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黒い家  作者: そら07F
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プロローグ

小高い山の上に立つ大きな病院


施錠された扉を幾重にもくぐった廊下の一番奥

外側からしか鍵の開かない部屋の中


部屋の壁全面には緩衝材が隙間なく貼られ

壁の高い位置にある採光の為の窓は、()め殺しで開閉さえ出来ない。


その上、窓の外には鉄格子まで取り付けられている。


天井にはカメラが設置されており24時間監視され、

部屋の中と外との会話は全てマイクとスピーカーでやりとりされている。


廊下に面した窓にも分厚い強化ガラスと鉄格子が取り付けてあり、廊下からは死角なく部屋が見渡せる


その窓越しに関根灯(せきね あかり)は妹の関根(せきね) (あかね)に備え付けのマイクで語りかける。


話すことと言えば、

『学校での出来事』や『家族の話』など、他愛もない話

   

茜からの返事などはなく、会話とは到底呼べない、

それは報告に似たもの。


茜は部屋の隅に(うずくま)り、表情はなく、

「…あ…」や「…う…」

などボソボソと譫言(うわごと)を繰り返すだけである。


かつての茜は底抜けに明るく社交的で、笑顔の可愛い子だった。

半年前に行方不明になるまでは…


行方不明から生還した直後は、茜は自宅で療養していたが動機不明の自傷行為と、誰に対しても強い不信感を抱き食事もほとんど摂らない様から、心配した両親は茜の精神病院への入院を決めた。


小学校高学年の灯の意見など聞き入れらる訳もなかった。


入院直後は毎日の様に病院へと足を運び、

反応のない茜にガラス越しにマイクで話し掛けていた両親も、

いつからか病院に足を運ぶことすらしなくなり、


半ば諦めに近い様な雰囲気さえ漂わせはじめていた。


だが、何度も両親とぶつかりながら、

医療スタッフに同情されながらも茜の見舞いに最後まで行っていたのは灯ただ一人だった。


それは一種の脅迫概念の様なものだったかもしれない。


入院当初こそ灯は、ガラス越しに嘆き、叫んで

誰も手もつけられなかったが、


数ヶ月経った今は、静かに茜に語りかけている。


灯はそんな自分に嫌悪感さえ覚えながら、

見舞いを終えた後には決まって廊下のソファーで静かに泣き医療スタッフに慰められ帰路に着くのだった。








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