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奇跡の在り方  作者: 昴流
19/23

18話

「……とにかく、過去へ飛ぶのは次で最後です。これ以上干渉するととんでもない事になるかも知れませんよ。」


「はい…。」


「いや…、もしかしたらすでに…。」


「え?」


「いえ、なんでもないです。そろそろ自室に戻り、力の回復に専念した方がいいですね。」


「はい、わかりました。」


「ゆっくり休んで下さい。」


「ありがとうございます、失礼します。」


ソードはよろよろと自室へ戻った。


過去の谷山正彦に未来の桜庭葉子が接触した。この事が過去にどの様な影響を与えるのか。スレイブには分からなかった。もう一度だけなら……。それはスレイブの考えが甘かった。過去は少しづつ変化しはじめていた。そして、ソードの力ももうほとんど残っていなかったのだ…。






翌日7月10日、葉子の病室。


部屋からは葉子と名津美の楽しげな笑い声が聞こえてくる。


「葉子さん、ここ数日は別人みたいね。」


「そう?」


「以前はそんな笑顔見せてくれなかったもの。」


「そうだったかしら?」


院内放送が流れる。


「ごめんなさい葉子さん。私行かなきゃ。」


「ええ、忙しいのにありがとうございます。」


「また、後でね!」


「はい。」


名津美は急いで病室を出ていった。名津美と入れ替わる様にソードがやって来た。


「お待たせしました、葉子さん。」


「ソードさん!」


「早速行きましょうか。」


「身体は大丈夫なの?」


「心配には及びません。しかし、今回で本当に最後です。いいですね?」


「ええ……。」


「では、行きましょう。」


「まって…!一つ聞きたいんだけど。」


「なんでしょうか?」


「ソードさんは…どうしてここまでしてくれるの?」


「それは…、死ぬ前に貴女の願いを…。」


「それだけの為に?」


「……すいません、それは建前です。本当は自分の為なんです。」


「ソードさんの?」


「貴女を見てると…胸が締め付けられて苦しいんです。」


「え?」


「先輩には、私が貴女に恋をしていると言われました。」


「私に?」


「死神は恋などしないと言っておきながら、恥ずかしい話なんですが。…私は貴女が好きです。だから、貴女の願いを最後まで叶えてあげたいんです。」


「こんな私を…?でも私は…。」


「分かっています…。変な事を言ってすいません。それに私は死神、貴女は人間です。例え未来があろうと結ばれる事はないです。」


「ありがとう。」


「え…?」


「嬉しいわ。好きなんて言われたの初めてだもの。」


「…よかった、どんな顔されるか不安でしたから。勇気を出して伝えてよかったです。例え…報われないとわかっていても。」


「ソードさん…。」


「次は貴女の番です。」


「え?私の番…?」


「正彦君に伝えてみてはどうですか?貴女の気持ちを。」


「え…?そんな、駄目よ!だって…私は正彦くんにとってユウコだもの!葉子じゃないもの…。」


「本当の事を話してみては?貴女は昔から正彦君の事を好きだったんでしょう?」


「ソードさん、一体急にどうしたの…?」


ソードの目から暖かいものが流れていた。ソード自身はそれに気づいていない。


「葉子さんは昔いじめにあっていたんでしょう?歩けない、車椅子だと言うだけで。」


「どうして…?誰にも話してないのに…。」


「先輩が調べてくれました。正彦君の事も。」


「正彦君の事も…?」


「貴女はいじめを苦に不登校になり、そのまま入院しました。」


「ええ。」


「その後、学校では正彦君がいじめの対象になったのです。」


「正彦君に?!どうして…?!」


「貴女と仲が良かったから、ただそれだけで。」


「そんな…。」


「そして正彦君はいじめを苦に自殺していました。」


「嘘?!正彦君が自殺…?!」


「本当です。」


「そんな…?!だから、過去の正彦君に元気が無かったのね?!謝らなきゃ…、謝りに行きたい…!」


「過去へ行き、全てを話しましょう。」


「お願い…!」


「貴女の胸のつっかえを全て取り除いて欲しい。」


「ありがとう…。」


ソードは葉子の額に手をかざした。禁書が光輝き辺り一面をその光が包む。


つづく

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