眠れるあなたと牛乳を
「大学の友達がさ、いまだに身長が伸びてるんだって。だからさ、俺も牛乳毎日飲もうと思って。」
身長163センチの彼はそう言って、友達の言葉に望みをかけて、毎朝牛乳を飲む。そんな彼を子どもっぽいなと思いつつ微笑ましく思っていた。
出逢いは大学のバスケットサークルで私の一目惚れだった。身長の高い人たちのなかで逆に目立つ彼。試合中、背の高さでは負けていても気持ちは負けないというのが伝わってきて、目が離せなかった。
声をかけたのも私から。大学の帰り道、ダイエットのために歩いていると言っては、わざわざ遠回りして彼の家の前を通った。
そうこうしているうちに付き合いだし、そのまま彼の家に転がり込んだ。
どうやら、付き合いだした頃の夢を見ていたようだ。
朝、目を覚ますと、いつもどおり隣で彼が寝ている。安らかな寝顔を見れたことに満足し、ベッドをあとにして、朝食の準備を始める。
二枚の食パンをトースターに入れ、卵を二つ割ってフライパンを流し込む。そして牛乳は欠かせない。
やがて目玉焼はできあがり、朝食の香りが漂い始める。でもまだ彼は起きてこない。
当たり前だ。
彼の牛乳に毒を盛ってから何日たったのだろうか。