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黒い家  作者: そら07F
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母親 ②

灯は自室に入ると、照明もつけずに2段ベッドの下段に横になる。

茜が入院するまでは2段ベッドは灯が上を、茜が下を使ってた。


灯は枕に顔を埋め声を押し殺して病院に続き、また泣いた。


茜1人抜けるだけで、家族がどんどんバラバラになる。

灯にはどうする事もできるはずもない

圧倒的な無力感が襲っていた。


この家で出来る事といえば茜の為に部屋を綺麗に保つ事だけだった。

涙はすぐには止まらなかった。


突然、部屋の扉が乱暴に開けられた。


涙を顔を擦る事で無理矢理止めて、

部屋の出入り口を見ると、廊下に立っていたのは、

母に連れられた先程の自称霊能力者である。


相変わらず興奮気味の母は


「ここが茜の部屋です!机はこちらでベッドはー」


などと部屋の紹介をしている。


「!!ちょと…お母さん!これ、どういう!?」


灯はベッドから飛び起きて母に食って掛かる。


家族ならまだしも、茜との部屋に訳の分からない人間が土足で上がり込む様な真似をされたのが堪らなく腹立たしかった。


しかし母はそんな灯を一蹴し、根拠のない持論を展開する。


「あなた…茜が大事じゃないの!?この人が助けてくれるの!!治してくれるの!!邪魔しないで!!それともあなたに何か出来るっていうの!?」


母の持論の根は


〃茜を取り戻す事〃


灯に反論の余地などない

たかが小学生に出来る事など、幾らもないのだ。


そんなやり取りが目の前で繰り広げられてるのにも関わらず、自称霊能力者は微動だにしない。


母に罵倒され部屋の隅で小さく(うずくま)る灯の前で除霊と称した訳のわからない儀式が執り行われた。


部屋の至るところに白い粉末を撒き聞いた事のない呪文の様なものを唱えていた。

粉末はベッドや茜の机にも撒かれた。灯は荒らされていく様子を泣きながら見てるしかできなかった。


一時間程経った頃

儀式は終わり母に連れられて自称霊能力者は部屋を出ていった。


残された灯は力なく立ち上がり、

白い粉末の撒かれたままの茜のベッドに倒れる。


この撒かれた粉末は何だろうと、拾い指先で感触を確かめる。

少し大きめの砂粒のような感触がした。


少し躊躇しながら舐めて確かめると理解する。


それはただの塩だった。


茜との部屋を守れなかった悔しさと母と自称霊能力者に対しての(いきどう)り、いろんな感情は喚き(わめ)声と涙となった。


暫くして

灯の涙が枯れた頃


『茜を救える可能性』


老婆が言った言葉が頭を過った


〃自分にも何か出来る事かもしれない〃


あれだけ『覚悟』という言葉に揺れていた灯の心は


今は、もう揺れてはいなかった。


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