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黒い家  作者: そら07F
187/187

現実

昼間も暗い

深く、暗い森を抜けた先

周囲を見渡す限りの草原に包まれた

少し小高い丘に聳える

一際目立つ砦


ここは

美祭にとって

長年の因縁であり、仮想敵


それも今となっては実害さえあり得る

相手郷、弐彩との境界線を守り


その上で弐彩の動向を監視

美祭領主である敷辺の目となり耳となり

正確な情報を迅速に発し

或いは、必要に応じて対処する役割を持つ


そんな重要拠点の一つ



拠点を守る

幾重もの防御装置

それらを駆使するべき

常駐する隊員は

どの者達もまた実力者揃い


美祭の近衛隊と肩を並べる

屈強な強者達





その筈だった



斯くして、

その実態は


まるで想像と違っていたのだった


外から見る拠点は

頑丈な木塀と空堀を用し、

正しく難攻不落の名に相応しいなりだ


しかし、

実態は


想像を遥かに越えるものだった




何も、なかったのだ


空堀と堅牢な塀の内側は

語弊を恐れずに言うなら


更地


無論、その言葉通りではなく

数件のあばら家らしき物は点在していて

木塀の内側には足場が組まれ、

よく見れば、見渡した

その足場の数ヶ所には弓と矢が

常備されてはいる



愕然と落胆

そんな感情が綯交ぜとなり

藍人が立ち尽くしてしまうのも

宛ら、無理もない事だ


そんな藍人に対して

声をかける者があった


「よく来たな・・」


初めに藍人に対して

そうして声をかけてきた、その者は

お世辞にも屈強な兵とは言えない


年を召した

あえて飾らない言葉で言えば

初老の男性、


その者を皮切りに

各々、次々どこかしこから現れる

十数の人々の外見は


そのどれもが

現役の年齢をとうに過ぎている者が大半、

中には既に杖をついた者までいる始末


勿論、その中一人二人は

平均年齢を下げている者も

確かにいるのは事実ではあるがー


今まで近衛と相対していた

藍人から見れば

その対比に、ただただ

色々な意味で驚くしかなかった


そんな藍人の心を見透かしてか

先ほど藍人に対して「よく来たな」と

声をかけてきた男性は

大仰に笑ってみせる


そして、一体なにが起きたのかと、

未だ呆気にとられている

藍人に対し、

「悪いな」と前置きをし

今度は

「驚いただろう?」と尋ねてくる


この問いに対して

藍人の正直な返答は

「はい」である


ただ、ここで素直に

返事をしてしまえば

流石に礼を欠く、


どうしたものか、と

一瞬、考えあぐねて

しかし、そんな一瞬の沈黙でさえ

端から見れば

また肯定の意として汲み取れる


藍人の返答を待たず

「素直なやつだな」と、男性は口にする


これは、しまったと思い至り

藍人が「すみません」と言いかけるも

男性は藍人の言葉これを制し、

少し苦笑してみせ

「無理もない事だ」とやや言葉を被せる




「冗談は

それくらいにしてやれ

五番」


それは藍人の少し先を歩いていた

碧が発した言葉だった


「これは、失礼した

壱番様」

目の前の人物は

声色に少し微笑を含みながら

雑に応える

そして、その言葉にすら何処か、

冗談めいた【何か】をも含んでいる


碧の言葉に応じた、

と言う事から


この目の前の人物は

【五番】と呼ばれているらしい


名前…、としては少々考え難い

勿論、恐らくは碧の事を

【壱番様】とも

呼んでいた事からも

名前とは言えないだろう


ならば、ここが何処か

を考慮して

もう一度考えてみる


すると明快、

碧が【壱番】であるなら

実力順で番号をつけている

と思い至る



名前は別にある

しかし、名で呼ばない

名で呼べば特定されかねない


しかしながら

名がなければ

味方間での連携はおろか

味方間での個人の特定すら儘ならない


なので、

代替案として

番号で呼び合う



さしずめ、

こんなところだろうか


しかし、ともすれば

この目の前の男は

この施設では

五本の指に入る実力者、となる


藍人からすれば

かなり目上の人物だ


慌てて

「すみません」と口にしかけるも


彼は手で

これを制し


「勘違いしている所悪いが

ちなみに、番号は

実力順ではないぞ?」


彼が

そう言ってのけた瞬間

「は?」と戸惑う藍人をよそに周りの者達は

堪えきれなったと言わんばかりに

笑って見せる


そして、加える様に

碧が補足する

「番号は適当だ

何か意味があるわけでなく

個人の特定を防ぐ為だけのもの

一月、或いはもう少し短い期間で変えていく

でなければ意味もないだろう」


納得と同時に

それは雑把で

何より面倒な


そう思ったものの

口が裂けても言えない


それから

「あぁ、それとな

番号はくじ引きで決めていく

大変だろうが、慣れるしかないな」

とも碧は付け足して説明してくれた



藍人は「わかり…ました…」と答えるのが

精一杯だった



詰め込み過ぎるのも

効率が悪い

さすがの碧でも

そう感じたか



「今日は休め」と

「五番、七番、十五番

案内してやれ」

そう短く恐らくは

この瞬間に目についた者達へと指示をし

各々の「はい」や「へい」等の返事を確認した

碧は再び歩き出すも



すぐに

思い出した様に立ち止まり


「あぁ、そうだ

とりあえず、だが

お前の番号はー」




碧がそう口にした瞬間、

ほんの少しではあるものの

藍人の周りの者、それぞれの者達の

空気が変わった気がした



だが、すぐに

各々が感情を隠す様に

何事もなかったように


再び空気が流れ出すのだった








環境の変化により

投稿スケジュール

お待ち頂いている方々には

ご迷惑をおかけしました


これより、

投稿を再開します


つきまして、

常の投稿曜日では

ございませんが


投稿させて頂きます

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