。


「わしは、魔導士じゃよ、旅をしててこの森に入ったら、お前さんが、熊に襲われとったから助けたんじゃよ。」


その答えに、グリムは疑問があった。


「魔導士ってなんですか?」


グリムがそう聞くと、


「魔導士というのは、魔力を持っている、魔法を使う人間のことじゃ。」


その事を聞いたグリムは、目を輝かせながら、


「そんな人がいるんですか!」


と、かなり興奮していた。そんなグリムを見ていると、老人がふと、ある事に気付いた、少年から感じるある気配に。


「少年、お前さんも、魔力を持っとるようじゃの。」


老人にそう言われ、グリムは、すごく驚いた。


「そうなんですか!?、じゃぁ、僕にも魔法が使えるんですか?」


さらに目を輝かせるグリムに、


「修行し、魔力の扱いを覚えればじゃがな、それにはー」


「教えてくださいっ!!」


グリムは、老人の言葉を遮りながら、食い気味言った。


「それじゃぁ、わしの弟子になるか、少年。」


「はいっ!」


二つ返事で了承したグリム。

流れのまま、弟子を取った老人が思い出した。


「忘れとったが少年、名前は?」


名前を聞かれ、自分も名前を聞いていないことに気づき、


「グリムと言います。おじいさんの名前はなんですか?」


と聞いた、


「わしは、ネイルじゃ、弟子になるからには、師匠と呼びなさい。」


「はい!おじ...師匠!!」







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