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奇跡の在り方  作者: 昴流
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8話

 天界にあるビルの一室。ソードがスレイブに報告書を提出している。その報告書をみたスレイブは眉を顰めソードに問いかけた。


「そうですか、見られてしまったのですね。」


「はい、理由は分かりませんが急に姿が見えた様です。」


 ソードは本当に分からないといった表情をしている。


「原因はおそらく彼女本人でしょう。」


「どういう事ですか?」


「彼女は死ぬ気なのかも知れません。」


「自殺ですか?」


 スレイブは小さく頷いた。


「しかし、それと私の姿が見えた事に何の関係があるのですか?」


「彼女が自殺するかも知れない事には驚かないのですね、何となく気づいていましたか?」


「言動や表情から何となく、報告書に記載はしていませんが自殺という言葉を出したのは本人ですから。」


「そうですか……。人間は死期が近づくにつれ私達に近い存在になって行きます、その過程で私達が見えるようになるのですが。」


「彼女の場合は早すぎる。」


「そうですね。」


「死神手帳には7月20日とありますが。」


「それはあくまで天命をまっとうした場合の日時です。自殺する人間の事は手帳では分からないのですよ。自殺者は自らの意思で生命を経つのですから。」


「彼女が自殺したら、私はどうなりますか?」


「そうですね、もう一度別の人間についてもらうことになるでしょう。自殺者の魂は天界へと導けません。なぜなら……。」


「自殺者は魂になれない、死んだ瞬間この世から消えてしまうからですね。」


「そうです……永遠に。」


「永遠に……。」


「今回はイレギュラーが多すぎますね。早急に担当を変えてもらいましょう。次は間違いなく男性の魂にね。」


「彼女は?」


「まだ自殺すると決まった訳ではないですが、初めて担当するには問題が多すぎましたね、私が引き継ぎましょう。」


「問題ですか……。」


「貴方にも問題ありだと私は見ているのですが。」


「私にですか?」


「ええ、彼女に特別な感情を抱いているのではないですか?」


「特別な感情?」


「そうです、恋心を。」


「恋心?!私が人間に恋など、有り得ません!」


「そうですか……今はその言葉を信じましょう。しかし、担当は変えた方が懸命でしょう。」


 ソードはスレイブを睨みつけた。


「納得出来ません、最後までやらせてください。」


「何故そこまで?新人研修は他の魂でも良いのですよ?」


「それは……、自分にも分からないのですが、最後までやり遂げたいのです。」


 スレイブは大きな溜息をついた。


「分かりました、もう少し様子を見ましょう。まだ何も確定していませんしね。」


「ありがとうございます!」


 ソードはまるで子供の様に無邪気に喜んだ、それは今までに見た事ない様な表情だった、まるで人間の様な。スレイブはその表情にソードが桜庭葉子に抱く思いに確信を持った、報われぬ思いに少し胸が痛むスレイブであった。


 つづく


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