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プロローグ
子どもは夜空を見上げた。
視線の先には満点の星。零れ落ちそうなその煌めきに、白い息と共に溜め息が漏れる。
ひとりで宵闇の中に佇むその幼い姿はかなり異様だろうが、周りには誰もいないのでそれを不審に思われることはなかった。
冷えた両手に息を吐き掛けながら、ただただ星たちを見つめる。
名前は与えられなかった。
愛情を受けたこともない。
それがどんなものかもわならない。
そもそも、そんなものが存在するのか分からない。
人間以外のものには人にしか見えないだろうその子どもは、人からは人として見られることはなかった。
それは、その色を持って生まれた瞬間に定められていた運命か。
夜が待ち遠しかった。
夜空に瞬く星々は、まるで会話を楽しんでいるように見えた。
耳を澄ませるように、毎夜彼らを見上げて過ごした。
そんなことが、子どもの唯一の楽しみだった。




