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黒い家  作者: そら07F
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木山 ③

木山(きやま)が語った水戸野(みとの)の姓には(あかり)も覚えがあった。


灯達がこの四季彩町(しきさいまち)に越して来て、

挨拶に行った内の一軒だった。

ひときわ珍しい姓なので印象に残ったのだ。


でも、

そこに居たという子供は、灯の記憶にはない。


別に水戸野さんという家庭があるのかも知れない。

その可能性を灯が考えていた時、

見透かしたように木山は別の地図を広げながら


「他に水戸野という姓の家は今の四季彩町には居ないよ…」


灯はギョッとする。

心の中を覗かれた様な気さえしたのだ。


そのまま視線をおとして広げられた地図を見ると

『昭和62年 四季彩町全図(しきさいまちぜんず)

と書かれた今年発行の新しい地図だった。


そこには住人がいる全ての家に姓が書かれてあった。


隈なく探すが、

(くだん)の水戸野さん以外に見つける事ができなかった。


それともう1つこの地図には


水戸野の家と、灯の家である関根(せきね)の姓が書かれた表示には、上から赤筆で×印がしてあった。


そこを木山に指摘すると、人が消えた家庭であると教えてくれた。

灯は少しだけ嫌悪感を募らせるが。


しかし


「こうして記さないと私の死後、誰にも伝える事ができない。そもそも消えた人の痕跡は、この部屋以外の場所に保管したら消えるんだよ…」


と言い泣き出しそうな程に悲しい顔をする木山に、

灯は、それ以上何も言えなくなってしまった。


木山は誰に話しても理解されない

『人が消える』

という認識を自分だけがもち、

その為に周りから疎まれ距離をとられている。


木山の悲しい表情からは、

言葉では言い表せられない位の悲しみや、

やるせなさが伝わってきた。


それが灯に伝わり、

言葉を失ってしまったのだ。


それにしても、

どうしても引っ掛かる事が灯にはあった。


何故木山だけには『人が消えた事』が認識し、

写真などを残す事ができるかである。


灯は、それとなく木山に疑問を投げ掛けたが

写真などが消えないのは、

恐らく部屋にある御守りや御札のどれかが作用しているのではないかとの事。


木山自身、手当たり次第集めた物でどれも効果の程はわからないという事だった。


また『何故認識できるか』の質問ははぐらかせれ、

しつこく聞いても

「今はまだ話せない」

と言い口を閉ざしてしまった。


最後に木山は


「これらの話を信じて…私を信じて妹を救い出す勇気と覚悟はあるか…?」


と灯に聞いてきた。


正直まだわからない事だらけの灯は返答に迷っていた。

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