親睦会
どこも行きたいところもなかったため、学園から1番近い俺の部屋に集まることになった。
漫画とラノベの本棚がいくつもあり、暇つぶしにはもってこいの場所である。
2人とも本棚を見るなりすぐに、
「「読みたくなったらいつでも来ていい?」」
一言一句違わず同時に言った。
俺はそれに圧倒されつつも、2人で同じことを同時に言ったことが面白く、笑いながら、
「いつでもいいよ。おいで」
と無意識で言っていた。2人とも喜んでくれたから良かったかな。
「会長は親睦を深めろって言ってたけど、実際には何すればいいんだろう。というか、生徒会に入ってみたものの正直何をすればいいか実感わかないし、やりたくないなぁ~」
怜が話を振ってきた。
「何するのかいまいちわかんないから、その時になるまでは何も考えずにいようかな。授業どうしよう。みんなは勉強はしたい?俺はしてもしなくてもいいや」
「悠は自信あるの?授業参加しなくても上位三人に入れるの?」
咲がきいてきた。
「俺は色々あって勉強は終わってるからいいかな。しかも会長の話しぶりから、執行部の中に授業を受けてる人はいないよ」
「会長はそんなこと言ってた?怜はなにもわかんなかったよ」
「会長はさ、優秀なやつは授業を受けてないって言ってただろ?自分たちのことをはっきりと優秀な奴らって言ってる時点で、誰も受けてないことがわかるさ。しかもあれだけ先生という存在を無下にしてたしね」
「言われてみればそうかぁ~」
「執行部の暗黙の了解として優秀の線引きがあるんだよ。その一つが、授業を受けずに上位三名に入れるっていうのがあるんだと思う。多分授業を受けたら先輩達には追い付けない。だから、受けられないってわけ」
「じゃあ自分で何とかしろってことかぁ。頑張るしかないか」
「まぁ、そうなるね」
俺は、会長の話の中にいくつか執行部としての学園生活のヒントを散らしていたと思っている。生徒会室に登校確認をすることにも何か隠されている気がするが…
「親睦深めるって何すればいいんだよ~」
咲が僕のベッドに倒れながら叫んでいた。
しかし何を言っているのか頭に入ってこなかった。
原因は二つ。異性に免疫がない俺のベッドに女子が寝ていること、スカートの中が見えそうという二つである。
中を見ていいのか、紳士らしく目を逸らすか。
「悠よ考えろ。パンツを見て何になる。そんなのはただの布ではないか。大切なのはその中だろ。とある女性声優が言ってただろ。今は耐えろ」
理性が働き俺は踏みとどまれた。
しかし、心の声は一切紳士ではなかった。
「この学園に入った理由でも話す~?」
「そうしよっか」
と怜と咲で勝手に話が進んでいた。
「じゃあ怜から話すね。怜はね、家から早く出たくてこの学園に来たの。二年前に妹が生まれて親は二人ともそっちばっか可愛がっちゃって、怜には無関心になって家に居場所がなくなったんだよね。早くひとり立ちして家から出たかったから、専門職に就けるようになれるからこの学園に入ったの。そんな感じ。咲は?」
「私は神社の娘なの。でも、三人の兄と四人の姉がいて私は末っ子。神社の人手は足りてるからって、無理やり親に入れられただけ。何も自分の意思はないんだよね。だから執行部に入るとき、最初は頭が真っ白になったけど、少しワクワクしたんだよね。自分のしたいことが見つかるかもって。まぁ正直、何するかよくわからないけどね」
咲は少し笑っていた。
「最後は俺か。俺の新入生総代の話覚えてる?航空技術者になりたいっていうやつ。五歳の時に両親が飛行機事故で死んじゃってさ、身寄りがなくて親戚の間をたらい流しにされてたんだよ。この学園の学費もだれが払ってくれているのかもわからない。だから早く職に就きたいし、飛行機事故を少しでも減らしたくて、ここの理工学科狙ってたんだよ。でも無理やり生徒会に入れられたからその夢はついえたからね。ごめんね、暗い話して。でも執行部として頑張るよ」
明らかに二人の顔は曇ってしまった。
でも俺には何も声をかけることはできなかった。
部屋の雰囲気が暗いまま、時間は過ぎていった。
その時間は、各々本棚から漫画を取り出し読んでいた。
帰り際二人とも何かを言いたそうな顔をしていた。
何というか、もじもじしていた。
「二人ともどうしたの?落ち着かないみたいだけど」
すると二人は一度深呼吸をしてから、
「「明日泊まりに来るからね。いい?」」
「どうぞ、ご自由に。パジャマとか持ってくるならね」
言ってしまった。
何も考えず即答してしまった。
女の子とお泊り会なんて男子高校生の夢ではないか。
俺はラブコメの主人公なのか?こんな可愛い子たちと、会って二日なのにお泊り会なんてしていいのか?
ポーカーフェイスが得意でよかった。
顔には出さない。
というか顔に出したら下心がバレてしまう。
必死に耐える事しか考えなかった。
そのため、二人が何かを言っていたが、何一つ覚えていない。
しかし、二人とも喜んで帰ってくれたので一安心した。
その夜、俺は緊張と興奮で一人盛り上がっていた。