入学
入学早々、世の中の理不尽さを知った。
どんなに頑張っても自分に選択権は最初から無かったのである。
そして入学したことを後悔した。
私立能職学園
高卒で十分な専門職の知識をつけられ、就職できる学校である。
そんな学校に今日入学する俺、日野悠は絶賛緊張中である。
今執り行われている真っ最中の入学式、そこで新入生総代として挨拶をしなければいけない。
「次に新入生総代、日野悠君お願いします」
無慈悲にも自分の番が来てしまった。
「はい」と返事をし、椅子から立ち壇上に上がった。
会場内の視線が一気に自分に集まっていることを肌で感じた。
それもそのはず、この学園はただでさえ入学が難しい。
そのうえ、学園の新入生1000人の頂点に立っているのがこの俺だからである。
一度深呼吸をし、落ち着いたところで挨拶を始めた。
「雲一つない今日、僕たち1000名はこの私立能職学園に入学することができました。僕は航空機技術者としての知識をつけるため、この学園に入学しました」
そのとき入学式に出席していた先輩達がざわめいた。
その後何も問題なく挨拶は終わり、自分の椅子に戻ることができ一安心した。
「最後に在校生代表挨拶です。生徒会執行部会長、和泉凛さんお願いします」
生徒会長が壇上に上がったとたん、会場内の空気が一瞬にして引き締まった。
「生徒会執行部会長の和泉凛だ。校長に頼まれたから、新入生にこの学園について説明しよう。この学園は独立自治の学校だ。そのため、どの国の法律も私たちの学園生活に支障をきたさない。生徒の法律はただ一つ、自分たちの障害は自分たちで排除する、ただそれだけだ。先ほども言ったようにこの学園はどの国も関与することができない。そのため金も違う。お前らの学生証には毎月のテストの順位によってポイントが支給される。もちろん上位者の方がもらえるポイントが高い。そのポイントで学園生活を楽しめ。新入生は入試の順位によってポイントが配布されているはずだ。あとで確認するんだな。最後に、学園の10の学科について説明しよう。我々の学園には、理学、理工、医療、看護、スポーツ、教育、護衛、美容、調理、情報と10の学科があり、入試上位者から順に好きな学科が選べるから考えておくように。以上。これで私の話は終わりだ」
新入生はみな顔がポカンとしていた。それはそうだ、あまりにも情報量が多すぎる。
まとめると、
一、法律はないが、「自分たちの障害となるものは排除する。」ということ
二、学力テスト?のようなもので順位が決まり、それに応じたポイントが支給され生活する
三、学科に分かれて専門的な知識を身に着けていく
とこんなところか。
入試上位者から学科が選べるってことは、首席の俺は確実に理工学科へ入れると確信した。
生徒会長が壇上から降りようとしたとき、何かを思い出したのかマイクまで戻った。
そして、
「1つ言い忘れていた。新入生の日野悠、沢城咲、小松怜の3人は入学式が終わり次第生徒会室に来てくれ。お前たち3人はみんなと別行動だ。よろしく」
俺は何が起こっているのか一切状況を把握することができなかった。
そして嫌な予感がしていた。