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黒い家  作者: そら07F
117/187

迷い

藍人は、自らの意思では

なかなか止める事の出来ない涙と

葵からの優しい包容に戸惑い


同時に、

こんな、自分の情けない一面

自身の弱さや甘えに対して

酷い嫌悪感を抱いていた


しかし、

葵は、そんな藍人を優しく包んだ

彼女は何も言わず、何も問う事はしなかった

恐らく彼女は察していたと思う

この涙の理由は

説明のできる類いの物でない事を


藍人の涙には、恐らく

深い理由がある事だけは理解できる


でも、彼は私に話す事はないし

それを私が正しく理解する事は

きっと叶わない


でもー


それでもよかった


言葉など、

全て蛇足に思えた


私は藍人の全てを許容するだろう


彼が見せる弱さや、甘え、

晒された醜態や、これから抱える罪さえも


藍人の全てを受け入れ、支えて

抱える悲しみさえも自ら共に背負う



今まで藍人が

そうしてくれたようにー


何度も、何度だって

藍人がその身を挺して

私を守ってくれたみたいに


葵は確かな意思を心に抱く


これからは、

私もー




″彼を守るのだからー″





こうして、

柔らかな陽の光が差し込む二人の寝所には

何とも優しい時間が、ゆっくりと流れた


それから、どれくらいの時間が経っただろう

葵の優しさのお陰で、

藍人は次第に落ち着きを取り戻していった


それと共に

今の有り得ない状況に

思わず自分の心臓が高鳴っていく


「ありがとう、もう大丈夫…」と

藍人が、そう言ったならば

彼女は察して離れてくれるだろうが


彼女から伝わる確かな温もりは

″ずっとこうしていたい″と思ってしまう程に

藍人から思考力というものを著しく奪い

その一言を、藍人は

なかなか言い出せずにいた


二人とも言葉を発する事はなく

痛い程の静寂に

二人の鼓動だけが響く



しかし、

その瞬間は何とも

あっさりと訪れる



「「おはようございます」」



突如、

部屋の入り口から発せられた声に依って

二人は乱暴に現実に引き戻され

心底驚き

二人はガバッと慌てて体を離す


藍人が声の元に視線を移すと

そこには、昨夜と同じく

巫女装束の女性が座って頭を下げている


そして、彼女らはゆっくりと頭を上げると

これからの予定について

息を合わせたように交互に話す


「ゆっくり、お休み出来ましたでしょうか?」

「お二人の身の回りの手伝いに参りました」

「まずは、私どもがお手伝いしますので、

 お着替え頂きます」

「その後、領主様との面会後、食事なります」


彼女らにそう告げられると

昨夜同様、藍人と葵は背中合わせに立たされ

彼女らに手伝われながら二人は身支度を整えると

その後、すぐに彼女らに先導され敷辺本宅へと赴いた


その道中、何時もより時間も少しせいもあってか

賑わい出した通り道で、

様々な人らに挨拶や祝福の声を掛けられるも

その度に、葵は顔を赤く染めた


それにしてもーと思うが、

昨夜の深酒の影響からか

どこか顔色が優れない者も少なくなかった事は

言うまでもない


程なくして敷辺本宅に到着した藍人ら一行は

そのまま、昨日の執務室へと案内され

待ち構えていた敷辺と面会する事となる


敷辺は二人の来訪に

すぐさま作業の手を止め、

待ってましたと言わんばかりに対応する


「来たか…ゆっくり休めたか?」


そう口にし、

立ち上がり二人へと近づいた敷辺はまず、

藍人と葵を繋いでいる組紐を丁寧に解いていく


その際、

敷辺は葵をじっくりと観察するように見て

組紐(これ)が、もう一晩必要か?」

と葵へ悪戯っぽく笑いかける


敷辺の言葉に葵は一瞬困惑した表情を見せるも

次の瞬間、見るみる内に葵は顔を赤く染め

慌てて「いいえ…」と小さく反論した後

恥ずかしさからか、俯いてしまった


敷辺はと言うと、

その葵の可愛らしい反応に満足したのか

クスクスと笑い「冗談だよ」と続けた


その時、藍人はと言うと

二人のやり取りの意味を正しく

理解する事が出来ず、

二人のやり取りをボーッと眺めるだけだったが


そんな藍人の表情に気付いた敷辺は

一瞬の間の後、全てを理解し

とても堪えきれないといった様子で

無作法に笑ったのだった


敷辺の手によって解かれた組紐は

同席した巫女達へと手渡される


組紐を受け取った巫女達は、

敷辺、そして藍人達への順に頭を下げると

そのまま執務室を後にして行った


巫女達が去り

部屋に残された敷辺、藍人と葵

「さて…」と口を開いたのは

敷辺だった


「これで、お前達の婚姻の義は全て完了した訳だが…

 私に出来る事は、正直ここまでだ…

 これから先は、お前達自身で

 未来を創っていかなければならない…」


敷辺は二人の目を、

しっかりと見据えて語る


だが、その視線は

どこか儚げで、それでいて悲しげだった


「ここで学んだ事、感じた事を生かし

 時に支え合い、慈しみを持ち、信じ合い、

 そして、いつか生まれくる小さな幸せを必ず守り抜く

 その覚悟をしなくてはならない…」


互いに顔を見合わせる藍人と葵

「それって……」という藍人の問いを遮り




敷辺は一瞬の間の後

二人へ優しく、けれどはっきりと言い放った




「お前達、三人を……この美祭より、追放する」














ご無沙汰しています

そらです


最近本業多忙で、

更新の方が遅れがちになってしまっていて

ご迷惑をおかけしています


なるべく早くお届けできるよう

努力してまいります


さて

活動報告で報告はさせて頂きましたが

改めまして


この度Twitterを始めさせて頂く事になりました


Sora@17RP


こちらでは、

近況報告や更新の情報なども

随時配信していく予定です


もしも、ご面倒でなければ、

そちらのフォローもよろしくお願いします


また、その他

ご意見、ご感想なども

気軽にお寄せください


尚、只今

【黒い家】の番外編も準備中です


番外編では、

本編で語られる事のない人物の目線で紡がれる物語

となっています


掲載の時には

この前書き等と、Twitterにて

改めて告知させて頂きたいと思います


よろしければ是非

そちらにもお越し頂ければと思います



それでは、

この度、長々とすいませんでした

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