1話
日差しが眩しく、清々しい朝の光に包まれている。
沢山の人が行き交い、急ぎ足で歩いている。
丁度通勤、通学の時間のようだ。
「葉子ちゃん!学校行こう!」
元気な少年の声が聞こえる、その声に答える様に少年が呼びかけた家から中年男性が姿を見せた。
「おはよう、正彦くん。」
「おじさん、おはようございます。」
「ちょっとまっててくれ。」
「はい。」
そう言うと中年の男は家に入り、少し経つと少女を乗せた車椅子を押して家から出てきた。
車椅子の少女の名前は桜庭葉子、車椅子を押している男性は葉子の父、桜庭庄之助である。
そして、葉子を迎えにきたこの少年は葉子の幼なじみで名前は谷山正彦。
蓮山小学校に通う小学6年生。
正彦は葉子に笑顔で手を振り。
「おはよう、葉子ちゃん。」
「おはよう…。」
葉子がそう元気無く挨拶すると。
「こら、もっと元気よく挨拶せんか。」
庄之助に言われ、しぶしぶ葉子は少し大きなこえで。
「おはよう。」
と挨拶した、それを聞いた正彦は笑顔で頷いた。
「それじゃ、行こうか。」
「いつもすまないね。」
庄之助は正彦に、葉子の乗る車椅子を託した、
「いいえ、大丈夫です。いってきます!」
正彦は葉子の乗る車椅子を押して学校へと向かった。見送った庄之助はこれから職場へと向かうようだ。
葉子と正彦の通う小学校は、葉子の家から歩いて15分程の場所にある。道中、正彦は葉子に話しかけるが葉子は頷くだけで全く話さない。
「大丈夫?辛いなら戻ろうか?」
正彦はいつも以上に大人しい葉子が心配になった。
「違うの、正彦くんに謝りたくて。」
「どうして葉子ちゃんが謝るの?」
「だって、ただ幼なじみってだけで、毎日こんな事を……。」
「どうしたの急に、ほらもうすぐ学校だよ。」
「うん……。」
正彦は葉子が言いたい事がよく分からなかった。正彦にとって毎日の送り迎えは苦ではなく、当たり前の事をしているだけなのである。
2人は校門をくぐり、学校へと入っていった。
つづく